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ハリケーン・デルタ、米南部上陸へ 史上最多「10個目」

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
アメリカに接近するハリケーン・デルタの可視画像 (出典: NOAA)

『台風上陸ゼロ』が続いている日本ですが、反対にアメリカでは、これまで観測史上最多タイの9つのハリケーンが上陸しています。現地時間9日にはハリケーン「デルタ」も上陸する見込みで、記録はさらに塗り替えられることとなりそうです。

ハリケーン「デルタ」

デルタの予想進路図 (出典:国立ハリケーンセンター)
デルタの予想進路図 (出典:国立ハリケーンセンター)

現在ハリケーン・デルタは、メキシコ湾で発達しながらアメリカへ進んでいます。現地時間8日(木)16時点の最大風速は51m/s、勢力は上から3番目に強い「カテゴリー3」です。

国立ハリケーンセンターの予想によると、デルタは「カテゴリー3」の勢力で、現地時間9日(金)夕方にもルイジアナ州に上陸するもようです。予想される雨量は380ミリ、最大瞬間風速は57m/s、高潮は3メートルに達する見込みです。

「ローラ」の爪痕

ルイジアナ州は今年、幾度もの嵐に見舞われてきました。「クリストバル」「マルコ」そして「ローラ」です。

特にローラは最大風速67m/sの、ルイジアナ州の観測史上最強の勢力で8月末に上陸したばかりです。接近前には気象局が「生存不可能な高潮(Unsurvivable storm surge)」という、聞いたことのないような形容詞を用いてその怖さを警告したほどでした。

幸い、高潮の被害は予想を大きく下回りましたが、空港の格納庫が破壊されたり、テレビ局の鉄塔が倒れたりするなど強風被害が広がり、30名超の人々が命を落としました。1万件の家屋が損壊し、現在でも6,000人超がホテルでの避難生活を余儀なくされているなど、嵐の爪痕が生々しく残っています。

(↑いまだ多くの家屋の屋根がブルーシートで覆われている)

今年10個目の上陸

デルタは様々な記録を塗り替えています。

まず、予想通りの進路を取るとなると、ルイジアナ州へは今年4つ目の上陸となり、2002年に並ぶ州の観測史上最多の記録となりなす。

さらに、アメリカ本土への今年10個目の上陸ともなり、これまた前代未聞の記録になります。すでにこれまでの最多記録である1916年の9個に並んでいますが、それを超えて単独1位の記録となるのです。

なお下の図は、今年これまでに上陸したハリケーンとトロピカルストームの上陸位置を表しています。6個がメキシコ湾岸、3つが東海岸を直撃していることが分かります。

2020年のハリケーン及びトロピカルストームの上陸位置 (筆者作成)
2020年のハリケーン及びトロピカルストームの上陸位置 (筆者作成)

デルタの記録

このように今年アメリカへの上陸数が多い理由に、大西洋で記録的な数の嵐が発生していることが挙げられます。

デルタは今年25号目ですが、年の平均発生数は通常10個ほどです。これまでの大西洋における発生最多記録は2005年の28個ですが、今年はそれを越えて、史上最多の年となることが予想されています。

こうして多くのハリケーンが発生してしまったことで、先月から、非常に珍しい名前がお目見えしています。本来ハリケーンには「ドナルド」や「ジョセフ」といった人名がつけらていますが、現在は21個用意されていた名前をすべて使い果たし、代わってギリシャ文字が使われているのです。デルタはアルファベット順で4つ目に当たります。こうした名前が使われるのは2005年に続き、史上2度目の珍事です。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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