「漢字を手で正確に書く力が衰える」パソコンやスマホなどの普及で懸念している人は89.0%
パソコンやスマートフォンなどの情報機器は非常に便利で、人の生活を豊かにしてくれる。しかしその影響の大きさによって、社会における言葉そのものや言葉の使い方に変化が生じるかもしれない。実際にどのような影響が生じているのかはさておくとしても、人々はどのような実感を抱いているのだろうか。文部科学省が2022年9月に発表した「国語に関する世論調査」(※)の結果から確認する。
情報機器の普及によって、言葉や言葉の使い方が影響を受けると思うか否かを尋ねた結果が次のグラフ。9割以上の人が「影響を受けると思う」と考えていることが分かった。
「影響を受けると思わない」人はわずかに8.8%。無回答の0.6%を合わせても1割にも届かない。ほとんどの人が、パソコンやスマートフォンなどの普及で言葉や言葉の使い方が影響を受けて何らかの変化が生じると考えているのが実情のようだ。
それでは具体的にどのような変化が生じると考えているのだろうか。挙げられている具体例から自分が同意できるものについて複数回答で答えてもらった結果が次のグラフ。
「手で文字を書くことが減る」「漢字を手で正確に書く力が衰える」がほぼ同率で9割近く。前者はパソコンやスマートフォンなどで文章を書く機会が増える以上当然の話に違いない。手帳を持たずにスマートフォンでスケジュール管理をする人が多数におよんでいるであろう現状を思い返せば、容易に理解できるはずだ。あるいは普段、手紙や封書で知人に文を送る機会がどれだけあるのか、そして昔はあったのかを考え直してみてもよいだろう。
後者は前者と連動するものと考えることができる。手で文字を書く機会が減れば、必然的に漢字を手で書く機会も減る。手で書かなくなれば、たとえ普段から漢字変換機能を駆使してパソコンやスマートフォンで漢字を用いた文章を書いていても、手では正確に書けなくなってしまうかもしれない。読むことはできるし、漢字変換機能を使ってパソコンなどで入力することはできても、手で漢字を書くことに難儀している人は少なからずいるはずだ。
次いで大きく値は下がるが半数を超えているのは「人に直接会いに行って話すことが減る」。直接足を運ばなくてもインターネットを使ってチャットやメール、さらにはウェブ会議などの仕組みを使うことで、意思疎通が可能となる。ここ数年、新型コロナウイルスの流行を受けてこの類の技術が大きな進歩を遂げて普及が進んだため、「人に直接会いに行って話すことが減る」ことを実感している人は多いはず。むしろ逆で、直接人に会いに行って話すという手間を減らすために、情報機器の普及が進んでいると解釈してもよいだろう。
「公共の場所でも自分だけの世界に没頭するように」もスマートフォンで思い当る人が多いはず。もっとも、スマートフォンが無かった・普及していなかった昔は、新聞や雑誌、書籍、あるいは携帯音楽プレイヤーによる音楽が同じようなポジションにいたはずで、何も情報機器に限ったものではないだろう。
設問に挙げられた選択肢の内容については、多くの人が自分自身も経験し、同意するものだろう。その影響がよいものか否かは別として、パソコンやスマートフォンなどの情報機器は、人々にそれだけ大きな影響を与えていることに違いはない。
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※国語に関する世論調査
2022年1月に全国16歳以上の個人に対して郵送法で行われたもので、有効回答数は3579人。年齢階層別や男女別などの属性別区分の内容は非公開。
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