ChatGPT利用動向調査。シャドーIT化するChatGPT
米国OpenAI社が2022年11月30日に公開した生成型AI「ChatGPT」は、急速に世界中で利用が拡大し、公開4日後には利用者が世界で100万人を超え、2か月後の2023年1月には1億人を突破したと言われています。
急速に普及するChatGPTですが、海外や日本ではどのような利用傾向にあるのか見てみましょう。
■米国では既にシャドーITとして利用されている実態
セキュリテイ企業Cyberhaven社の調査によれば、同社製品を利用する160万人の行動を調査したところ、ChatGPTが公開されて以来、ナレッジワーカーの9.3%が職場で少なくとも一度はChatGPTの使用を試み、そのうち7.5%がデータを貼り付けたことがあるとの調査結果が明らかになりました。
また、ChatGPTに入力されたデータのうち4.0%の社員が少なくとも1回は機密データをChatGPTに貼り付けようとしたとあります。
ChatGPTに投稿されたデータ種別として最も多かったのが社内に限定された内部情報が319件でトップ。次にソースコードが278件、顧客データが260件といった結果となっています。
内部情報やソースコードを入力するユーザーが多いという結果に対して、筆者の推測ですが、ChatGPTの利用用途して社内の議事録作成やソースコードのチェックといった活用方法が盛んに報道されたため"機密情報を漏洩させる意図などは全くなく「ちょっと試してみたい」と考えた"人が増えたのではないかと推測しています。このような利用は危険であるというルール作りや従業員教育が重要だと言えるでしょう。
同調査によれば、従業員10万人あたり6,352件の企業データをChatGPTに貼り付けようとする試みが検知されたとあり、ChatGPTの認知拡大に伴いこの件数は急速に拡大しているとしています。これらの調査結果から、ChatGPTを安全に利用するための職場でのルール作りやシステム作りが急務である、と言えるでしょう。
■日本でのChatGPT利用動向
日本国内の利用について野村総合研究所も調査結果を公表してます。野村総合研究所は2023年4月15~16日にかけて、関東に住む15~69歳を対象にネットアンケート調査を行ったところ、回答者の61.3%がChatGPTを認知しており、そのうち12.1%が実際に利用していたと回答したとしています。
職業別の利用度合いを見ると、学生(21.6%)と教職員(20.5%)の利用率が20%を超えて最も高く、教育関係者の利用が高いことがわかります。
日本国内のChatGPTに関する報道を見ていると学校関係者の間では生成型AIは生徒の学習能力を低下させるリスクがあるとして「禁止派」と「推進派」にわかれており、慎重に利用方法を検討しているように見受けられますが、そういった検討とは無関係に利用がされている実態がここからも見て取れます。
■「うちは使ってない」は危険。まずは実態調査を
ChatGPTに関する最も危険な誤解は「うちは使っていないから大丈夫」という誤解です。企業としてChatGPTを活用している、していないに関わらず、従業員は勝手に利用しているかもしれないというリスクを想定することが重要です。
「測れないものはマネジメントできない」という言葉があります。これは、開発方法論やリスク管理で著名なトム・デマルコ氏や経営学者のピーター・ドラッカー氏らが繰り返し唱えた言葉です。
ChatGPTは世界的にも連日報道されておりニュースサイトでその名前を見ない日はありません。仕事の生産性向上のために「ちょっと勉強してみたい」と考える社員が居ると考えた方が自然ではないでしょうか。
CASBやProxyと呼ばれるソリューションが導入されている企業であれば、「自社でどの程度ChatGPTが利用されているか?」を把握することが可能です。このような技術が採用されている企業であれば、一度自社のChatGPTを計測してみることを推奨します。
筆者注
但しProxy等のデータ送受信量トップ10等をピックアップするセキュリティ製品の場合はChatGPTはテキスト中心のため送受信量が少なくトップ10に表示されず「利用していない」と誤認識するリスクがあります。
ChatGPTは従業員の生産性向上のみならず、今後の企業競争力を変える可能性を秘めたツールです。安易にブロックする、「使っていないと思い込む」のではなく、まずはルール作りと、実態の把握と適切な指導。これらは全ての企業で取り組む必要があると言えるでしょう。