日本政府のパレスチナ問題公式見解と相反する防衛副大臣の暴走発言
ガザからのイスラエルに向けたロケット弾攻撃
5月10日からパレスチナ・ガザ地区のハマスが無差別ロケット弾攻撃をイスラエルの都市に行い、3日間で既に1500発以上が発射されています。約半数は何も無い砂漠の無人地帯に落下しましたが数百発が市街地に向かって飛来し、アイアンドーム防空システムが9割近くを撃墜するも数十発を撃ち漏らし、民間人に死傷者が出ています。防空戦闘の規模はアイアンドーム実戦配備から10年経ちますが過去最大のもので、重点防御されているテルアビブ上空では数十発の迎撃ミサイルが同時に撃ち上がる凄まじいものとなっています。
これに対しイスラエル軍はガザへの報復爆撃を開始、民間人を直接狙ってはいませんが巻き添えで多数の民間人が死傷しています。またガザ地区の境界線付近ではハマスからの対戦車ミサイル攻撃でイスラエル軍車両が撃破され戦死者が出ており、イスラエル軍は戦車を集結させて地上戦の準備を始めました。もしも全面戦争が開始された場合、犠牲者の数は現在までの数十名前後から更に数十倍の千人単位に膨れ上がりかねません。
イスラエルでの暴力の応酬の原因と日本政府の立場
攻撃が始まった原因は、パレスチナ自治区(東エルサレムのシェイク・ジャッラーハ地区)でのイスラエルの侵略行為(パレスチナ人を強制立ち退きさせ、イスラエル人を入植させる行為)に対して、ハマスが反発し武力に訴えたものでした。一連の暴力の応酬に対し、日本政府は以下のような公式見解を表明しています。
日本政府の立場はハマスとイスラエルの双方の暴力を非難するバランスの取れたものです。特にハマスのロケット弾攻撃だけでなく、暴力の応酬の原因となったイスラエルの入植行為を名指しで非難していることが重要な点です。
個人の見解では済まされない防衛副大臣の発言
ところが日本政府の一員であるはずの中山泰秀防衛副大臣が、イスラエルの立場に一方的に偏って支持する発言をTwitterで行いました。
後に中山泰秀防衛副大臣は個人の見解であると述べていますが「私達の心はイスラエルと共にあります」と言ってしまった以上、個人の発言だと言い逃れるのは無理のある苦しい言い訳です。「私達」と言いながら個人の見解と言い張るのは明らかに矛盾です。
「家を奪われたら」とありますが、そもそもイスラエルの入植行為で家を奪われたパレスチナ人のことを防衛副大臣は無視しています。最初に原因を作ったのは一体誰であったか、日本政府は外務省からの公式見解でイスラエルが始めたことであると名指ししているのに、防衛副大臣の言動がこれでは防衛省の責任が問われるでしょう。
既に防衛副大臣の発言にイスラエル政府関係者がお礼を言って既成事実化してしまいました。これは日本の外交上の失態となります。外務省は防衛省の失敗で泥を被ることになりました。
「私達」とは一体どの範囲を指すのか
そもそも「私達」発言が無かったとしても、外交上の機微な問題に対して政府公式見解と相反する内容を政府の要人が発言した場合、個人の見解では済まされません。
また問題発言を行った防衛副大臣も、さすがに「私達」の範囲が日本政府を指すと言い張るような大それた真似はしないでしょう。そのような勝手な主張を行った場合は、政府の役職を解任されるだけでは済まないおそれがあります。
「私達の心は○○と共にあります」という発言が単に格好良い言い回しを思い付いただけの軽々なものではないとすると、中山泰秀防衛副大臣の周囲で普段から一緒にイスラエルを支持していたグループが「私達」を指すと思われます。
日本イスラエル友好議員連盟、日本イスラエル親善協会(JIFA)などが該当します。