天皇皇后両陛下が直面する課題とは 世界は「即位の礼」をどう伝えたか 英王室は破局寸前?
[ロンドン発]天皇陛下が即位を内外に宣言される「即位礼正殿(そくいれいせいでん)の儀」が22日、皇居・宮殿で行われました。天皇陛下は次のように誓いの言葉を述べられました。
「国民の幸せと世界の平和を常に願い、国民に寄り添いながら憲法に則り日本国及び日本国民統合の象徴としての務めを果たすことを誓います」
「国民の叡智とたゆみない努力によって、我が国が一層の発展を遂げ、国際社会の友好と平和、人類の福祉と繁栄に寄与することを切に希望いたします」
「国民の幸せ」と「国際社会の友好と平和」を常に願い「国民に寄り添いながら憲法に則り日本国及び日本国民統合の象徴としての務めを果たす」ことを強調されました。
「即位の儀式はもう済んだのでは?」
英BBC放送は「日本の天皇が古代から伝わる儀式で即位を宣言」と報じました。「即位の礼で天皇は高さ6.5メートルの高御座(たかみくら)に、十二単(じゅうにひとえ)を着た皇后さまが離れた高御座より小さな御帳台(みちょうだい)にのぼられた」
即位の礼を祝うこんなツイートも紹介しています。
この日午前8時(日本時間同日午後4時)から自治体シティー・オブ・ロンドンの記者会見がありました。広報担当者と歓談している時、即位の礼が話題になり、彼は「儀式の費用とか、安倍晋三首相が天皇皇后両陛下より低い所に立っていたことが話題になっているよ」と話しました。
外国の元首や王族ら約400人を招待。英国からはチャールズ皇太子も参列しました。前回、平成の「即位礼正殿の儀」ではチャールズ皇太子とダイアナ妃(後に離婚、故人)が式典に花を添えました。
『国民の天皇 戦後日本の民主主義と天皇制』の著者である米歴史学者ケネス・ルオフ氏はBBCにこう話しています。
「世界は5月1日に儀式は執り行われたと思っているかもしれない。しかし本当の式典は今起きています。世界は『あれッ、もう即位の儀式は行われたのでは』と思っているのでこの日の式典は大したことではないと受け止められるかもしれませんが、日本人にとっては大事なことなのです」
「日本の新しい天皇と皇后が直面する課題」
英大衆紙デーリー・メールは「日本の新しい天皇と皇后が直面する課題」としてこう報じました。
「日本の新しい天皇は皇室の厳格なしきたりから家族を守ることを含め、世界最古の天皇制の伝統と現代性のバランスをとるという繊細な仕事に直面しています」
「天皇は最初のお言葉で、日本の軍国主義を美化することなく第二次大戦を”正確”に記憶する必要があると警鐘を鳴らしました。安倍晋三首相のナショナリストのアジェンダへの批判と多くの人が受け止めました」
「新しい天皇と皇后は、自然災害の犠牲者を訪問して国民の支持を得た上皇ご夫妻にならって慰問の役割を担うことが期待されています」
米CNNは「即位礼正殿の儀」に合わせて約55万人に恩赦が実施されることを報じました。天皇の徳仁(なるひと)という名前について「天の美徳を得る男」と解説しています。令和についても「美しき調和」と紹介しています。
「他の国の君主と異なり、徳仁は国家元首というよりはむしろ国の象徴。日本の天皇は政治的な権限を行使しない」と改めて説明。「徳仁は留学した最初の皇族で、父のレガシー(遺産)を受け継ぎ、天皇と彼の国民の間の壁を取り除くために力を尽くすことを誓った」と報じています。
激震走る英王室
天皇皇后両陛下の人気は国内外で急上昇していますが、英王室はチャールズ皇太子とダイアナ元妃のダブル不倫と離婚以来の危機を迎えています。
英国の欧州連合(EU)離脱交渉は土壇場で英・EU双方が合意に達したものの、最大の難関である英議会で再び停滞しています。
エリザベス英女王が「抜かずの宝刀」である君主大権を行使して「合意なき離脱」を防ぐシナリオも有識者の間で囁かれ始めました。
一つは、アンドルー王子(王位継承順8位)が勾留中に首吊り自殺した米大富豪ジェフリー・エプスタイン被告の児童性的搾取疑惑に巻き込まれている問題。
もう一つが第一子アーチーちゃん(同7位)の出産をきっかけに、王族の一員というよりセレブぶりを発揮しているメーガン妃とヘンリー王子(同6位)へのバッシング(非難)です。
「兄弟には良い日もあれば悪い日もある」
ヘンリー王子とウィリアム王子(同2位)の不仲説がずっとくすぶっていましたが、ヘンリー王子が英民放ITVのドキュメンタリーで「兄弟には良い日もあれば悪い日もある」と2人の間に溝ができていることを初めて認めました。
「私たちは兄弟です。私たちは常に兄弟です。今は確かに異なる道を歩んでいますが、彼はいつも私のためにいてくれることを知っているし、私も彼のためにいる」
不仲説は、メーガン妃とヘンリー王子がウィリアム王子とキャサリン妃と袂を分かち、240万ポンド(約3億3700万円)かけて改装したロンドン郊外ウィンザーのフロッグモア・コテージに引っ越したことから火がつきました。
英大衆紙サンによると、米ニューヨークでのベイビーシャワー(出産前に妊婦を祝うパーティー)に33万ポンド(約4600万円)、ジバンシーの詰まった洋服ダンスに78万7000ポンド(約1億1000万円)。
メーガン妃の38歳の誕生日を祝うためスペインのリゾート・イビサ島にプライベートジェットで往復。プライベートジェットのチャーター代は片道2万ポンド(約280万円)。イビサ島6泊のご予算は12万ポンド(約1685万円)。
ダイアナ元妃と親しかった人気歌手エルトン・ジョン氏に招かれて南仏ニースの別荘で7泊した際もプライベートジェットで往復したことから「環境を保護する闘士のヘンリー王子とメーガン妃がプライベートジェットで温室効果ガスをまき散らす」と叩かれました。
「私の友人は、結婚は止めた方がいいとアドバイスした」
メーガン妃はこうしたバッシングに対して「私の友人は、英大衆紙があなたの人生を破壊するから結婚するのは止めた方が良いと言いました」と本音をぶちまけました。
リベラルなアクティビストであるメーガン妃にとってはアンドルー王子のような疑惑は我慢ならないのではと筆者は考えます。
英国のEU離脱の原動力の一つは「ホワイト・アンダークラス(白い負け組)」の怨念です。英大衆紙はメーガン妃が英王室を自分のディズニーランドのように勘違いしていると「ホワイト・アンダークラス」の憤りをあおっています。
ヘンリー王子は「私はいつでも家族を守ります。今は守るべき家族がいます」と話しています。2人はメーガン妃の父親への私信を違法に報じられたり、携帯電話の音声メッセージを盗聴されたりしたとして次々と大衆紙を訴えました。
大衆紙と全面戦争するのは賢明なメディア戦略ではありません。良し悪しは別にして大衆紙は英王室と英国民をつなぐ重要な役割を担っているからです。ウィリアム王子も2人のことを心配しているとBBCは伝えています。
順風満帆の日本の皇室に比べて、英王室には嵐が吹き始めています。
(おわり)