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2020年度は約177億人が利用…日本の鉄道利用客数推移などをさぐる(2021年公開版)

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
通勤に使う人も多い鉄道。利用客数は?(写真:kawamura_lucy/イメージマート)

2020年度は約177億人が鉄道を利用

昨今では省エネ・節約志向から再評価を受け、利用客も増加しているとの話もある鉄道。国土交通省の「鉄道輸送統計調査 年報」など各種公開資料を基に、日本の鉄道における利用客数などの動向を確認する。

最初に確認するのは、JR・私鉄を問わず日本国内の鉄道を利用した旅客数の推移。JRはほぼ全国展開、私鉄は一般的に地域との密着性が強いことから、利用者数はJR各社の合計の方が多いイメージがあるが、実際には私鉄各社の方が多い。直近2020年度ではJRが67億0700万人、私鉄各社が109億6300万人で、合計で176億7000万人が鉄道を利用している計算になる。延べ人数であることは言うまでもない。

↑ 鉄道・軌道旅客人数(億人)
↑ 鉄道・軌道旅客人数(億人)

↑ 鉄道・軌道旅客人数(億人)(積み上げグラフ)
↑ 鉄道・軌道旅客人数(億人)(積み上げグラフ)

バブル期までは漸増していた利用数も、バブル崩壊あたりで頭打ちとなり、それ以降は減退。今世紀に入ってから再び増え始めるが、金融危機・リーマンショックで再び下げ基調に。2011年度を底として、それ以降はおおよそ増加の傾向を示している。

また1990年代後半以降は、増加分のほとんどは私鉄によるもので、JRはほぼ横ばいの動きを示しているのが興味深い。他方この数年の上昇分では私鉄だけでなくJRにも伸びが見られ、これまでの上昇の仕方とはやや異なる方向性にあることが分かる。景気回復基調と定年退職者の急増に伴う旅行需要の高まりに加え、自動車による長距離移動が避けられるようになった、人口の都市集中化に伴い自動車を使う機会が減ったなど、さまざまな要因によるものと推測される。

総人口そのものは減少傾向にあることを考えれば、一人一人の利用回数が増えていることになり、鉄道そのものへの注目が高まっていると見て問題はあるまい。

直近2020年度ではJR、民鉄を問わず大きな減少を示している。これは新型コロナウイルスの流行による各種規制、外出自粛の影響を受けた結果に他ならない。

「人キロ」では?

鉄道などの交通機関の利用状況を示す指標の一つとして「人キロ」と呼ばれる単位がある。これは言葉の通り、旅客者数とその旅客を輸送した距離を掛け合わせたもの。例えば一人が10キロ移動すれば10人キロとなる。この値が多いほど、多くの人がより遠くまで利用したことになる。また旅客数の増加と比べて人キロの増加度合いが大きければ、単に利用客数が増えただけでなく、遠出をする人が増えたことを意味する。その「人キロ」で実情を確認したのが次のグラフ。

↑ 鉄道・軌道旅客人数(億人キロ)
↑ 鉄道・軌道旅客人数(億人キロ)

↑ 鉄道・軌道旅客人キロ(億人キロ)(積み上げグラフ)
↑ 鉄道・軌道旅客人キロ(億人キロ)(積み上げグラフ)

結果としてはほとんど旅客数そのものの動向との違いは見られなかった。利用客内部における利用スタイルに、劇的な変化が起きたわけではなく、純粋に利用客が増加したことが確認できた次第。

なお直近2020年度の旅客人キロの減少度合いは、旅客人数のものよりも大きなものとなっている。これは新型コロナウイルスの流行による外出自粛が、特に旅行などの遠距離利用者に影響したことを意味する。

もっとも各数字を用いて概算的に「利用客の平均移動距離」を試算したところ、私鉄は概して減少する傾向があるのに対し、JRはここ数年増加する動きを示している(直近年度では減少しているが)。

↑ 鉄道・軌道旅客一人あたり平均利用距離(キロ)
↑ 鉄道・軌道旅客一人あたり平均利用距離(キロ)

長距離の旅行利用者の増加が、平均値にも変化をもたらしているのかもしれない。

また直近2020年度の大きな減少は、新型コロナウイルスの流行による外出自粛が、特にJRにおける旅行などの遠距離利用者に影響したことを実証するものに他ならない。

「交通関係統計等資料」では残念ながら利用客の年齢階層別の構成までは把握できておらず、鉄道利用客における年齢動向は今件の限りでは確認できなかった。もっとも鉄道の利用客はほぼ横ばいで推移し、この数年はむしろ増加する傾向にあることが分かっただけでも幸いである。

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グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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