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想像以上に活発化している野球界のプロ・アマ交流

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
社会人クラブチームのOBC高島と練習試合を行うオリックス

 「今度オリックスさんと練習試合をさせてもらえることになりました」

 少し前のことになるが、電話をくれたのは元メジャーリーガーの大家友和氏がGMを務める社会人クラブチーム、OBC高島の野原祐也監督だった。OBC高島は今年5月にも野原監督の古巣である阪神とも練習試合を実施しており、現在のプロ・アマ交流の実態を見学したいこともあり、9月6日に試合会場となったオリックスの2軍施設、舞洲サブ球場に足を運んだ。

 練習試合そのものはプロとアマの差は如何ともしがたいものがあり、オリックスが7-0で快勝している。ただオリックスは今回のOBC高島戦のみならず、“育成試合”と称して2月から毎月のように社会人、大学、独立リーグと積極的に試合を組んでいることを知ることができた。筆者が米国に拠点を移した1993年当時はまだプロとアマの間には大きな壁があった。ここまでプロ・アマ交流が進んでいる実情をまったく知らなかった。

 「まず球団関係の方に自分のところを選手を見てもらえる絶好の機会です。もちろん一緒にやらせてもらえることで技術を含めいろいろ見させてもらえるので次に繋がります。こちらはメリットしかないです。

 阪神戦の後もたくさんの収穫を持ち帰れました。シートノックが上手くなってましたし、選手の技術が上がっています。実際に試合で目で見るのと、言葉で説明するのでは全然違いますからね」

 野原監督が説明するように、プロと交流試合ができるアマ側が様々な面でメリットがあるのは間違いない。それでは逆にプロ側は、レベルが下回るアマや独立リーグとの交流にどんなメリットがあるのだろうか。田口壮2軍監督に確認してみた。

 「メリットは普段できないことを全部試せるというところです。中には育成の選手で2軍の試合にも出られない選手がいるので、その選手たちの技術がどれだけ上がったかを確認できます。あとは普段リーグ戦をやっている中で課題があったりした場合でも、リーグ戦中だと思い切ってチャレンジできる部分がないんです。(交流戦は)それができる機会なので、そういう意味では(相手が)強い、弱いに関係なく助かりますよね。

 (課題に関して実戦で試して)どんな感覚なのかというとことがありますから。それをいろいろ検証できるんです。自分らもストップウォッチを持ちながら相手選手のレベルも確認できますし、その中で成功したプレーがプロのレベルで使えるかどうかも検証できます。また(交流試合では)選手を自由にプレーさせているので、彼らが何を考えながらプレーしているのか頭の中も理解できます」

 田口監督が説明するように、ファームの場合1軍より試合数が少ない上、中止試合の埋め合わせはないので、昨シーズンでも各チーム110~120試合の公式戦に留まっている。しかも3軍制をとっていないチームは、2軍に育成選手を含め多くの選手を抱えており、すべての選手に平等に出場機会を与えることができない状況だ。そうした選手たちに実戦機会を与えられる場がアマとの交流試合というわけだ。

 まさに双方にメリットのあるプロ・アマ交流。今後更なる野球界の発展を図っていく上でも、プロとアマの壁が完全撤廃されるのが理想的だろう。

 「これが試合をするだけでなく、(プロから)教えるという技術交流というところまで発展すると、もっと面白いでしょうね。(現在は)あくまで試合をやるだけです。そこでアマチュアを教えていいのかというのも出てくるし、その辺の規定を詳しく知らないので…」

 田口監督からの示唆を受け、社会人野球を統轄する日本野球連盟に確認したところ、現在ではプロとアマの壁は完全撤廃され、試合のみならず技術交流もできる環境になっているらしい。しかもプロ・アマ交流はアトランタ五輪の頃から始まり、すでに20年以上が経過している事実を教えてもらった。

 ただし学生野球はまったく状況が違う。大学野球と高校野球を管轄する日本学生野球協会によると、基本的にはプロとの交流は現在も認められておらず、大学生が3月と8月だけプロとの交流試合が認められているのみのようだ。一方で、元プロ選手たちがアマチュア資格を回復し、学生野球の指導に携われるようになってきているのも確かなのだが…。

 どんな競技でも世代を超えて交流できることに越したことはない。今後学生野球も含めプロ・アマ交流の完全自由化が実現できる日が訪れることを願うばかりだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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