2014年以降に耐震診断をした持家住宅は9.1%(2020年公開版)
2014年以降の耐震診断経験は全体で9.1%
昨今の住宅は強度の耐震仕様が当たり前のものとなっているが、経年劣化やさまざまな事象による強度の減退でリスクが漸増する場合もあり、定期的な検査と必要ならば修復などの状況改善が求められる。また建設時期によっては十分な耐震仕様が行われていない場合もある。今回は総務省統計局が2019年4月に発表した、2018年時点における住宅・土地統計調査の確定集計結果から、持家住宅における耐震診断経験の状況を確認する。
次に示すのは建て方別における持家の、2014年以降における耐震診断の有無を尋ねた結果。全体では9.1%が耐震診断をしたと答え、そのうち8.0%は耐震性の確保が確認でき、1.1%は耐震性の確保ができておらず、要補強の判定が下されたとの結果が出ている。
注意をしてほしいのは、「2009年以降に耐震診断をしていない」イコール「耐震性能を持たない住宅」ではないこと。建築当初から耐震補強・性能を持つ住宅もあれば、診断を受けずに補強工事をした場合もある。また、2014年以前にすでに耐震診断を受け、あるいはその結果から補強を行い、再度診断の必要は無しの状態の住宅もある。
種類別に見ると、やはり共同住宅の方が診断率が高い。管理会社によるサービスの一環としての実施で行われる場合もあれば、一部居住者が不安を抱き診断を希望した場合、住宅全体が診断対象となるのが原因だろう。
複数の視点から確認
これをいくつかの属性別に振り分けて確認していくことにする。まずは対象となる持家の建築時期別。
今回の問いは2014年以降(調査年の2018年まで)に耐震診断を行ったか否かとの問いとなっている。2013年までの建築住宅は、それ以前に耐震診断をしていた可能性が高く、それ以降改めて診断をする判断に迫られる人はさほど多くない。そのため、2014年以降と2013年までとの間には大きな差異が生じている。
それでも2014年以降の建築時期の持家に限っても、診断率は3割から4割程度に留まっている。結果として耐震性が十分でないとの結果が出た住宅は1%前後。問題を抱えているとの状況が判明しただけでもよしとすべきだろう。2014年以降の建築時期の持家において耐震診断をしていない残りの5割台から6割台の住宅が、すでに十分な耐震強度を持っていることを願わずにはいられない。
続いて居住者の構成別。特に高齢者にスポットを当てた区分にしている。
高齢者が住む持家の方が概して診断率は低い。すでに十分な耐震性が確保されているから診断の必要性が無いのか、それとも診断をする余裕が無いのかまでは今調査からは判断できないのが残念。ただし「耐震診断・耐震性非確保」の回答率が全体と比べて高めに出ている状況を見るに、多分に高齢者が住んでいる住宅は経年劣化が進んでおり、耐震性に問題がある場合が多いことが推測される。地震時のリスクは高齢者の方が高いことを合わせて考えると、大いに問題視されるべき結果ではある。
最後は都道府県別の数字を算出し、上位陣・下位陣の地域を抽出したもの。
住宅の新陳代謝が激しい東京都をはじめ、先の震災で大きな被害を受けた地域、さらには震災を受けて大規模地震の発生リスクが高いとされる地域で高い値が生じている。なお熊本県で高い値が出ているのは、2016年に発生した熊本地震によるところが大きいと考えてよいだろう。
一方で低めの値が出ているのは、西日本を中心とした地震リスクが低い地域が多分を占めている。これも地震に対する意識によるところなのだろう。
今件はあくまでも2014年以降における診断率であり、その値の高さがそのまま耐震性のある住宅普及率の高さにつながるわけではない。しかし耐震診断率の高さは、地震に対する意識や耐震性住宅普及率を底上げする要素となっているのも事実。持家に住み、耐震性の保証が元々なく、あるいは過去に行ったものの現状に関して気になる人は、まずは公的な補助制度があるか否かについて、役所などに相談してみてはいかがだろうか。
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