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イーグルス沢木敬介は言う。「ベストメンバーじゃないとやる意味がない」【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
練習中に指示を送る沢木(筆者撮影)

 今季発足の「クロスボーダーラグビー」が2月3日に始まり、まもなく2週目に突入。昨季のリーグワンでクラブ史上3位と躍進の横浜キヤノンイーグルスは、10日、神奈川・ニッパツ三ツ沢球技場にニュージーランドのブルーズを迎える。

 出場メンバーを8日、発表した。

「インターナショナルレベルを感じられるいい機会。現状のベストで臨まなかったらまったく意味がない。クラブとしての価値、大会の意味がなくなる。いまいるベストのメンバーで戦うだけ。タフに、色んな意味で整えられるかを見ていかなきゃいけない」

 就任4シーズン目の沢木敬介監督がこう語ったのは、2月5日の練習後。雪に見舞われた都内の本拠地でのことだ。

 国際リーグのスーパーラグビーで戦うブルーズは、今シリーズの第1週にあたる3日、リーグワンで前年度4位の東京サントリーサンゴリアスに43-7で勝っていた。

 サンゴリアスはニュージーランドのサム・ケイン、南アフリカのチェスリン・コルビといった昨秋のワールドカップフランス大会決勝へ出たメンバーを事前の取り決めに伴い出場させられず、日本人選手も体調管理の観点から欠場した。

 スーパーラグビー側はプレシーズンとあり調整段階で、リーグワン側はシーズンの中断期間中とあり故障のリスクと隣り合わせ。現場サイドは皆、難しいシチュエーションであるのを認める。

 今度のイーグルスも、現役南アフリカ代表のファフ・デクラーク、ジェシー・クリエルを怪我で欠いている。

 それでも沢木は、現状できうる限りのベストの布陣で戦うとメンバー発表前に明かしている。

 沢木は2015年、日本代表のコーチングコーディネーターとしてワールドカップイングランド大会で歴史的3勝。初戦では、その頃通算2度(現在4度)優勝の南アフリカ代表を倒した。自ら考えたサインプレーをトライに繋げた。

 16年からはサンゴリアスの指揮官を務め、在任3シーズンで旧トップリーグを2度、制覇。20年にはスーパーラグビーに日本から参戦のサンウルブズで指導に携わり、シーズン中断を経て現職に就く。

 単独取材でまず話題に挙がったのは、第1週の計2戦だった。

 4日には埼玉パナソニックワイルドナイツが主力を勢ぞろいさせ、拠点の熊谷ラグビー場でニュージーランドのチーフスを破っている。

 以下、単独取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――先週の2試合を見ての感想を聞かせてください。

「ロビー(・ディーンズ=ワイルドナイツのヘッドコーチ)も言っていたけど――もちろんこの時期にやるリスクはあるとはいえ――ベストメンバーじゃないとやる意味がないと、俺は思っている。怪我をしていたり、オペをしていたりして出られない選手はいるなかでも、いまいる(最善の)メンバーでやらないと、ゲームに対する意味、値打ちもなくなると思う。全力で。ベストメンバーで。チームのプライドを示しに行かないといけない」

――クロスボーダー戦で「ベストメンバー」を編むには、海外出身者の契約もクリアにしなければならないのが明らかになりました。

「イーグルスは、ワールドカップで優勝したからこの期間(2月)にどうのこうの(試合に出られない)という縛りはなかった。あの2人(デクラーク、クリエル)だって、怪我をしていなかったら出たいと言っていたと思う」

――特に、クリエルさんは日本で治療して早く復帰したいと話していたようですね。

「オペが必要なので、それは南アフリカのドクターの方針のもとやった方がいいと思う。今後、選手生命が長いし。けど、ジェシーは早く帰ってきたい、復帰したい思いが強いです。ファフもそうだろうけど、現状ではレポートが来ていないからわからないかな」

――もしデクラーク、クリエル両選手の状況次第では、登録の手続きのうえ新たな外国人選手を補強できなくもない。

「いい選手がいたら採りたいけど、それは現場の仕事じゃない。現場はいるメンバーで戦うしかない。それ(補強について)は、俺じゃない人に聞いて」

――改めて、ブルーズにどう勝とうと考えますか。

「サンゴリアスの時にスーパーラグビーのクラブと2回、対戦していて(2017、18年に実施のみなとラグビーまつりでワラターズ、ブランビーズと対戦。スコアはそれぞれ19-21、28-26)、サンウルブズでもやっている。(日本のチームが)どの土俵で戦えばいいかはある程度、わかっている。自分たちのよさを出せる土俵に相手を引きずり込むには何をしなきゃいけないか。それを戦略として持っていないとなかなか難しい」

――3日のブルーズも、サンゴリアスがボールを持ってテンポよく回していた時は苦しんでいたような。

「ブレイクダウン(接点)でもプレッシャーがあるし、ただボールを持っておけばいいという話ではない。相手はちょっとのミスボールを一気にトライまで持っていく力がある。速いランナーに走られてモメンタムを作られることもしてはいけない。(ボールを持つか、手放すかは)駆け引きと、バランスじゃないですか」

 他チームの状況については言及しなかったものの、イーグルスは今度のシリーズへ全力を傾けるとの考えを強調した。実際、この日の練習では、主力組、控え組を問わず、選手が「ブルーズ、倒すぜ!」「こんな機会めったにない」「絶対勝たなきゃいけない」と発していた。

 旧トップリーグで16チーム中12位だったイーグルスへ、ハードワークの姿勢、攻撃的なスタイル、選手間から湧き出す熱を涵養させた沢木。限られた陣容でも巨木をなぎ倒せるよう、気力と知力を尽くす。

――ちなみに、きょうの練習ではサインプレーの確認をしていました。相手の防御傾向を踏まえて考えたものですか。

「それはもちろん」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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