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女子バレー美女姉妹のイジメ問題に揺れる韓国はいま…過去の素行不良が暴露されるのか

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
ソウル光化門駅にある興国生命の広告。問題発覚直後も掲示されていたが(著者撮影)

女子バレー韓国代表の“美人双子”として日本でも知られ始めていたイ・ジェヨンとイ・ダヨン姉妹の“いじめ”暴露問題の波紋が広がるばかりの今日この頃だ。

ふたりには韓国プロバレーボールリーグであるVリーグの無期限出場停止処分、韓国代表資格停止・剥奪処分などが下されているが、世論の怒りは収まらず、大統領府が設置した国民請願には彼女たちのバレーボール界永久追放を求める声もある。

その請願は掲載からわずか3日で10万人以上が同意しているのだから、この問題はまだまだ収まりそうにない。

美人姉妹と女帝の不仲説から端を発して…

ふたりは現在、自宅で反省の日々を過ごしているというが、そもそも今回の一件は、ふたりが所属する興国(フングッ)生命ピンクスパイダーズの不振に端を発している節もある。

イ・ジェヨンの活躍などでVリーグ覇者にもなったチームは今季、ライバルチームからイ・ダヨンを引き抜いただけではなく、韓国女子バレーボール界のスーパーエースにして“強くて美しい女帝”とも言われるキム・ヨンギョンが11年ぶりに古巣で韓国復帰。これによって興国生命は「最強・最恐の戦力」と誇り首位を走っていた。

が、12月になると連敗が続く。その原因のひとつとして挙げられていたのが、キム・ヨンギョンとジェヨン&ダヨン姉妹の関係が悪いという不仲説だ。

筆者は1月10日から韓国に滞在していたが、この頃から女帝と美人姉妹の確執、特にキム・ヨンギョンとイ・ダヨンの関係が芳しくないということは現地のスポーツ記者たちも口にしていた。

「ダヨンのトスがジェヨンにばかり集中していることにキム・ヨンギョンが不満を抱いているらしい」とか、「勝負にストイックなキム・ヨンギョンと姉妹との間で隔たりがあるらしい」などで、実際、ふたりはテレビ出演や雑誌グラビアなど「コート外での活動」が目立っていた。

(参考記事:「この世の美貌じゃない」“美人双子”イ・ジェヨン&イ・ダヨンが雑誌で見せた圧巻ビジュアル

そんな不仲説が囁かれる中、イ・ダヨンがSNSでチーム内での孤立に苦悩しているようなニュアンスのコメントを発信。それに反応したのがジェヨン&ダヨン姉妹の中学時代のチームメイトだった。

『愛の不時着』出演俳優もイジメ加害者疑惑にさらされ…

それからの騒動については日本の各種メディアでも報じられているので本稿では省くが、「そもそもなぜ今、学生時代の、それも十数年前の過ちや失敗が問題になるのか」と疑問を抱く方々も多いかもしれない。

実は韓国では近年、有名人の学生時代の過ちや失敗がネット上で暴露されて大問題に発展するケースが非常に多くなっている。

特に多いのが芸能界だった。昨年は女優カン・スンヒョンが学生時代にいじめの加害者だったとの疑惑にさらされ、日本でも大ブレイクしたドラマ『愛の不時着』でイケメン北朝鮮兵士を演じたイ・シニョンも“いじめ加害者”疑惑が振りかかった。

イ・シニョンは告発者が「自分の記憶違いだった」と謝罪したことでハプニングに終わったが、韓国芸能界ではこうした“過去の暴露”が後を絶たない。

つい最近もオーディション番組『ミス・トロット2』に出演したチン・ダルレが過去の校内暴力疑惑に包まれ、出演辞退に追い込まれている。

こうした暴露が増えている背景には、SNSの普及も無関係ではないだろう。SNSが普及したことにより、いまや誰もが何かを発信できるようになった。

そしてその発信がネットで瞬く間に広がり、ニュースになる時代でもある。特にスターやアイドルといった芸能人の過去は注目を集めやすく、そのイメージとかけ離れたダークな面やスキャンダラスな過去は恰好のネタになる。

他人事ではないスポーツ界。Kリーグも調査へ

ゆえに韓国芸能界における過去の暴露合戦はヒートアップする一方でもあったのだが、それがスポーツ界でも起きたということだ。

スポーツ界でも過去のいじめ問題が明らかになって問題となったケースははあった。

2018年ドラフトでネクセン・ヒーローズ(現在のキウム・ヒーローズ)からドラフト指名を受けるもいじめの加害者であることが判明したとある選手は、レギュラーシーズン50試合出場停止の懲戒処分を受けているし、昨年のプロ野球ドラフトでNCダイノスから指名されたピッチャーはいじめの加害者であったことが判明して指名が撤回され、いまだプロ入りできていない。

そんな中で今回は女子バレー界のスター選手であるイ・ジェヨン&イ・ダヨン姉妹のいじめ問題が発覚しただけに、かなりショッキングだと言わざるを得ない。その影響は韓国スポーツ界全体にも飛び火しそうな気配もある。

それだけに各種スポーツ団体やチームの関係者もバレーボール界の混乱を他人事とは捉えていない。

「女子バレー界で起きた問題は、我々にとって無関係ではないと非常に深刻な事案として受け止めている。ただ、こうした暴露が連鎖している状況も気がかりだ。匿名で“自分も被害者だ”“アイツも加害者だ”という暴露が相次ぐ可能性もある」と気を揉んでいたのは、Kリーグのとあるクラブ関係者だ。

「儒教文化や軍隊文化の影響などでスポーツの世界でも自然と上下関係が形成され、訓戒目的でときに指導者や先輩が手を挙げることも黙認されてきたのが韓国スポーツ界でもある。理不尽なことは最近あまりないというが、徹底して内部調査する必要があるだろう」

実際、Kリーグはすでに動き出している。主管する韓国プロサッカー連盟が2月16日、Kリーグ1・2部全22クラブに公文書を送付。選手間での暴力や嫌がらせ、人権侵害の事例があるかを調査し、今後の対策を立てるため、ユースチームにも現状把握を要請したのだ。

また、韓国プロサッカー連盟は各クラブに選手調査も要請。各クラブが年4回実施する選手との面談において、学生時代にいじめ加害の事例があるかを質問項目に加えさせた。各クラブはさっそく、2月27日のシーズン開幕までに面談を行い、過去のいじめ加害の有無を確認する予定だという。

もはや選手の過去の素行や人間関係なども把握しておかなければ、それが時限爆弾にもなりかねない。火種は未然に消し落とそうと言うわけだが、それで抜本的な解決になるわけでもないだろう。

韓国スポーツ界にはびこる暴力やイジメを根本的に断絶し、韓国特有の上下関係・先輩後輩関係の葛藤を減らすためには、改善すべき課題がまだまだ山のように多いような気がしてならない。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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