Yahoo!ニュース

古川雄輝、長井短が指摘する昨今のペットブームの問題点「死ぬまで面倒を見るために、なにをしてあげるか」

田辺ユウキ芸能ライター
(C)2022「ねこ物件」製作委員会

猫たちと一緒に暮らす「猫付きシェアハウス」を舞台に、いろんな事情をかかえた若者たちの人間模様を描く『劇場版 ねこ物件』。今年4月から6月に放送されたテレビドラマを映画化した同作は、猫シェアハウスのオーナーをつとめる二星優斗が、あらたな入居者を募りながら、生き別れた弟を探す物語だ。

猫の生活リズムを最優先に考える優斗を演じたのは古川雄輝。そして、猫シェアハウスを管理する不動産会社の職員で、猫が苦手な広瀬有美役には長井短。今回は古川、長井に映画の見どころだけではなく、昨今のペットをめぐる問題などについても話を訊いた。

――古川さんが猫と一緒に暮らしていることは、『ねこ物件』シリーズが始まるまで知りませんでした。

古川:猫が題材の作品が決まったら、飼っていることを公表しようと思っていたんです。長年「猫が好きだ」と言い続けてはいたんですけど、全然決まらなくて(笑)。『ねこ物件』でようやく、2匹飼っていますと言うことができました。やっぱり自分は役者なので、そういうことも仕事にきちんと結びつけたかったのもあります。

長井:古川さんの猫愛はすごいんですよ。現場でも猫のことは古川さんに聞いていましたから。「どういう風に触ればいいですか」とか。私は猫を抱いたこともなかったから。

古川:皆さん、最初は不慣れだったんですけど、少しずつ慣れていきました。大事なのは、猫にストレスを与えないことです。自分なりの猫の育て方にも関連する話なんですけど、健康上に問題がないことであれば、基本的には猫に無理をさせたくないんです。お風呂に入れたり、歯を磨いたりとか、そういうのって基本的に猫は嫌がりますよね。自分はそういうことのプロではないので、慣れている方にお願いをした方が良いと考えています。

(C)2022「ねこ物件」製作委員会
(C)2022「ねこ物件」製作委員会

――猫の気持ちを第一に優先するということですね。

古川:たとえばこの映画の舞台挨拶でも、猫に登場してもらうじゃないですか。毎回「ごめんね」と話しかけています。猫はカメラのフラッシュや音にも敏感です。猫側の気持ちに立つと、きっとその場にはいたくないはず。だけど自分も含めて、みんな仕事なので。「マスコミのみなさん、早く撮ってあげて!」「『こっち向いてください』とかはなしにして!」って思います(笑)。

長井:ハハハ(笑)。そうそう、古川さんは本当に猫の気持ちに立って物事を進められるんです。現場でも、わざとではなくてもやっぱり、誰かがつい大きな音を出すことがありますよね。そんなときも「あまりそういうことはしないであげてくださいね」と丁寧に伝えていらっしゃいました。古川さんってまさに、人間というより猫側の方なんです。

古川:「人間は人を裏切るけど、猫は人間を裏切らない」と考えています。たとえば「シャー」と牙を剥いても、それは自分の身を守るためにやっているので、そうなったら人間が悪くて。家で粗相をしちゃったら、それも人間が悪いです。「どうしてこんなことしちゃったの」と怒るのはダメです。こちらに問題があるから、猫たちはそうしちゃうんです。

長井:正直なところ、古川さんに会うまで「良いネコ好き」にあまり出会ったことがありませんでした。もちろん人それぞれの育て方があるから否定はできないけど、それでも「アクセサリー感覚じゃないかな」と思う人もいましたし。猫の間近で大声で「かわいい!」とか言っている人を見たりすると、「自分がそれをされたらうるさいでしょ」と言いたくなる。

