デフレ脱却宣言は出るのか
鈴木俊一財務相は5日、政府がデフレ脱却を表明する検討に入ったとする一部報道に対し、「そのような事実はない」と述べた。
また、新藤義孝経済財政相も5日の閣議後会見で、デフレ脱却宣言について「今、何か表明することは考えていない」と述べた。日銀のマイナス金利解除とデフレ脱却宣言の順序についても「今現在、具体的に考えていない」と述べていた。
これは3月2日の共同通信の記事によるものである。この記事によると、政府が物価の上昇傾向を受け「デフレ脱却」を表明する検討に入ったことが2日、複数の関係者への取材で分かったとあった。
この複数の関係者には鈴木財務相や新藤経済財政相が含まれていたのかどうかはわからないものの、火のないところには煙は立たないのではなかろうか。
日銀は早ければ3月18、19日の金融政策決定会合において、金融緩和政策を非常時対応のものから通常のものに修正する、いわゆる正常化を行うと予想されている。
この場合の正常化とは、イールドカーブ・コントロールの枠組みの廃止、マイナス金利政策の解除、フォワードガイダンスの修正の三点である。
これによって、以前にゼロ金利政策と呼ばれていた、当時としては究極の緩和策といえるものに変わることになる。これでも依然として金融緩和策であることに変わりは無い。
そうであれば、やれ雇用だ、やれ賃金だ、やれ物価だと、修正のためのハードルを上げる必要性はなかったはずだが、そうでもしないと納得しない人達もいたとみられる。
共同通信の記事によると、岸田文雄首相や関係閣僚が会議の場や記者会見で、デフレ脱却を表明したり、景気動向に関する公式見解をまとめた月例経済報告に明記したりする案が浮上しているそうである。
「デフレからの早期脱却と物価安定の下での持続的な経済成長の実現に向け、以下のとおり、政府及び日本銀行の政策連携を強化し、一体となって取り組む」
これは平成25年1月22日に内閣府・財務省・日本銀行による、「デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日本銀行の政策連携について」、いわゆる共同声明である。
日銀の金融政策の正常化に合わせて、政府もデフレ脱却を表明するというのは、この共同声明に沿ったものともいえる。政府としてもこれまでの日銀とともに政府の施策によって、ついにデフレから脱却できたことをアピールできる。
ただし、ここにきての日本での物価の上昇、賃金の引き上げの原動力となったのは、政府の財政出動や日銀の異次元緩和によるものではない。世界的な物価上昇により、日本でも物価上昇が引き起こされ、それに対応する必要が出てきたためなのであるが。