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「就活」や「働く」に、ダイバーシティは重要?ーNPO代表らが本気で考えてみた

藥師実芳認定NPO法人ReBit代表理事

 エン・ジャパンの「企業のダイバーシティ実態調査」によると、「自社でダイバーシティ推進の取り組みを実施している」と回答した企業は、僅か32%。

 一方で、認定NPO法人ReBitの「ダイバーシティ経営と就職・求職活動や就労についてアンケート2019」では、88.5%が「ダイバーシティが推進されていることは、職業選択に重要」と答えた。

 これらの働き手の意識と職場環境の乖離の状況を、就労支援を行うNPO代表らが、LGBT、留学生、発達凹凸、ジェンダーなど、各分野の視点から考えてみました。

<インタビュー>

  • 吉岡マコ:認定NPO法人マドレボニータ理事長。出産を経た女性やその家族を支援。
  • 馬玉峰:法人永徳堂理事長。留学生の就職支援。
  • 工藤啓:認定NPO法人育て上げネット理事長。発達凹凸や引きこもりなど幅広い若者の就労支援。
  • 藥師実芳:認定NPO法人ReBit代表理事。LGBTのキャリア支援。

LGBT、留学生、発達凹凸の視点から就活を考える

藥師:LGBTは新卒就活の面接時に同性愛や両性愛者の42%、トランスジェンダーの87%が性自認や性的指向(以降、SOGI)に関するハラスメントや困難を経験したといいます。

 例えば、トランスジェンダーの就活生はエントリーシートの性別欄やスーツで困ることは少なくありません。また、企業のLGBTへの施策や取り組みの情報が見つけづらく、安全に働ける職場がないのではと不安に思う就活生もいます。

馬:情報の不足は、留学生にとっても大きな課題です。留学生の約6割が日本で就職したいと考えていますが、実際は約3割しか就職できていません。

 この背景には情報の不足により、いざ就職するときに、どんな企業があるのかわからず、大企業以外の選択肢をみつけづらい状況があります。また、日本独特の自己分析や就活マナーにも馴染みづらいこともあります。

工藤:就活はエントリーシートを記入する言語化力と、面接応対でのコミュニケーション力が求められますよね。言語化やコミュニケーションが苦手な人にとっては、他の能力がどれだけ高くても最初のハードルを超えづらいシステムです。だからこそ、働く上で必要な他の能力や技術が高くても、それらをみてもらう機会にたどり着けない。

 発達凹凸がある場合、ここでこぼれ落ちやすいと感じます。また、特に手書き履歴書必須の場合は、筆記することが苦手な人にとっては難しいですよね。

認定NPO法人育て上げネット理事長の工藤啓さん(オンライン参加)
認定NPO法人育て上げネット理事長の工藤啓さん(オンライン参加)

多様性が想定されていないことで生じる「働きづらさ」

藥師:LGBTは働き始めてからも、ハラスメントや困難を経験しやすいのが現状です。カミングアウトをしていた場合、周囲に勝手に言いふらされたり、また性的な質問をされるなどのハラスメントもあります。

 また、職場でLGBTが想定されていないことで、同性パートナーへの福利厚生がなく、忌引休暇や介護休暇を取得できないなど、制度上の困難もあります。

吉岡:女性が子どもを育てながら働き続けることがまだ難しい職場も少なくありません。出産したら仕事を辞めるのではなく、一旦休みを取って復帰する働き方が増えていますが、成果を出せるか、続けられるか悩む方も多いです。一方で子育てをしながら働くことについて、男性は女性と比べ関心が低く、意識の差があるように感じます。

馬:母国語が日本語でない人は、職場で言語で困る場面もありますが、それ以上に文化の壁が大きいように感じます。就活もしかりですが、職場においても「すでにあるルールに従うことが当たり前」という意識が強いように思います。

 例えば、中国人の社員が取引先と中国語でのメールに、cc:で上司を入れずにこっぴどく叱られ、最終的に退職したというケースがありました。どちらが良い・悪いというのではなく、報連相の文化は出身地ないしは個人によっても違うからこそ、自身の当たり前だけを当たり前とせず、コミュニケーションをとりあいルールを決めていくことが大切なのではないでしょうか。

NPO法人永徳堂理事長の馬玉峰さん
NPO法人永徳堂理事長の馬玉峰さん

「当たり前」が異なることによる働きづらさ、どう超える?

藥師:世代や属性、これまでの経験などで、誰もが「当たり前」が異なるからことが「当たり前」。では、どのように「当たり前」をすり合わせていくのがいいでしょうか?

吉岡:前提となる知識と、安心して対話できるカルチャーが共に大事だと考えます。全く知らないことは想定できないからこそ、まずは理解を進めるために研修等で知識を得ることが大事です。また、どのような配慮を求めているかを、お互いに聞く・伝えることで、安心して働くことができるのではないでしょうか。

 例えば、子育てをしながら働いている人の場合、「この仕事を任せれるかな?」「会議が16時までに終わるようにしたら、できます」という対話ができたら、本人も働きやすいし、周囲も任せやすい。

 なにより、配慮のつもりで上司は重要な仕事を任せていなかったのだけど、本人は期待されていないと思いモチベーションが下がってしまう、という事態を避けることができます。

 職場やチームでこのような安心して対話できるカルチャーが醸成されることが理想的ですが、例えば育休から復職する前に、配慮や希望を互いに話し合う席を持つなど、制度として保管することでもできます。

認定NPO法人マドレボニータ理事長の吉岡マコさん
認定NPO法人マドレボニータ理事長の吉岡マコさん

安心して対話できる職場、どう創る?

