Facebook、オープンソース無線アクセス「OpenCellular」:残り40億人にネット接続を
Facebookは2016年7月6日、オープンソースの無線接続プラットフォームプロジェクト「OpenCellular」を発表した。コスト効率のよいプラットフォームを構築することを目的としており、Facebookが取り組んでいる全世界でのインターネット接続の普及を目指している。
誰でも簡単に設置できてネットに接続
「OpenCellular」プラットフォームにはストラップ、取付け用ブラケット、ケース、そしてGeneral-Baseband Computing(GBC)ボードと無線周波数(RF)ボードという2つのシステムが搭載されている。
「OpenCellular」プラットフォームでは2GからLTE、Wi-Fiまでの様々なネットワークに対応している。オープンソースおよび商用のさまざまなセルラースタックに対応している。このボックスは靴箱程度の大きさで、木や電柱などに、誰でも1人で簡単に設置できる。また強風や高温、湿気にも耐えられる。電源もPower over Ethernet(PoE)、太陽光、DC電源、外付けバッテリ、内蔵バッテリ(リチウムイオン)など多くのタイプが利用可能。1つのボックスで10キロ四方の1,500人までのユーザーがネット接続できる。
農村部から都市部まであらゆるネットワークの接続に対応できるが、Facebookとしては新興国などネット接続環境のない地域を対象としている。実用化の具体的な時期は明らかにされていない。
FacebookのCEOのMark Zuckerberg氏も自身のFacebookでの投稿で「世界にはまだ40億人がネットに接続できないでいる。特に過疎地ではネットのインフラも整備されていない。Facebookでは世界中の人をネットに接続できるようになるためにOpenCellularを開始した。OpenCellularは通信事業者から研究者、起業家まで世界中の誰に対してもオープンなシステムだ」と述べている。
Facebookにとって重要なネットインラフの整備
Facebookは現在、全世界で15億人以上が利用している。世界の人口が70億人でまだ40億人がネットに接続できない環境にいる。Facebookは中国ではアクセスできないので、人口13億人以上の中国市場は対象外としても、まだまだ開拓の余地が大きい。
Facebookの収益源は広告収入だ。売上の95%以上が広告収入である。そのためFacebookはネットに接続されてアクセスしてもらって初めて収益につながる。またFacebookは利用してもらうことによって広告配信だけでなく、世界中から多くの情報やデータを収集して、それらを人工知能の開発につなげていきたい。人工知能の強化のためには多くの情報、データが必要であり、そのためにも世界中のあらゆる人にFacebookを利用してもらいたい。しかし、そもそもネットに接続できるインフラ環境がなければFacebookにアクセスすることもできない。Facebookは通信事業者のようにネット接続による通信収入をビジネスにしようとは考えていない。
日本や欧米のような先進国では通信事業者がインフラ整備をしているので、過疎地でもネットに接続することが可能なことが多いが、新興国ではネットのインフラは先進国ほど進んでいない地域が多いが、そのようなところにはまだネットに接続できない多くの人が生活しており、そのような人々はFacebookにとっても重要な潜在顧客だ。
Facebookは2016年2月のMobile World Congressで無線インフラプロジェクト「Telecom Infra Project(TIP)」を発表した。また、同社は既に新興国を中心に現地通信事業者と提携して「Internet.org」によるネット接続の取組みも行っている。
Facebookとしては通信事業者がインフラ整備をしてくれるのを待っていられない。たとえ無償でもインフラ整備を行い、多くの人にFacebookを利用してもらわないと収益や、人工知能を活用した次のビジネスにもつながらない。Facebookとしてもネット接続のためのインフラ整備は決して慈善事業でやっているのではない。重要な投資なのだ。