学生と法人で大きな減少…賃貸住宅管理会社への来客層の変化をさぐる(2020年6月発表版)
賃貸住宅の物件を探しに管理会社に来客した人達は増えているのか減っているのか。賃貸住宅の需給を推し量れる来客の実情を、賃貸住宅管理会社による協会「日本賃貸住宅管理協会」の調査「賃貸住宅市場景況感調査(日管協短観)」(※)から確認する。
賃貸住宅を管理する会社に来たお客の属性を「学生」「一般単身(学生除く)」「一般ファミリー」「高齢者(65歳以上)」「法人」「外国人」に大別。その上で、それぞれの来客数(直接来店した人の数)の「前年同期」(今件ならば2018年10月~2019年3月)と比べた変化を尋ねた結果が次のグラフ。
「学生」は「減少」が「増加」を大幅に上回っている、「一般単身」「高齢者」は「増加」が3割台なのに対し「減少」が1割台しかないなど、それぞれの属性における来客数の動向がかいま見られる形となっている。
傾向がより分かりやすいように、DI値(「増加」マイナス「減少」)を算出した結果が次のグラフ。よい機会でもあるので全国の平均以外に、首都圏、関西圏、首都圏・関西圏を除くエリアそれぞれにおけるDI値を算出し、併記する。それぞれの地域別の特性が見えてくる。
「学生」「法人」「一般ファミリー」はDI値がマイナス。特に「学生」「法人」はマイナス幅が大きく、この層の賃貸住宅への需要が減少していることが分かる。中でも「学生」はここしばらくDI値でマイナスを示すことが多い。来店する時間的余裕が無い、IT化が進み来店する必要性が無いと判断した結果、来客数としてカウントされる機会が生じないのかもしれない。
「一般単身(学生除く)」「高齢者(65歳以上)」「外国人」は大きなプラス値を示している。これは前半年期から変わらないが、「一般単身(学生除く)」「高齢者(65歳以上)」のプラス幅がひときわ大きいのが目に留まる。「一般ファミリー」がマイナスなのと併せ、人数構成別世帯数の伸び具合(単身世帯の増加、夫婦世帯の減少、高齢層の増加)と連動している感はある。また、一般単身者や高齢者は賃貸住宅を借りる際に条件が厳しくなる(貸す側、借りる側双方)ので、問い合わせが必要な場合も多いのだろう。
地域別の動向を見ると、関西圏では「一般ファミリー」、首都圏・関西圏以外では「学生」「法人」の下げ幅が著しい。また首都圏・関西圏以外では「高齢者(65歳以上)」の上げ幅が大きくなっている。それぞれの地域での賃貸住宅の需要の実情が反映されているようで興味深い。
今回動向が数字化された来店客全員が賃貸住宅の契約をするわけではないが、契約の可能性は十分にある。少なくとも直接足を運んでいる以上、単に公式サイトを閲覧したりチラシを読んだ限りの人と比べ、賃貸住宅への興味あるいは必要性の度合いは高い。管理会社側としても冷やかし前提のもので無い以上、来客はあるに越したことはない。その点ではお客の各属性の動向、地域別の変化はさまざまな方面で役立つ指標となるだろう。
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※賃貸住宅市場景況感調査(日管協短観)
日本賃貸住宅管理協会会員に対して半年ごとに定期的に行われている調査で、直近は2020年5月にインターネットを用いて実施。有効回答数は155社(回収率11.9%)。2019年10月1日から2020年3月31日に関する状況についての回答。
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