Yahoo!ニュース

サブスク音楽配信が大手レコード会社の収益源トップの時代が到来

ジェイ・コウガミデジタル音楽ジャーナリスト
Drake @ 2017 Billboard Music Awards(写真:Shutterstock/アフロ)

世界最大のレコード会社、ユニバーサルミュージック・グループの2017年Q1(1-3月期)決算では、実績ベースの営業利益は1億4100万(約175億6698万円)、収益は12億8400万ユーロ(約1600億4380万円)と好調で、これで6期連続の成長を記録した業績結果となりました。

営業利益、収益共に前年同期比33.1%増、12.7%増。特に収益面では、2002年Q1に計上した13億65万ユーロ以来、過去最高のQ1実績でした。

画像

フランスのメディア会社、ヴィヴェンディ(Vivendi)傘下のユニバーサルミュージック・グループで、収益拡大に貢献したのは、音楽ストリーミングサービスと定額制音楽サービスからの収益。その勢いは、前年同期比49%増の4億6700万ユーロ(約582億円)と急成長中。ユニバーサルミュージックがどれほどこの領域に注力しているか、その結果が現れています。

業種別では、レコード音楽全体の収益は前年同期比12.2%増の10億1600万ユーロ(約1266億円)。音楽出版ビジネスは17.1%増の2億2200万ユーロ(約274億円)。グッズ販売を含むその他の収益は13.3%増の5400万ユーロ(約67億2844万円)。ライセンス売上は1億5000万ユーロから1億6800万ユーロ(約210億円)へ増加。ユニバーサルミュージックは世界で400以上のデジタル音楽サービスとライセンス契約を結んだと明らかにしました。

関連記事ユニバーサルミュージックとTencent Musicが見据える、中国の音楽ビジネスの未来。中国版アビー・ロード・スタジオの建設で人材育成も

売上シェアを見ると、全体でデジタル音楽の収益は61.2%、その中で音楽ストリーミングが46%、ダウンロードが15.2%となり、配信ビジネスが現在のビジネスモデルの主流となっています。フィジカル音楽は22.2%。ライセンスを含むその他のビジネスが16.5%。

ストリーミングが好調の裏で、ダウンロードは急減

画像

レコード音楽の内訳は、デジタル音楽からの売上(ダウンロード、ストリーミング)が5億400万ユーロ(約628億円)から6億2200万ユーロ(約775億円)に拡大する中で、ダウンロード売上は1億9700万ユーロ(約245億円)から1億5500万ユーロ(約192億円)に落ち込み、21.3%の引き続き大きな減少にあります。

フィジカル売上(CD、アナログレコード)は、5.6%減で2億3600万ユーロ(約294億円)から2億2600万ユーロ(約282億円)に減少と、音楽ストリーミングの成長がフィジカルとダウンロードの低迷を完全に上回っている図式ができあがっています。

地域別に見ると、北米地域の収益が28.1%増の6億1630万ユーロ(約768億2115万円)と好調。アジアも14.7%増の1億6690万ユーロ(約208億円)を計上。伸び幅で最大だったのはラテンアメリカで、53%増の5140万ユーロ(約64億円)。減少したのはヨーロッパで、4億1400万ユーロ(約515億円)から4億1090万ユーロ(約512億円)に減額。

レコード音楽で好調な売上は、ドレイク(Drake)の『More Life』、ザ・ウィークエンド(The Weeknd)の『Starboy』と『Beauty Behind the Madness』、映画『ラ・ラ・ランド』『Fifty Shades Darker』『モアナと伝説の海』サウンドトラックが牽引しました。

2017年はビートルズの「サージェント・ペパーズ」50周年記念のリリースが大きな話題となりそうで、その他には、ラナ・デル・レイ、ロード、ケイティ・ペリー、Imagine Dragons、Feist、Helene Fischerといった人気アーティストのアルバムが予定されています。

ソース

Vivendi : Earnings of the first quarter 2017 (Vivendi)

この記事は、デジタル音楽メディア「All Digital Music」で2017年5月26日に掲載された記事の転載です。

デジタル音楽ジャーナリスト

専門は「世界の音楽ビジネス、音楽業界xテクノロジー」の執筆・取材・リサーチ。音楽ビジネスメディア「All Digital Music」、音楽業界専門のマーケティング支援会社「Music Ally Japan」や、音楽ストリーミング・データ分析プラットフォーム「Chartmetric」日本事業展開も担当。グローバル音楽業界、レコード会社、ストリーミングサービスのビジネスモデル、トレンド分析、企業分析に関する記事執筆多数。

ジェイ・コウガミの最近の記事