長期金利は日銀が決めるのではなく市場で決まるという事実、欧米とともに日本の長期金利が上昇中
今年に入ってからの債券市場は私にとって予想外の動きとなった。何があったのかといえば、円債が思ったよりも売られていたのである。大発会となった6日の朝に出した私の予想レンジは下記であった。
債券先物中心限月 141円80銭~142円30銭 10年国債利回り 1.050%~1.100%
ところが債券先物は141円81銭で寄り付き後、一時141円57銭まで下落したのである。そして、10年国債の利回りはこの日、1.125%まで上昇した。これは私にとっては想定外であり、これは年初からやってしまったと思った。
この要因をいくつか考えて「日本の長期金利は1.135%に上昇、急に日銀の年内利上げを意識したかのような動きに」というコラムを書いたのだが、どうやらその見方も正しくはなかったようである。
いまだに日銀の動向が長期金利を決めているという思い込み(ノルム)が、30年近く国債市場をみてきた私にも強く出てしまったのかもしれない。
日銀は昨年3月に長期金利コントロールを止めている。これによって長期金利は市場で決まるという本来の姿に戻った。しかし、それでも日銀の動向を常に念頭に置くようになってしまった。
日銀がいつ利上げするかで長期金利の動きも決まるという思い込みが強くなり、日銀は多分1月も利上げはしないはずなのに、どうして長期金利が上昇するのかという思い込みが出てしまっていた。
もしや日銀総裁が年賀状で何か示唆でもしたのかとも思っていたが、ここにきての動きは日銀の利上げの行方といったん切り離してみるべきだと思う。
日銀は「指値オペ」という手段は依然として保持している。だからいざとなれば日銀は長期金利を抑え込むとの見方はできるかもしれない。しかしそれは債券市場の機能を破壊するだけでなく、2022年以上に市場を混乱させかねない。
今回の日本の長期金利の上昇要因は国外要因と国内要因がある。国外要因としては欧米の長期金利の上昇がある。
米長期金利は8日に一時4.73%と昨年4月25日以来の水準を付けた。5%を再びうかがうような動きとなっている。これはトランプ政権となってからのインフレや財政悪化が意識はされたものもあるが、そもそも米景気実態が悪いわけでもなく物価も高止まりしているためである。
英国では30年物国債の利回りが27年ぶりの高水準まで上昇した。労働党のスターマー首相による予算案が財政拡大方針を掲げ、賃金上昇による根強いインフレでイングランド銀行の利下げペースが遅れることへの警戒感が出ている。
いわばトラス・ショックに近い状況となる可能性も出てきたのである。8日の英国の10年債の利回りは4.79%とトラス・ショック時の4.5%を上回ってきた。
これは英国ばかりではない。それが国内要因となる。
我が国の2025年度の一般会計の総額がおよそ115兆5000億円となり、当初予算としては過去最大となっている。巨額の国債残存額も言うまでもない。
物価も2022年4月から2%台と高止まりが続いている。これらから、いつ長期金利が跳ね上がってもおかしくはないのである。
日銀が慎重すぎるあまり、円安ともなっていることで物価に上昇圧力が掛かりやすい。賃金も予想以上に上昇することも予想され、これも物価の上昇圧力となる。
結果として内外の要因から日本の長期金利にも上昇圧力が掛かりやすくなっているのである。
9日の日本の10年国債の利回りは1.185%に上昇してきたが、たぶんこんなものでは済まないのではなかろうか。
それ以上に2年国債や5年国債の利回りが上昇しており、こちらからみれば日銀の追加利上げを織り込みにきているとの見方はたしかにできるかもしれない。
むしろ日銀は利上げに追い込まれるとの見方も出ている可能性がある。長期金利(期間1年以上の金利)は日銀が決めるんじゃなく、市場が決めるものなのであることをあらためて痛感した次第。