「学校で教えてもらった」82.4%…小中高校生のネットリスクの学習状況(2021年公開版)
パソコンや携帯電話、とりわけ最近ではスマートフォンを使ってインターネットのサービスを利用する時には、多様な決まりごと、トラブルの回避方法、暗黙の了解的な知識・情報を習得しておく必要がある。それらは知っている人、慣れている人には当たり前の内容だが、知識の無い、経験の浅い人にはとても重要な事柄に他ならない。それらを知らずにインターネットを利用することは、海図を持たずに大海原へ出航するようなものだ。特に経験が浅い子供達には、それらの情報は必要不可欠に違いない。今回は「インターネットを利用する上での危険性に関する子供の学習経験」について、内閣府が2021年3月に報告書を発表した「令和2年度青少年のインターネット利用環境実態調査」(※)の内容を基に確認していく。
インターネットを介した子供の被害を少しでも減らすには、該当者となりうる子供への教育・啓蒙が欠かせない。そこで子供達に、これまで有害サイトやネットいじめの問題など、インターネット上で発生しうる危険について、説明を受けたり学んだりしたことがあるかを聞いた結果が次のグラフ。「学校などで教えてもらった」との事例がもっとも多く、8割台を占めている。学校が教育機関としての面目を保った形。
なお2018年以降は2017年までと質問の仕方が多少変更されており、厳密には連続性は無い。一部選択肢でイレギュラー的な変動が生じているのは、それが原因と思われる。
次いで多いのは親などの保護者から教えてもらった事例で、これが3割強。テレビや本などの媒体経由、インターネット、友人経由が続く。
経年推移を見ると、携帯電話契約時の説明(特にフィルタリング関連)の促進が行われていることもあり、「機器購入時に店員に教えてもらった」とする回答率が少しずつ増えていた。しかし2015年以降は減少を示しており、残念な形となっている。
他方「学校などで教えてもらった」「保護者から教えてもらった」は増加を示しており、関係界隈における啓蒙活動の促進が成されていることが分かる(2018年で大きな減少を示しているのは上記の通り、質問方法の変更によるものだろう)。スマートフォンの普及にとどまらず、携帯ゲーム機など多様な機器でインターネットへのアクセスが容易になったことから、子供を見守る立場の大人たちが一体となって鋭意努力を重ねていることがうかがえる。
ただし直近2020年で「学校などで教えてもらった」が大きく減っているのは、新型コロナウイルス流行により学校そのものが休校になった事例が多々あったからだと思われる。一方で「保護者から教えてもらった」「テレビや本、パンフレットで」「インターネットで」が増えているのもそれによるものだろう。
「保護者から教えてもらった」は直近では30.6%。見方を変えれば約7割の子供は保護者からネットマナー・リスクについて教えてもらっていないことになる。詳細データを確認すると、照れなどもあるのだろうが、子供の年齢が高くなるに連れて保護者から教わる率は低下する傾向がある(小学生43.2%、中学生30.9%、高校生20.0%)。もう少し、保護者側の積極的な教育啓蒙姿勢をお願いしたいところだ。
もっとも教えさとす場合には、まず保護者自身が十分な情報知識を得る必要がある。しかしながら現状は次の通りとなっている。
あくまでもこれは学んだ経験があるか否かであり、最初から不足なく知識を持ち合わせていれば問題はないが、すべての保護者がそのような知識を持っているとは考えにくい。
保護者も子供とともに学ぶ姿勢こそ、求められているのかもしれない。
■関連記事:
【ネットを使う高校生の半数近くは「ネット上の情報の正しさを確認する方法が分からない」という衝撃】
【政府に求める「子供をネットの有害情報から守るための施策」、トップは該当サイトへの規制強化】
※令和2年度青少年のインターネット利用環境実態調査
2020年11月5日から12月13日にかけて2020年11月1日時点で満10歳から満17歳までの青少年とその同居保護者それぞれ5000人に対し、調査員による個別面接聴取法(困難な場合は訪問配布訪問回収法も併用。保護者は訪問配布訪問回収法が原則)で行われたもの。時間の調整ができない場合のみウェブ調査法を併用している。有効回答数は青少年が3605人(うちウェブ経由は388人)、保護者は3633人(うちウェブ経由は421人、郵送回収法は180人)。
(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。
(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。
(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。
(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。
(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。
(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。