【橋本市(高野山エリア)】「教わる」と「教える」が表裏一体。子ども達が主役の学びの場がありました
昨日9/11に配信した内容と現場はかぶるのですが、9/11の内容は「学校での動物飼育のメリット」の話で、本日の切り口は「子供が子供に教える価値」についてのお話です。
9/11配信記事【橋本市(高野山エリア)】教育現場での動物飼育のメリット。「ウズラ」がいい? 小学生ウズラー増加中!
自学自習で学び続けて、特化した専門知識と経験を持つ中学生の女の子が、その専門分野を自分の言葉に変換して更にかみ砕いて、人生で初めて他人に教える。
しかもそれが初対面の小学生の子ども達に教える、という貴重なイベント現場に出会えたので、「どんな化学反応が生まれたのか」その様子をレポートします。
事のなりゆき
ウズラの飼育希望者募集についての過去の筆者の記事を読んで、「クラスとしてウズラを飼育するためのウズラの卵が欲しい」とのことで、和歌山大学教育学部附属小学校の中谷栄作先生からご連絡頂きました。
クラスとしてヒメウズラ飼育のきっかけ(以降ヒメウズラのことを「ウズラ」と略します)
総合学習の授業時間として子供たち自らが材料から作る「ピザ作り」を目指しており、その中でタマゴの供給先として子ども達がウズラを選択。
※ウズラを選んだ理由は、ニワトリにつつかれたら怖くて痛そうだけれど、ウズラは小さいのでそんなに怖くないはず、という子ども達の意見から。
これによりウズラを市販の卵から育てるところから行うことになったものの、先生と子ども達だけではうまく卵から孵化させられず、Yahoo!ニュースを見て「ウズラの飼育をやり直したい」ということで今回の連絡に至ります。
そこで、ウズラの卵の提供に加えて、ウズラ飼育に詳しい橋本市隅田中学校2年生 水口二胡さんが和歌山市に出動して、急遽『ニコ先生の動物教室』を開催して、子ども達に実際に見て・触って・座学もあるイベントを特別プログラムとして開催しました。
※過去の水口二胡さんの鳥好き記事はコチラ↓
【橋本市(高野山エリア)】生き物大好き!ずっと好奇心を持ち続けて挑戦する中学生 × 超可愛いウズラ
実施イベント内容
①触れ合える小さな動物園
(二胡さんのペットのヒメウズラ ・フクロモモンガ ・アフリカヤマネ・モルモット・ヒョウモントカゲモドキ・碁石チャボについて学びます)
⇒実際に触れる機会の提供。生き物との具体的な触れ合い方、持ち方(抱き方)、注意点(その行動がなぜダメなのかの理由)も具体的な触れ合い方を見せながら説明する。
⇒生き物それぞれの重さ、肌触り、温かさ、匂い、動き、生態(エサの食べ方、水の飲み方)、鳴き声などを体感し、総合的に命について学ぶ・感じる
※子ども達が触ることにより各動物にかかるストレスを理解・把握したうえで特別にイベントに協力されています。普段は出張イベントなどはされておりません。
②ヒメウズラの生態について座学
・二胡先生が自分の実践に基づいた卵からの育て方を解説する。
⇒自分たちと年の近いお姉さんが実体験に基づいて「小学生でもできるよ」と伝えると、自分たちもできそうに思える。
・成長を観察する際の、オススメ観察ポイントを紹介
・生き物と関わる、育てる面白さを等身大の自分の言葉で子ども達に伝える
※子ども達が飽きないようにクイズ形式の参加型にしたり、ボディランゲージも使いながら伝えていました。ちなみにニコ先生は実は人見知りでシャイ、人前でしゃべるのは苦手、更には人に教えるのは今回が初めてなので非常に緊張しつつも子ども達に寄り添い、頑張っていました。
③ニコ先生をインタビュー
ここだけは中谷先生が司会進行役で、子ども達がニコ先生に動物関連の質問をするコーナー。
⇒動物を飼う事への想いや魅力を伝えたり、ちょっとだけみんなより専門的なことをして先を走っているニコ先生から見えている世界を生き物好きな子ども達へ伝える。
大人とも親とも違う、あまり年齢の離れていないお姉さんが、「生き物に関わりたい」という自分の夢を語って、それに向かって努力している姿を子どもたちにありのまま伝える。子どもたちはそれぞれの自分の夢について考え、今の気持ちを素直に口に出す。という素敵な時間でもありました。
イベント開催中の子ども達の様子
当然ながら動物を触っている時はテンションMAX! みんな好き勝手に動いてる!
⇒さわれた!持てた!抱っこできた!
⇒動物の正しい持ち方教えてもらった!抱っこするのにまごついている友達に教える!
⇒トカゲを近くでじっくり見れた!
⇒ニワトリのトサカさわれた!こんな感じなんだ!
⇒動物と目があったよ!
