子供達のアトピー性皮膚炎の発症状況現状と推移
大人と比べて子供達が発症しやすい疾患の一つ、アトピー性皮膚炎。発症した場合にはかゆみを伴うため、当事者に大きな肉体的・精神的な圧迫となる。この病症に関する子供達の発症状況を、文科省の調査「学校保健統計調査」の結果から確認する。
まずは最新2015年度における学校種別・年齢別のアトピー性皮膚炎の者の割合。
5歳から6歳に成長すると値が有意に高まり、10歳ぐらいまでは3%強と高い値を示す。この年齢は小学校時代に該当する(大よそ6歳から12歳までが該当する)。小学校の環境がアトピー性皮膚炎を誘発するのでは無く、「小学校に進学して身体検査などを綿密に行う」「保護者の健康意識が高まる」などの理由から、アトピー性皮膚炎が”発覚する”ものと思われる。
中学校へ進学するにつれて値が低くなるのは、身体的な成長によるものと考えられるが、このデータだけでは確証は持てない。一方で高校生でも2%強との値は、50人に1人(2クラスに1人程度)はアトピー性皮膚炎を有しているとの実態を示していることになる。
これを男女別に見ると、一様にして女性の方が被患率は低い。
幼稚園から高校までほぼ同じ比率で、男女間では男性が女性よりも被患率が高い値との結果が出ている。原因は不明だが、中高生の場合は「女性の方が生育が早く、体力が付きやすいから」と考えることができる(その場合でも幼稚園・小学校の説明はつかない)。ホルモンの影響によるもの、あるいは遺伝子レベルでの男女の差異によるものとの説もあるが、まだ類推の域を出ていない。この状況は喘息でも確認されており、因果関係はともあれ相関関係のある事象として、同じ要因が一因として想定されるとの点で、注目すべき動向に違いない。
最後に経年推移。アトピー性皮膚炎に関する調査は2006年度から実施されているので、それ以降の値によるグラフの生成となる。
多少の起伏、順位の変動はあるが、アトピー性皮膚炎の被患率は減少傾向にある。特に幼稚園児の減少傾向は顕著なもの(人数では無く率なので、子供の人数そのものの減少とは何ら関係が無いことに注意)。数字動向だけではその原因をたどることはかなわないが、上記の通り原因こそ今なお不明ではあるものの、関連性を有する事象は多数確認されており、対策などが講じられているのも減少の一因だろう。
ただしこの1、2年に限ると、小学校と中学校で増加に転じるような動きも見せている。イレギュラーな動きの可能性も否定できないが、注意深く今後の動向を見守る必要がある。
アトピー性皮膚炎は見た目、そしてかゆみの病症も合わせ、子供には精神的・肉体的な負担となる。また対処療法においても負担は大きい。理不尽さを覚えることも多いだろう。周囲の人においては、十分以上の配慮を願いたいものである。
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