「松田宣浩が残留を決めた訳」からの教訓 FA宣言→残留はごくまっとうなこと
『THE PAGE』より1月20日に配信された松田宣浩のインタビュー記事は興味深かった。海外FA権を行使するもソフトバンクに推定4年16億円で残留した彼が、残留を決めた理由等を語っている。
それによると、最大の決め手になったのが同球団の王貞治会長から「一緒にやろう」との電話を受けたことらしい。松田自身は「やっぱり(メジャーに)行きますとは言いだせなかった」という。また、「あの電話がなければメジャーに行っていたと思う」と語っている。
もちろん、王会長の一言が「響いた」ことは事実だろう。でも、率直に言って人間は岐路に立つと自分にとってベストな選択をするものだ。彼の場合も、条件、出場機会、プレー環境、生活環境、そして自身の夢等を総合的に考慮すると残留がベストだったということだったのだと思う。「メジャーの評価を聞いてみたい」という希望も、FA宣言以降ある程度は叶えられたはずだ。ぼくは、松田は何も王会長を持ち出さなくても良かったと思うが、2月1日のキャンプインを前に、一度はメディアを通じてファンにFA宣言から残留までの経緯を話しておく必要があると、判断したのだろう。そして、「王さんの言葉に動かされた」というのが、球団やファンに対するエクスキューズとして最も適切と判断したのだとぼくは思っている。
また、本件はとても重要な教訓を残している。それは、FAを宣言しながら最後は残留した松田をほとんどのファンは暖かく迎え入れているということだ。これは、前年の鳥谷敬にも言えることなのだけれど、「FA宣言しながら戻りたいとはムシが良すぎる」と憤慨するファンは、多少はいたのだろうが基本的には少数派なのだ。
多くの球団は「FA→残留」を認めていない。確かにそれは一企業としての経営方針の範疇と言えなくもない。しかし、球団にとって最も耳を傾けるべきファンの意見や心理とは相当かけ離れた考えなのだということだ。「国内FAと海外FAは違う」という意見もあるかも知れない。しかし、「ムシが良すぎる」ともロジックとの整合性はない。