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テレワーク円滑化へ向けて簡単に試せるツールは?Zoom、Teams、Slackとの使い分け

土橋克寿クロフィー代表取締役、テックジャーナリスト
(写真:アフロ)

新型コロナウイルスの影響を受け、テレワークの導入が進んでいます。東京商工会議所の調査によると、6月時点のテレワーク実施率は67.3%、これは3月調査時の26.0%に比べると41.3ポイントも増加しています。この調査は6月頭、都内中小企業1111社が回答したもので、従業員30人未満のテレワーク実施率は45.0%、300人以上では90.0%と、従業員規模が大きいほどに実施率の高い結果でした。

また、米デル テクノロジーズが、全国の中小企業の経営者および従業員1072人へ実施した調査によると、7月時点のテレワーク実施率は36%、3月調査時の13%より23ポイントも上昇しています。各調査で、テレワーク導入がじわじわと拡大する様子をうかがえる中、飛躍的に利用の広まったオンラインツールとして、ZoomやMicrosoft Teams、Slackなどがあげられます。ただ、これらは全ての組織や場面に対応できるものではなく、利用シーンによっては課題感も感じ取れます。そこで、テレワークにおける音声コミュニケーションに焦点を当てつつ、いくつかのツールを駆け足で紹介していきます。

◆テレワークにおける音声コミュニケーション

Pragliの利用画面、Pragli公式サイトより
Pragliの利用画面、Pragli公式サイトより
Tandemの利用画面、Tandem公式サイトより
Tandemの利用画面、Tandem公式サイトより

Discordは、元々ゲーマー向けボイスチャットツールとして知られていましたが、その手軽に構築できるオンラインおしゃべり空間を、テレワークに活用する動きがあります。評価されているポイントは、動作の軽快さと高品質な音声です。ゲーマーのゲーム内コミュニケーションの妨げにならないよう、軽快動作と高品質ボイスチャットを強化してきたことが、ここにきてテレワーク層にも受けた形となりました。

Discordのよりビジネス版ツールという立ち位置にあるのが、PragliTandemです。Pragliで特徴的なのは、アバターを使ったコミュニケーションを軸にしていることで、よりカジュアルな雰囲気が提供されていることです。一方のTandemは、よりシンプルな使い心地を実現しつつ、チームメンバーが今どんなアプリを使っているかがわかることが特徴的です。この可視化によって、エンジニアがコーディングに、デザイナーがデザインに今集中しているといったことをオンラインで把握できるため、音声コミュニケーションの心理的ハードルを下げることに一役買っています。

Spatial Chatの利用画面、Spatial Chat公式サイトより
Spatial Chatの利用画面、Spatial Chat公式サイトより
Remoの利用画面、Remo公式サイトより
Remoの利用画面、Remo公式サイトより

全く異なるコンセプトで、ユニークな通話体験を得られるツールもあります。Spatial Chatは、距離感というテーマを持たせたオンラインビデオ通話ツールです。自分のアイコンを自由に動かし、他のアイコンへ近づけたり離したりすると、その距離感に応じて話し声の強弱が変わります。オンラインツールでありながら、よりリアルに近い感覚を得られます。

オンラインバーチャルオフィスサービスのRemoは、あらかじめ用意された複数テーブルの2Dマップが特徴的で、参加者はこれらの座席へ自由に移動ができ、テーブルごとにコミュニケーションが行われます。交流会やコワーキングスペースの代替として、利用されるケースが多いようです。

◆まずは小さく試す

Miroの利用画面、Miro公式サイトより
Miroの利用画面、Miro公式サイトより

この他にも、議論の場であればオンラインホワイトボードのMiroが、またオンラインのプレゼンテーションをよりリッチにしたいのであればmmhmmが役立つでしょう。海外発ばかりだけでなく、この領域の国内発サービスも活況を呈してきています。このほど、NTTコミュニケーションズがオンラインワークスペース『NeWork』の事前登録を始め、今年6月に上場したデザイン会社グッドパッチがクラウドワークスペース『Strap』の事前登録を開始しました。まだ試験提供段階ですが、より日本の働き方や利用シーンに合った使い心地への期待が高まります。

テレワークは、部分的に取り入れるにしろ、その円滑な体制作りは本当に難しく、失敗も積み重ねることになるでしょう。ただ、小さく早く失敗していき、そこからドンドン軌道修正して前へ進んでいくことが肝要です。今回、各サービスの説明を一言程度に留めつつ、数多く紹介しているのも、こういった体験型ツールはまず自ら試してみるのが一番な上、各シーンによって最適なツールは異なるからです。

ZoomやMicrosoft Teams、Slackからの乗り換え検討というよりは、シーンに応じてうまく使い分けていくことが、現時点では良いでしょう。今回紹介したサービスは、無料トライアルが用意されているものばかりなので、まずは自社で小規模に導入して、色々と試行錯誤してみてはいかがでしょうか。

クロフィー代表取締役、テックジャーナリスト

1986年東京都生まれ。大手証券会社、ビジネス誌副編集長を経て、2013年に独立。欧米中印のスタートアップを中心に取材し、各国の政府首脳、巨大テック企業、ユニコーン創業者、世界的な投資家らへのインタビューを経験。2015年、エストニア政府による20代向けジャーナリストプログラム(25カ国25名で構成)に日本人枠から選出。その後、フィンランド政府やフランス政府による国際プレスツアーへ参加、インドで開催された地球環境問題を議題に掲げたサミットで登壇。Forbes JAPAN、HuffPost Japan、海外の英字新聞でも執筆中。現在、株式会社クロフィー代表取締役。

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