キムチ女、キムチ戦士、キムチ・セラピー。変わりゆく韓国の“キムチ観”のなぜ?
最も有名な韓国の食文化といえるキムチに関する、興味深い研究結果が出た。
世界キムチ研究所が最近の研究結果として、キムチから分離させた乳酸菌「WiKim31」に肥満の予防や改善効果があると6月11日に発表したのだ。
キムチ世界化を目指す研究機関
そもそも世界キムチ研究所とは2010年に設立された研究機関。「キムチ関連分野の研究開発を総合的に遂行」し、「国内キムチ産業を食品産業の代表的な成長動力産業として育成・発展させる」ことを目的に作られた。
(参考記事:“キムチ世界化”のために国家予算1000億ウォン投入した「世界キムチ研究所」の実態)
一時は「なんの成果も生み出せていない」と指摘されていたが、今回発表した研究結果は反響が少なくない。なんでも10週間の動物実験を行い、キムチ乳酸菌WiKim31を摂取させたところ、体重が12%も落ち、体脂肪量も9%下がったという。
WiKim31は世界キムチ研究所がキムチから分離させた31番目の乳酸菌という意味。キムチには約3万5000種の乳酸菌がいるそうで、世界キムチ研究所はこれまでアトピーの予防や改善に効果があるという「WiKim28」や、腸疾患の改善効果が見込める「WiKim38」などを発表してきた。
世界キムチ研究所は最終的に、キムチ自体が健康機能食品となる“キムチ・セラピー”を目指しているという。
ネットスラングや黒歴史アニメでイメージ悪化?
なんとも壮大な話だが、このニュースに触れた韓国ネット民の反応は意外なものだった。
「良い成分だけを抽出して与えているのだから当然良い効果が出る。キムチ自体を食べさせろよ」「塩分の多いキムチが健康にいいわけがない」「キムチを宣伝するんだったらプルコギを宣伝するべき」などなど、それほど好意的ではないのだ。
というのも近年、韓国ではキムチ観が変化しているからだ。
例えば、韓国の若者たちが毛嫌いしている“クッポン”(無条件的に韓国を称賛すること)の代名詞がキムチだ。海外の俳優や著名人が訪韓するたびに、メディアなどが「Do you know キムチ?」などと問う行為は、クッポンとして指摘されている。
また、ネット上では韓国人女性を卑下するときに「キムチ女」というスラングを使っていることも遠因かもしれない。
さらに遡れば、キムチを世界に広報しようとして失敗した例もあった。キムチの広報のために制作されたアニメ『キムチ戦士』は、そのクオリティの低さから『ワピース』などと並んで“黒歴史”と呼ばれている。
(参考記事:韓国アニメ業界が直視したがらない“黒歴史”と呼ばれる3つのアニメ作品)
日本と中国への輸出が激減
そんなアニメの一例を見てもわかる通り、韓国は「キムチの世界化」を目論んで輸出に力を入れているが、日本や中国への輸出は大きく減少。
特に日本への輸出はここ数年で落ち込みが大きいそうで、キムチの輸入量と輸出量には10倍もの差が生じているのが現実だ。
(参考記事:宗主国として「世界化」を目論むも実は苦戦している韓国の最新“キムチ事情”)
もちろん、韓国人は一日に70グラムのキムチを食べているというデータもあり、キムチを愛する人は多いのだろうが、以前ほどキムチだけにこだわっているわけではないといえるだろう。
そんななかで発表された世界キムチ研究所の研究結果は、一縷の望みかもしれない。好きな人は食べ、嫌いな人は食べなければいいだけという話のような気もするが、はたして。