金融政策の正常化への第一歩と日銀の田村審議委員
日銀の田村審議委員の青森での講演の内容が、日銀のサイトにアップされた。「金融政策の枠組みの見直し」のなかで、次のような発言があった。
長期金利が急激に上昇する場合には、機動的に買入れ額の増額などを実施する方針ですが、能動的な金融政策手段として用いるのではなく、不連続な変化を避けるためのものと位置づけられます。
指値オペなどで無理矢理に抑えるのではなく、日銀が臨時の国債買入などを通じて、一時的な金利の急騰を抑えるということか。
マイナス金利やイールドカーブ・コントロールなど、これまで行ってきた異次元とも評される金融政策を脱し、金融政策の正常化への第一歩を踏み出したと捉えています。
19日の総裁会見では「正常化」という言葉は使わないようにしていたと思うが、田村委員は「金融政策の正常化への第一歩を踏み出した」とコメントした。まさにそうであったと思うし、まだ第一歩にすぎないことも確かである。
その後、「過去25年間の振り返り」と題して、「ほとんど金利がない世界」について振り返っていた。そのなかで「異例の金融緩和がこれだけ長期間続いた結果、様々な副作用も発生しました。」として、懸念している2点についてのコメントがあった。それは下記の2つであった。
1つ目は、ビジネスの新陳代謝を促すという、金利の持つハードルレート機能の低下
金利機能に関する副作用の2つ目は、市場で自由に形成される金利の持つシグナリング機能の低下
そして、田村委員の考える金融政策の正常化とは、
私が考える最終的なゴールは、2%の物価安定の目標のもとで、金利の上げ下げを通じて需要を調整し、物価に影響させるという金利機能が発揮できるような水準まで戻すとともに、上記の金利のハードルレート機能やシグナリング機能を回復させること
短期金利は、ほとんど金利がない世界であることに変わりはなく、長期金利は、完全に市場に金利形成を委ねるところまではできていないとも指摘。
その通りかと思う。
先行き、経済・物価・金融情勢に応じて、ということが大前提ではありますが、ゆっくりと、しかし着実に金融政策の正常化を進め、異例の大規模金融緩和を上手に手仕舞いしていくために、これからの金融政策の手綱さばきは極めて重要だと考えています。
ゆっくりと、というペースがどの程度であるのか。あまりに金利なき世界が長期間続いていたので、慎重にする必要はあるが、遅すぎでも千載一遇のチャンスを逃す懸念もある。慎重かつ大胆に進めてほしいと思う。