古川:SNSで写真を載せたりするとか、かわいがり方は自由であるべきだと思います。でも無理やり写真を撮ったりしてはいけないです。猫好きには「あ、怒った顔してる。無理やり撮ったんだな」ってバレますから。やっぱり命を飼っているという意識を常に持っておかないといけないなと思います。死ぬまで面倒を見なきゃならないし、そのためになにをしてあげるかが大事ですよね。

(C)2022「ねこ物件」製作委員会
(C)2022「ねこ物件」製作委員会

――この『ねこ物件』は、そういったアクセサリー感覚だったり、単に「かわいい」だったり、そういう考え方に対するメッセージがちゃんと込められていますよね。昨今はコロナ禍によるペットブームがある一方、飼育放棄の問題も深刻化していますし。その点で、古川さん、長井さんなど表に立つ方がペットについて言葉を発するのは、すごく重要だと思います。

古川:たとえば猫や犬の保護についてもっと考えなければならないし、ペットショップであっても飼育状況がもっときちんとチェックできていないといけないです。まだまだ捨てられたり、かわいそうな運命をたどったりしているペットはたくさんいます。それは人間の都合によるものでしかないです。猫や犬は、みんな良い子ですから。長年の問題ですけど、まだまだ解決できていないことが多々ありますよね。

長井:『ねこ物件』で描かれていることは、すごく意義がありますよね。「こういうことはやめた方が良い」という偏った考えではなく、あくまでみんなで考えるきっかけになっているので。

――劇中では「猫は人生の師匠である」など、さまざまな格言も登場します。おふたりにとって猫とは、どんな存在でしょうか。

古川:自分はシンプルに「家族で癒やし」です。主人公の優斗と同じ考え方ですね。あとは、自由気ままに生きているので「うらやましい存在」でもあります。自分は猫の面倒をこまめに見てあげたい性格なんですけど、猫は自分中心に全部が動いています。我(が)をちゃんと持っているところに、憧れがあります。

長井:私のなかでは、「猫は猫である」かな。なにかをカルチャー化するのが好きではないので、猫を猫として見たいというか。あと、古川さんたちの話を聞いてあらためて、「今の自分は猫を飼おうと思わない」と考えています。というのも、自分にその責任を負える準備が整っていないから。かわいいとはもちろんすごく思うけど、それ以上、前に進むことができないんです。

(C)2022「ねこ物件」製作委員会
(C)2022「ねこ物件」製作委員会

――なるほど。

長井:『ねこ物件』に参加して、ますますそういう風に考えるようになりました。この映画って、猫が好きな人、猫への経験値の高い人はもちろん楽しめるけど、私みたいに「ちょっと気になる存在だけど、まだ分からない」という人にとって、あらためて「猫を飼いたいけど、大丈夫かな」と向き合えるきっかけになるから。私が演じた有美もそうですけど、猫との距離感に戸惑っていたり、むしろ苦手だったり、猫ブームに対して疑問を持っている人にこそ観てほしいですよね。

古川:この映画はかわいいニャンコがいっぱい出てくる癒し系映画です。でも、このインタビューでお話ししたような、猫を飼うにあたっての注意点、心構えもたくさん詰まっています。猫好きの考え方に寄り添った脚本ですし、いろいろ勉強になりました。そして、猫をきっかけとした人間模様もしっかり描かれています。猫に癒やされつつ、しっかりとしたドラマも楽しんでいただきたいです。

映画『劇場版 ねこ物件』は全国公開中

配給:AMGエンタテインメント

芸能ライター

大阪を拠点に芸能ライターとして活動。お笑い、テレビ、映像、音楽、アイドル、書籍などについて独自視点で取材&考察の記事を書いています。主な執筆メディアは、Yahoo!ニュース、Lmaga.jp、Real Sound、Surfvote、SPICE、ぴあ関西版、サイゾー、gooランキング、文春オンライン、週刊新潮、週刊女性PRIME、ほか。ご依頼は yuuking_3@yahoo.co.jp

田辺ユウキの最近の記事