⇒ニコ先生にあれもこれも質問責め
様子を拝見していると、
・動物にさわれたことを中谷先生に自慢する子ども達多数
・最初は動物にびびりながら、触れるとニッコリ
・二胡先生に見守られながら最初に触った子が、次の子に触り方を実演して教える
・二胡先生は優しい性格なのと年が近いのとで、初対面でも話しかけやすく、子ども達は積極的にぶつかって学びを得ようとしていました。
これにより、
座学の学び
↓
学んだ知識をすぐさま現場で実践、疑問はその場で質問
↓
子ども達どうしが現場で動物への接し方の知識の共有(その場で復習)
↓
子ども達が動物を目の前にしながらあーだこーだ積極的に互いに感想や気付きをディスカッションして更なる知識の共有+モノの見方(観察する力)を鍛える
例)
・トカゲはカッコいいよね!。
・チャボは抱くと温かくて気持ちいいよ!
・モモンガは家で飼えるんだって! などなど。
という一連の流れが短時間の間にスムーズに起きていました。
見ていてめっちゃ分かりやすい、子ども達の間で学びの連鎖がどんどん生まれていく現場でした!こんなの自分の学校時代には経験したことのない時間。すごい!
また、子どもの頃に大人から口頭で「生き物(ヒト含む)に対する優しさや思いやり」を大事にするように言われると思いますが、そんな言葉だけでは分からない「なぜ必要なのか?」「どうしたら良いのか?」も、リアルに学べる・腹落ちできる、そんな現場でした。
質問タイムやニコ先生をインタビューコーナーでは、
みんな積極的に手をあげて質問したり感想を報告していて更にびっくり。言わされるのではなくて、自分の感じたことを言いたい、他のヒトに伝えたい、そしてウズラをきちんと飼いたい強い気持ちを感じました。
(たぶんこれは今回のイベントだからではなく、普段から子ども達みんなが発言しやすい環境、先生と生徒のコミュニケーションが取れている環境を作られているからだと思われる)
イベントが最後に向かうにつれて、ヒメウズラ育てること(=命を扱う事)の技術的な面の学びだけでなく、子ども達が自分なりの飼い方を頭の中でどんどんイメージしながら、クラスで飼育する・みんなで育てていくことへの「やりがい」「責任」を自分事として納得してゆく姿も見れました。
イベント後の子ども達の反応
・純粋に生き物を飼いたい子が増えた
・イベント後は教室の(既に孵化に成功した)ウズラを世話をしたい子どもが増えた
・休みの日は子ども達が自主的にホストになり自宅に持ち帰って預かり飼育したい子どもが増えた
・その結果ウズラ飼育にはまるご家庭も出てきた
・これまで話をしていなかった子どうしが飼育を通じて会話するようになり、友達が増えたり関係が深まった子もいる
・自宅での飼い方が分かったので、土日に自宅でホスティング(預かり飼育)したい子が増えた。
・よそのクラスの子ども達も遊びに来て、交流が増えた
※なお、今回の中谷先生のクラスでの飼育プログラムは保護者の許可を得ての飼育であることと、感染症やアレルギー対応を配慮された上で実施されています。
まとめ
たった一回のイベントですが、子ども達には非常に多くの学びと気付きがあり、イベント後には更にその学びを活かしつつ、動物を通じた子ども同士の人間関係にも大きく影響があった模様。
先生が「教える」→子ども達が「教わる」という一方通行の関係ではない、子ども達どうしが主役となり、みんなが同じ方向を向いて「教え合い」「学び合う」、相互の学びに繋がるやりとりが現場で頻繁に見られたのも特徴でした。
今回、先生役をされた二胡さんの活躍も含めて、子ども達が主役の非常に素晴らしい学びの生まれる場を拝見できました!
更には、先生役のシャイな二胡さんもイベントを通じて子ども達に教えることで気付きや学びがあり「話を聞いてもらって動物を好きになる子が増えて嬉しい」とコメント頂いています。一方通行ではなく、イベント関係者全員(教える側も)が育つことのできるイベントってあるんだ!と非常に驚きでした。
今後、このような教育的な価値の高いイベントが増えればいいなと思います。
今回ご連絡いただいた中谷先生は、今は和歌山市ですが、なんと橋本市の応其小学校・紀見小学校・あやの台小学校で長年勤務されたご経験があり、授業を受けたことのあるご家庭は多いはず。お子様で自らYahooニュースを見る方はいないと思うので、先生と想い出のあるご家庭の方が記事を見て居られたら是非お子様にも先生の活躍をご紹介ください。和歌山市でクリエィティブな教育活動を実行中です!
中谷栄作先生プロフィール
大阪教育大学卒業後、2009年から小学校教員として勤務。橋本市 応其小学校・紀見小学校・あやの台小学校で14年勤務しながらESD(持続可能な開発のための教育)を推進してきた。2023年度から和歌山大学教育学部附属小学校に異動し、総合的な学習の時間を中心に「子どもたちといっしょにみんなが本気になれる本物の学びの創造」を目指し、教育活動に取り組んでいる。現在は和歌山大学教育学部附属小学校に勤務。