日銀の金融政策は長期金利を決めるひとつの要因に過ぎない、利上げなくても長期金利が跳ね上がる可能性
自分が債券ディーラーだった時代(1986年から2000年頃)などは特に日銀の金融政策は相場を動かす材料のひとつに過ぎなかった。いまは日銀の長期金利コントロールの余波もあって日銀の動向が主要因のようにみえてしまうが、それはあくまで材料のひとつに過ぎない。
極端な例を出すと、1998年には当時の政策金利の公定歩合が0.25%だったにもかかわらず年末に長期金利は上昇し翌年2月に2.440%を付けている(通称、運用部ショック)。本来、長期金利は日銀が決めるのではなく市場が決めるものである。
1987年5月、大手証券のチーフディーラーが公定歩合(当時の政策金利)が高すぎると国債買いを仕掛けて長期金利が公定歩合(当時2.5%)に接近したことがあった。
今回はもしや政策金利が低すぎるとして長期金利が想定以上に上昇するといったこともありうるのか。これも市場が決めることになる。行き過ぎはいずれ修正されるが、これも相場となる。
米長期金利が5%に接近しつつあり、英国では30年物国債の利回りが1998年以来27年ぶりの高水準まで上昇した。
さらに国内物価は2%台で高止まり。ファストリが新卒社員の初任給を33万円とし10%引き上げとなるなど大手企業を中心に予想以上の賃上げの動きも、円安とともにこれは物価上昇要因ともなる。
国債の需給面では来年度のカレンダーベースでは5年国債の増額もある。日銀は淡々と国債買入を減額するなど、日本の長期金利については上昇要因が揃いつつある。日銀の政策金利が上がらずともイールドカーブがスティープ化することで長期金利が跳ね上がっても何ら不思議ではない。