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北朝鮮にスコールが味方した!?主将1発レッド、大雨で中断も2発のゴラッソ…無観客でもカタールにドロー

金明昱スポーツライター
退場者を出しながらカタールに2-2で引き分けた北朝鮮(写真:つのだよしお/アフロ)

 サッカー朝鮮民主主義人民共和国代表(北朝鮮)は10日に行われた2026年北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終予選のグループA第2戦で、カタールと対戦し、2-2で引き分けた。

 北朝鮮は初戦でウズベキスタンにアウェイで0-1で敗れ、23年アジアカップ王者のカタールもホームでUAEに1-3で敗れており、互いに勝ち点3が欲しい状況。

 この試合は北朝鮮のホーム扱いだが、平壌での開催ができないことから中立地のラオスにあるニュー・ラオス・ナショナルスタジアムで行われた。ちなみに2次予選のホームゲームも同じ場所で行われていることもあり、北朝鮮にとっては幾分か慣れた環境であるのは間違いない。

 ちなみに試合のライブ映像を見る限り、会場は完全無観客。スタンドから大きな声援も聞こえ、時折、両国のサポーターらしき人たちの応援の様子も映し出されていたが、これはおそらく現地在住の北朝鮮とカタールの人たちだろう。ラオス国民にはチケット販売はされていないようだった。

北朝鮮が豪快なゴールで先制も主将が一発退場

 試合は前半19分に左サイドでボールを受けたMFリ・イルソンがドリブルでカットインして、右足を振り抜くと、強烈な弾道がゴール右隅に突き刺さって先制に成功。

 しかし、25分にカタールのアクラム・アフィーフが北朝鮮のペナルティエリア内で主将DFチャン・グクチョルに倒されると主審はPKの判断。主審はその後、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)側と交信を続けたあと、レッドカードを提示。このまさかの一発退場の判定にチャン・グクチョルは主審にVARの確認を取るようにお願いするジェスチャーをしていたのだが、判定は覆らなかった。

一発レッドで退場となったDFチャン・グクチョル。VAR確認のジェスチャーで主審にアピールしていたが…
一発レッドで退場となったDFチャン・グクチョル。VAR確認のジェスチャーで主審にアピールしていたが…写真:松尾/アフロスポーツ

 31分、カタールがPKを決めて1-1。北朝鮮は守備の要である主将がピッチから抜けて10人と数的不利となった。カタールはこの隙を見逃さず、44分に素早いカウンターから追加点を奪い逆転に成功した。

北朝鮮の強烈なFKでの同点弾もゴラッソ

 1-2で迎えた後半。カタールに流れが傾くかと思われたが突然のスコールが北朝鮮に流れを引き寄せた。ピッチに水たまりができるほどに芝がぬかるみ、ボールは蹴っても止まる状態に。カタールのパスがつながらなくなったところで、北朝鮮に勝機が見えてきた。

 51分にFKを獲得した北朝鮮は、キッカーのMFカン・グクチョルが左足で直接狙った強烈なシュートが、ゴール左に突き刺さって2-2の同点に追いついた。北朝鮮の2点ともにゴラッソで、10人ながら再び逆転のきざしも見えてきた時間帯だったが、猛烈な雨は止まないことから主審が試合を一時中断。徐々に雨が落ち着いた10分後に再開。

 北朝鮮はカウンターからか数少ない決定機を作り出したが、あと一歩およばす、カタールもチャンスを決めきれずに2-2の引き分けで、勝ち点1を分けあった。

この試合は後半のスコールがなければ、カタールに流れが傾いていたはずで、10人で戦っていた北朝鮮にとってはまさに幸運の大雨だった。

アジア王者を相手にドローで“手応え”の北朝鮮

 試合後の北朝鮮選手とシン・ヨンナム監督はホッとした表情で、時折、笑顔を見せる選手もいた。アジア王者のカタールに難しい試合を引き分けに持ち込み、貴重な勝ち点1を獲得できたことには、ある程度の手応えはあったのだろう。

 ただ、現時点では未勝利で、この先も厳しい戦いが続くことに変わりはない。北朝鮮は10月11日(日本時間)にUAE、10月15日にキルギスと対戦する。ともに敵地での試合だが、2010年南アフリカ大会以来16年ぶりのW杯出場のため、ここでしっかりと勝ち点を積み上げておきたいところだ。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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