日銀は金融政策の正常化に向きを変え、普通の金融政策に
日銀は3月19日の金融政策決定会合で金融政策の変更を行った。
政策金利を日銀当座預金の付利の一部に課せられたマイナス0.1%から、無担保コール翌日物の金利に戻しそれをゼロから0.1%とし、いわゆるマイナス金利を解除する。
長期金利コントロールを含めたイールドカーブコントロールを廃止した。ただし、これまでと概ね同程度の金額で長期国債の買入れを継続する。
長期国債以外の資産の買入れに関してで、ETFおよびJ-REITについて、新規の買入れを終了する。CP等および社債等について、買入れ額を段階的に減額し、1年後をめどに買入れを終了する。
これらの変更は、いわゆる金融政策の正常化であるが、植田総裁は会見で「正常化」との表現は使いたくないようで「普通の金融政策」にしたとしていた。
今回の政策変更の結果、政策金利を無担保コール翌日物の金利に戻し、それをゼロから0.1%とすることで、これは「ゼロ金利」と読んで良いのかとの総裁会見での質問に対して、そうであるとは答えなかった。
「普通の金融政策」でも良いがとにかく日銀は、やっとのことで普通の金融政策に戻すことを決定した。
私としては、2013年4月に量的・質的緩和政策を決定した時点から、正常化を願っていたのだが、それから11年も経過してしまっていた。
11年も掛かってしまったのはどうしてか。当初は2年で2%を達成するとしていたが、それは出来なかった。これは日銀がいくら大胆な緩和策を行っても、のれんに腕押し状態となり、能動的に物価を引き上げることができなかったことを証明したともいえる。
それにもかかわらず、黒田総裁時代には総裁自身が異次元緩和の非をみとめなかった。リフレ派の政治家によるプレッシャーもあって、日銀はそれを続けざるを得なかった面もある。
世界的な物価上昇が日本にも波及したことで、異次元緩和の副作用が露見した。
2022年には無制限毎営業日連続の指値オペという究極のオペを実施し、市場との対立姿勢を強め、10年国債の発行額以上を買いあげるというとんでもないことまでしてきたのである。日銀は債券市場の機能を停止させようとしたようにもみえた。
総裁が植田氏となり、賃金の上昇のみならず、政治情勢の変化も手伝い、やっと日銀は正常化を進めることが可能となった。普通の金融政策に戻って、物価も高い水準が維持されるのであれば、次のステップは利上げであろう。
日銀はこれまで慎重過ぎたが、これからも同様に慎重であるとは考えないほうが良いかもしれない。良い意味で日銀は変わった可能性もある。