吉岡:安心して対話できるカルチャーがある職場は、誰にとっても安心な職場です。子育てしながら働く人、介護をしながら働く人、闘病をしながら働く人、闘病する家族を支えながら働く人など、すでに個人の状況は多様です。だからこそ、個々に多様性があることを前提にマネジメントしていくことは、誰かにとってのみ働きやいのではなく、誰にとっても働きやすい職場だと考えます。

「ダイバーシティを進めると、誰かがその仕事をしなければならなくなって、負担のしわ寄せがくるのでは」と懸念をされることがありますが、お互いに共有し合い配慮し合える職場であれば、ダイバーシティは誰かの「負担」ではなく、全体でその時々の必要に応じた「分担」になるのではないでしょうか。

工藤:企業がダイバーシティへの取り組みを発信するときに、「障がい者のためにこのような施策をしています」というように対象を主語とすることが多いですよね。それも大事ですが、ダイバーシティを「みんなごと」と認識するには、「こういうモノ/コトを導入したら、こういう利点が生じました」というように、モノ/コトを主語とした発信も大切だと考えます。

 例えば、テレワーク導入というコトは、子育や介護をしている人、障がいがある人にとっても働きやすさが向上しますが、誰にとっても働き方の選択肢が増えます。特定の人にとってのみのダイバーシティではなく、誰にとっても働きやすくなるという伝え方をしていくのが良いのではと思っています。

「働く」を考える上で高まる、ダイバーシティへの関心

藥師:事前のアンケートでは88%が就職・求職においてダイバーシティが重要だと答え、92%が働き続ける上で重要だと答えていました。

 一方で就活時にダイバーシティに取り組む企業を10社以上知っていた人は、15%のみでした。重要な情報なのになかなか知らないということですね。

吉岡:本当の自分をしっかり出せるか、本当の自分の能力をしっかり発揮できるか、就活のタイミングから検討することはとても大事です。自分らしく働くなんてわがままじゃないかと思ってしまうかもしれないですが、英語圏に行くとauthenticity(真実であること)はとても大事。ダイバーシティを大事にしている企業は、一人ひとりのauthenticityを大事にする企業だと考えます。

馬:就活の時に、自信を持って自分を出していいと思っています。学生時代キラキラしていた人が、職場で差別を受け自信をなくす姿を見るのはとても辛い。自分らしく、自分の良さを活かし働ける職場を探すことを応援したいと思います。

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 このように、ダイバーシティに取り組む企業の情報を知りたいという多くの声から、認定NPO法人ReBitは、日本初となるダイバーシティに関するキャリアフォーラム”RAINBOW CROSSING TOKYO 2019”を、10月19日(土)に開催します。

 本イベントは、自分らしく働くことを願う学生・就活生・求職者・社会人、そして企業担当者や就労支援者が一同に集うキャリアフォーラムです。

 2016年よりLGBTに特化し開催してきましたが、今年は、LGBT、ジェンダー、障がい、エスニシティにテーマを広げ、属性に関わらず「誰もが自分らしく働く」について考えます。

  

RAINBOW CROSSING TOKYO 2019概要

RAINBOW CROSSING TOKYO 2019
RAINBOW CROSSING TOKYO 2019

■日時:2019年10月19日(土)12:00〜18:10

■会場:ベルサール渋谷ファーストB1階ホール(東京都渋谷区東1-2-20)

■参加対象者:

  • 就活生・学生・社会人・企業担当者・就労支援者など、「自分らしく働く」ことに興味のある方
  • 企業のダイバーシティ(LGBT、ジェンダー、障がい、エスニシティ等)の取り組みへ関心がある方

■参加費:無料(※要事前申込み)

■申し込み:https://rebitlgbt.org/rct2019

<コンテンツ>

第一部:キーノートセッション:現状の取り組みや課題を知る講演会。

  • 各後援団体から、ダイバーシティに取り組む意義と現状について共有
  • SDGsとダイバーシティについての基調講演 等

第二部:ダイアローグ:さまざまなブースを訪問し、未来に向け対話を行う場。

  • 出展企業のダイバーシティへの取り組みを知るブース
  • LGBT、ジェンダー、障がい、エスニシティのテーマに関わりの深い社会人たちと交流し、キャリアについて考えるブース 等

<参加企業(順不同・敬称略)>:

株式会社丸井グループ/ソニー株式会社/LGBTファイナンス/アクセンチュア株式会社/株式会社資生堂/グーグル合同会社/NTTグループ/NEC(日本電気株式会社)/野村ホールディングス株式会社/日本航空株式会社/武田薬品工業株式会社/KPMGジャパン/ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人グループ/東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)/BLOOMBERG L.P./ユニリーバ・ジャパン/ウォルマート・ジャパン/西友/日本アイ・ビー・エム株式会社 他 ※随時公式ホームページにてお知らせいたします。

<後援>厚生労働省、東京都、一般社団法人日本経済団体連合会、日本労働組合総連合会(連合)、全国中小企業団体中央会

<アドバイザリー団体>認定NPO法人育て上げネット、認定NPO法人マドレボニータ、NPO法人永徳堂

<主催>認定特定非営利活動法人ReBit

認定NPO法人ReBit代表理事

早稲田大学大学院卒。LGBTを含めた全ての子どもがありのままで大人になれる社会を目指し、20歳でReBitを設立。行政・学校・企業等でLGBTやダイバーシティに関する研修、LGBTなどのマイノリティへのキャリア支援、国内最大級のダイバーシティに関するキャリアフォーラム”RAINBOW CROSSING”の開催等を行う。青少年版国民栄誉賞と言われる「人間力大賞」受賞、ダボス会議が選ぶ世界の若手リーダー、グローバル・シェーパーズ・コミュニティ選出、オバマ財団が選ぶアジア・パシフィックのリーダー選出。共著に「LGBTってなんだろう?」「トランスジェンダーと職場環境ハンドブック」等がある。

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