原英莉花がスコア誤記で米ツアー予選会を失格に なぜこのような事態が起こったのかを競技ゴルファーが解説
来季の米国女子ツアー参戦を目指し予選会に挑戦していた原英莉花プロが、スコア誤記によりセカンドステージ3日目に失格となった。
本来67(OUT34/IN33)のところが66(OUT33/IN33)となっており、過少申告での失格処分となった。
40位タイまでが最終予選会に進めるこのセカンドステージにおいて、暫定トップ10以内の順位に位置していたこともあり、非常に残念な結果に終わってしまった。
今回の事態を受けSNSでは「トッププロでもスコアを間違うのか」などといったコメントが散見されるが、実はこれは本人がスコアを数え間違えたわけでは決してない。
これを理解するためには、まずはゴルフにおけるマーカー制度を理解する必要がある。
ゴルフの競技に出場した経験がない人は、意外にこのマーカー制度を知らない人が多い。
そこで本記事ではこのマーカー制度と、なぜ今回スコア誤記が起こってしまったのかを競技ゴルファーの筆者が詳しく解説したい。
マーカー制度についての解説
まず競技ゴルフにおいて自らのスコアを数えてスコアカードに記入するのは、自分本人ではなくマーカーに指定された同伴者である。
自分もまた同伴者いずれかのマーカーとなり、その人のスコアを各ホール毎に数えてスコアカードに記入する。
そしてラウンド終了後にマーカーからスコアカードを受け取り、自らのスコアに間違いがないかを確かめた上で、本人とマーカーの署名を行いスコアカードを提出する。この一連の作業はアテストと呼ばれている。
以上が競技ゴルフにおけるマーカー制度の仕組みだ。すなわち今回まず初めに原英莉花プロのスコアカードを誤記したのは同伴者のマーカーの選手ということになる。
なぜ原英莉花プロは失格となったのか
今回問題があったのは8番ホールのPar4でのスコアだ。原英莉花プロはこのホールをボギーで終えている。
同伴競技者のマーカーから渡されたスコアカードには本来『5』となっているはずの箇所が『4』と書かれていたが、それをアテストでの読み合わせでも気づかずに提出してしまったのだ。
ここで多くの方は「途中のホールのスコアの間違えには気づかずとも、トータルスコアの間違いには気がつくのではないか?」と疑問を抱くだろう。
今回原英莉花プロは自ら『アウトのトータル34』『ラウンドのトータル67』と合計スコアに関しては正しく記入していたそうだ。
すなわちスコアカードは8番の1ホールだけのスコアが間違えている状況で提出されてしまったのである。
これを大会主催者側が『アウトのトータル33』『ラウンドのトータル66』と修正し集計を完了してしまった。
原英莉花プロがスコアの間違いに気がついたのが全ての集計が終わった後であったため、スコアの過少申告による失格処分を受けることになってしまったのである。
なぜ今回のようなことが起きたのか
今回のスコア誤記が起こった原因については、以下の3点に問題があったと筆者は考えている。
- マーカーが原英莉花プロの8番のスコアを誤記したこと
- 原英莉花プロがアテスト時にその間違いに気づけなかったこと
- 大会運営側が原英莉花プロに確認を取らなかったこと
まず1つ目の原因は同伴者のマーカーが原英莉花プロの8番のスコアを誤ったことだ。
これがなければ過少申告による失格はそもそも起こることはなかった。
同伴者のマーカーもスコアに不安があったのであれば、その場で本人に確認を取るべきであった。
続いて2つ目の原因は原英莉花プロがその間違いに気がつけなかったことだ。
日本女子オープンを激闘の末優勝したばかりでの長丁場の米予選会参加ということもあり、ラウンド終了後にはその集中力は尽きていたのかもしれない。
そして3つ目の原因は大会運営側がしっかりとした確認を取らなかったことだ。
少なくとも各ホールのスコアの合算と合計スコアが合致しない状態でスコアカードが提出されていたわけなので、アテスト時にその誤りに気づいて本人とマーカーに確認を取るべきであった。
日本のアマチュア競技では、ほとんどの場合アテスト会場で電卓を用いてこれらの確認が行われている。
過ちがあった場合も最終提出前に確認できるため、筆者が出場している日本のアマチュアの試合ではこのような事件が起こることは考えられにくい。
もしくは大会運営側もその場で確認は取ったが、英語での会話が通じずに誤った修正が行われてしまった可能性も否定できない。
まとめ
以上が今回の原英莉花プロのスコア誤記による失格処分の詳しい解説だ。
いずれにせよ先日日本女子オープンで2度目の優勝を果たしたばかりなだけに、今回の原英莉花プロの失格は非常に残念な出来事であった。
筆者個人としても今最も注目しているのが原英莉花プロなので、一報を受け残念な気持ちを抱いている。
しかし来年の米ツアーへの参加の道は決してなくなってしまったわけではない。
11月に行われる日本開催の米国女子ツアー「TOTOジャパンクラシック」の優勝によってメンバー資格を得る方法は残されているのだ。
ぜひ原英莉花プロには、今回の悔しい気持ちをこの大会にぶつけて活躍してもらいたい。