長崎原爆の日「一人ひとりが声を挙げ、世界を変えるべき時がきている」核兵器の次の脅威のLAWS
8月9日は長崎原爆の日である。長崎市の田上市長が、長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典で「長崎平和宣言」を読みあげて、以下のようなことを述べていた。
長崎市長が「危機を乗り越えるためには、一人ひとりが当事者として考え、行動する必要があることを学びました」と新型コロナウィルス感染拡大を例に出して、核兵器の脅威について「核兵器がもたらす危険についても一人ひとりが声を挙げ、世界を変えるべき時がきているのではないでしょうか」と訴えていた。
核兵器(原爆)が使用されて初めて人類はその恐怖と直面することになった。第2次世界大戦で使用された核兵器は、その後の国際政治の安全保障体制も大きく変えた。米ソは核兵器開発競争によって冷戦時代に抑止力を効かせてきた。核兵器使用による脅威を知っているので、核兵器所有国同士での戦争は回避されてきた。そして冷戦が終結してから30年も経つ21世紀でも核兵器は廃絶されておらず、現在でも北朝鮮のように新たに核兵器を所有することによって、大国として扱われることによって米中と対等の立場を得ようとしている。
核兵器は火薬に次いで戦争における「第2の革命」と言われている。そして核兵器に次ぐ戦争の「第3の革命」として懸念されているのが、AI(人工知能)を搭載した兵器による戦争である。キラーロボットとも称される自律型殺傷兵器(Lethal Autonomous Weapon Systems:LAWS)は、人間の判断を介さないで、AI自身が判断して標的や敵を攻撃して殺傷してしまう兵器である。世界中のAIの開発者やNGOなどが、人間の判断を介さないことが非倫理的、非道徳的であるとしてLAWS開発に反対を訴えている。だが、AIは軍事分野では積極的に活用されている。新しい技術が軍事分野で活用されること自体は「RMA(Revolution in Military Affaiars:軍事における革命)」と言われており、一般的なことだ。実際にAIを搭載したロボットの方が人間よりも3D業務(Dirty:汚い、Dangerous:危険な、Dull:退屈な)には適しており、従来の人間の兵士ができなかった業務を代替してくれている。
国連の安全保障理事会の専門家パネルが2021年3月に報告書を発表していた。その中で、2020年3月にリビアでの戦闘で、トルコ製の攻撃ドローンKargu-2などの攻撃ドローンが兵士を追跡して攻撃を行った可能性があると報告していた。実際の紛争で自律型殺傷兵器で攻撃を行ったのは初めてのケースであると英国のメディアのインディペンデントは報じていた。
AIを搭載したLAWSが実戦で本格的に活用されるようになり、人間が判断しないでAIだけの判断で敵や標的を攻撃することが当たり前になるかもしれない。またLAWSは人間の理性を超越した破壊力を持っているかもしれないし、人間がコントロールできなくなってしまうかもしれない。現在ではまだ多くの人がLAWSのようなAIを搭載したロボット兵器が登場して、人間や標的を襲ってくることはSFのような夢物語で非現実的だと思っているだろう。LAWSによる新たな戦争の脅威と恐怖に気がついていない人も多い。だがAI技術の軍事への活用は着実に進んでおり、LAWSの脅威はそこまで現実になってきている。
長崎市長が「核兵器がもたらす危険についても一人ひとりが声を挙げ、世界を変えるべき時がきているのではないでしょうか」と訴えていたが、LAWSの本格的な使用によって、人類は取り返しのつかないことになるかもしれない。その前に、LAWSがもたらす危険についても一人ひとりが越えを挙げて、世界を変える時がきている。