さよなら西村京太郎 ドラマ最終回で見せた鉄道愛と好奇心、社会派の原点
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先日、テレビ朝日で、2022年3月に亡くなった、西村京太郎トラベルミステリー最終作となる「十津川警部のレクイエム」が放映されました(レクイエムは、鎮魂歌の意味)。
主な舞台の1つが、大井川鐵道(鉄道)の奥大井湖上駅。
文字通り、湖の上にある駅ですが、2001年に中部の駅百選に選出されたように、比較的新しい観光スポットです。取材を重ね、常に新しい場所を取り入れる、西村京太郎らしさが感じられました。
※西村京太郎さんが、旧川根町を取材したのは2004年頃。「十津川警部のレクイエム」の原作は『恋の十和田、死の猪苗代 』(Yahoo! ebook)で、場所をアレンジしてあります。そのため、番組制作者の発案かもしれません。
大井川鐵道(鉄道)といえば、SLですが、「十津川警部のレクイエム」ではトロッコが大活躍。鉄道愛に満ちた、西村京太郎作品らしさを感じました。
現代を取り入れる西村京太郎作品らしく、奥大井湖上駅を望む、人気のカフェも舞台となりました。ここで、十津川警部の部下が、結婚式(披露宴)を挙げています。
眼下には、奥大井湖上駅。
奥大井湖上駅の旅は、関東周辺1泊2日ずらし旅・穴場20選|モデルコース(とらべるじゃーな!)の第4位で紹介。
十津川警部の部下が、新妻とそっくりな女性と会話をした、カフェのテラスです。
西村京太郎さんは、晩年まで、各出版社の要請に応じ、年始に決めたスケジュールに沿い、6回の綿密な取材旅行で、年に12もの作品を手がけていました。
そんな西村京太郎さんの歴史を振り返るには、湯河原のご自宅近くにある西村京太郎記念館がおすすめですが、現在は休館中です(2022年12月現在)。
西村京太郎さんが大好きだった東海道新幹線が見え、これまた大好きだった温泉場(湯河原温泉)もすぐそこです。
開館していた時期は、ときどき西村京太郎さん本人が顔を出し、本を購入するとサインをしてくれました。
お会いした西村京太郎さんのおすすめは、五能線(秋田・青森県)。くわしくは、追悼・西村京太郎 五能線・銚子電鉄が先生のおすすめでした(とらべるじゃーな!)に記録があります。
西村京太郎さんが集めていた、ブルートレインのライター(ジッポー製)です。
トラベルミステリーのイメージが強い西村京太郎さんですが、初期作品は社会派。左上の『天使の傷跡(しょうこん)』(Yahoo!ショッピング)は、薬害を取り上げた作品です。
また、右上に見える『南神威島』は、12月31日13時30分(テレビ東京の場合)から、「出川哲朗の充電させてもらえませんか?予習復習」で放映の、竹富島が舞台なのではないかと、個人的には感じています(異なる可能性もあり)。この作品は、読みやすい短編集ですので、トラベルミステリー以外の西村京太郎入門におすすめです。
西村京太郎さんの構想メモです(『天使の傷跡』のメモ)。右下に「日本全体の封建制に突き当たる」とあり、社会派らしさがでています。
西村京太郎さんの原稿です。西村京太郎さんの文体の特徴は、とにかく読点(、)が多いこと。打てる場所には、すべて打つが、原則です。
『熱海・湯河原殺人事件』(Yahoo! ebook)は、西村京太郎さんが生前に暮らしていた、湯河原・熱海地区を題材にした近作です。読点の多さに気づきます。
午後六時過ぎのこだまで、一人の男が、熱海に降りた。小さなバッグを一つ持っている。
もう若くはない。といって、老人というにはまだ若い。四十歳丁度といったところか。
身長は一七八センチくらいで、この年令にしては、大きい方だろう。顔が少し青白い。
ゆっくりと階段をおり、通路を通って、改札口に出る。
読みやすさが特徴で、筆者も、この打ち方をまねています。
西村京太郎さんを、単なる流行作家と見る人もいますが、読みやすく娯楽性が強い文体に、社会的なテーマを組み込むことで、より多くの人に届くことを意図したのではないでしょうか。
西村京太郎トラベルミステリー最終作となった「十津川警部のレクイエム」でも、遺児・育児放棄がテーマとされていました。
鉄道の旅のすばらしさから、社会的テーマまで、多くのことを教えてくれた、西村京太郎さんは、残念ながらもういません。しかし、680以上もの作品を遺してくれました。
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