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4マス全体への業種別広告費の10年間の変化をさぐる

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
↑ テレビCMでの新商品紹介などでよくあるビジュアル。出稿側の広告費の動向は。(ペイレスイメージズ/アフロ)

・「2017年 日本の広告費」によれば2017年の広告費では4マスはラジオのみ前年比プラス。それ以外はすべてマイナス。

・10年間の4マスへの広告費の変化を業種別に見ると、増加したのは「情報・通信」「家庭用品」のみ。

・10年で半分以上4マスへの広告費を減らしているのは「案内・その他」。「趣味・スポーツ」もほぼ半減。

電通は2018年2月に日本の広告費に関する調査報告書「2017年 日本の広告費」を発表した。その内容を基に広告を出稿した業種の4マス(4大従来型メディア。テレビメディア、ラジオ、新聞、雑誌)全体における広告費の10年間での変化を確認する。

直近分となる2017年における媒体別広告費前年比は次の通り。今回取扱う4媒体では「ラジオ」のみがプラス、あとはすべてマイナス。特に「雑誌」の下げ幅が大きい。

↑ 2017年媒体別広告費前年比
↑ 2017年媒体別広告費前年比

それでは1年では無く10年を経た変化はどのようなものだろうか。報告書では「テレビメディア」「雑誌」「新聞」「ラジオ」に対する、21に区分した広告主業種別の広告費の推移が掲載されている。2017年と2007年における値を抽出し、整理した上で並べてグラフ化したのが次の図。ただし「テレビメディア」では衛星メディア関連は除かれている。

↑ 業種別広告費(4大従来型メディア全体、2007年と2017年)(億円)
↑ 業種別広告費(4大従来型メディア全体、2007年と2017年)(億円)

総額(4大従来型メディア限定)では2007年が3兆5699億円、2017年が2兆6638億円とほぼ3/4に減少。業種別では増加したのは「情報・通信」「家庭用品」のみで、あとはすべて減少。金融危機・リーマンショック、東日本大震災、相次ぐ政変、高齢化の進行(特に団塊世代の高齢化突入)に伴う社会構造の変化、インターネットやスマートフォンの普及によるメディアシフトの流れなど、劇的な動きが生じたとはいえ、金額面における変容ぶりが改めて認識できる結果ではある。またこの時代の流れでどこまで(4マスへの)広告投資のウェイトが変わったのか、業種別の動向を推し量れる値となっている。

増加した「情報・通信」は2667.5億円から2889.1億円へと221.6億円の増加。具体的には「コンピュータ・関連品、コンピュータソフト、携帯電話機、携帯情報端末、電話サービス、通信サービス・インターネット、 ウェブコンテンツ、モバイルコンテンツ、放送など」が該当し、インターネット、スマートフォンの浸透普及においてもっとも恩恵を受けそうな、そして競争が激しい業種である。それゆえに市場規模の大きさに加え、成長性も高いことから、4マスにおいてもその恩恵を受けた形となった。

他方「家庭用品」は638.4億円から656.0億円と17.6億円の増加。具体的には「石油・ガス機器、寝具、インテリア、家具、仏具、台所用品、殺虫・防虫剤、芳香・消臭剤など」が該当する。元々額面では小さめな業種だが、データが取得できる限りでは2009年を底値として少しずつ回復基調にある。

10年間で半分以下に額を減らしているのは「案内・その他」の1業種。「趣味・スポーツ」もマイナス49.8%とほぼ半減。「趣味・スポーツ用品」は若年層の4マス離れに起因するものと推定されるが、今報告書では4マス以外の各業種向け広告費動向が公開されていないため、それを裏付けることはかなわない。具体的には「趣味用品、ゲーム機・ソフト、音声・映像ソフト、園芸用品、ペットフード、パチンコ・パチスロ機、スポーツ用品など」が該当するため、大よそインターネットにシフトしたものと考えられる。またパチンコ・パチスロ機は業界そのものの低迷も大きな要因だろう。

「案内・その他」は「案内広告(新聞、雑誌)、臨時もの、連合広告、企業グループなど」が該当する。単純にメディア力、公知力の(相対的)減少を受け、広告出稿側のリソース配分の変化が生じたものと考えれば道理は通る。また4割近い減少(マイナス38.9%)を「金融・保険」が示しているが、これはネットなどへのシフトに加え、2006年前後から急速に広まった消費者金融に対する、いわゆる「グレーゾーン金利」に係わる問題をきっかけにした大規模なバッシングの風潮に伴い、自主規制も併せ広告出稿が大幅に減少しているとすれば道理は通る。

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(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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