京都サンガが立ち上げた競技の枠を超えたジュニア育成プラン
Jリーグの京都サンガが今年度から、小学1~3年生を対象に「ADコース(Athletic Development Course)」を開設した。
今回新設されたコースは従来存在したスクールとはまったく別の存在で、サッカー選手としての技術指導を目的にしているのではなく、競技の枠を超えたスポーツ全般に必要な運動スキルを十分に発達させることを目指したもの。将来的にどんな競技を選択したとしても対応できる運動スキルを備えることで、成長期における怪我や慢性障害の予防効果にも繋がることを見据えスタートした新たな試みだ。Jリーグの中でも1年を通したコースを開設したのは初めてのケースのようだ。すでにコースを支援するスポンサー企業も現れており、関心の高さが窺える。
「子供たちの能力よりもちょっとだけ上のレベルの運動をさせることでスキルを伸ばしていけるようにと考えています。ジュニア期に運動スキルをしっかり身につけることは非常に重要なことです。サッカーとか競技に関係なく、昔の子供たちが学校終わりに遊びとしてやっていたことをこのコースで提供できればと思っています 」
同コースのアドバイザーを務め、アスレチックトレーナーの立場からメニューを監修している水口涼太氏は同コース開設の発案者でもある。4月9日に実施された第1回のスクールでも、サッカーボールは使用したものの蹴るのではなく手でもって運ぶだけ。サッカーの練習とはかけ離れた板渡りやボール投げなどゲーム感覚のメニューが用意され、参加した子供たちは笑顔をみせながら楽しんでいた。
同コースでコーチを務める郡山寛史氏も、コースの意義について以下のように説明している。
「このコースはあくまで補助コースというかたちで1年間で運動スキルを伸ばしてもらって、ここからサッカーであったりバスケであったり野球であったりの専門スキルに特化したスクールなりにいってもらって成長してもらうというのがこちらも目的です。幼稚園生からこの(コース対象)学年は運動スキルをやればやるほど身につく年齢であるので、ここでサッカーを行わず運動スキルを高めると、その後の専門スキルが早く身についたり怪我の予防にも関わってくるので、この学年を対象にしています。
(コースには)3つの要素がありまして、1つ目が身体操作スキル、2つ目が物体操作スキル、3つ目が移動スキルです。この3つのスキルを1回のスクールでまんべんなく継続してやって、こちらの理想としては最終的にプロサッカー選手だったりプロバスケット選手へと子供たちが向かっていってもらえれば、このコースの意味があるかなと思っています」
今なお日本では少子化問題が叫ばれ、野球界ではすでに競技人口の減少が表面化してきている。子供の数が減っている以上、今後はどの競技もが抱える問題だろう。今回の京都サンガの試みは、そうした現状を踏まえた上で競技の垣根を越えジュニアのアスリート育成を目指したものだ。
これからは少ない子供たちを効率よく質の高いアスリートに育成していくスポーツ界の団結力が必要になってくるのではないだろうか。京都サンガの試みが全国、そして他の競技にも広がってほしいものだ。