岸田内閣の懸念材料は国債の増発にあり
5日に実施された10年国債の入札の結果は、無難との予想が覆され、低調なものとなった。最低落札価格が予想を下回ったこともあるが、応札倍率が2.45倍と2015年5月の2.24倍以来の低さとなった。これを受けて5日の債券先物は下げに転じ、10銭安の151円50銭で引けていた。
今回の10年国債入札が低調な結果となったのは岸田内閣が発足し、大型の補正予算が編成されると大量の国債増発が実施され、しかもバッファーとなっていた前倒し発行分も少なくなり、その多くを市中消化で補わなくてはならなくなるからとの見方があった。
たしかに岸田氏は自民党総裁選で数十兆円の大規模な経済対策の必要性を訴えていた。もともと財政規律派とされていたが、いったんその旗を降ろした格好なのかはわからない。しかしもし20兆円、30兆円の経済対策でその金額が真水であるとすれば、その分は国債増発で補わざるを得ない。
まだ経済対策の規模や真水部分の大きさがはっきりしているわけではない。このため、さすがに先を読む市場ではあっても、その懸念で投資家が引いてしまい、業者が入札の札を入れるのを躊躇したとは考えづらい。
今回の10年国債入札が低調となっていたのは、前の週に10年債利回りが一時0.070%まで上昇しており、そこからやや利回りが低下し、10年債利回りが0.050%近辺となっていたことで、利回りに対しやや物足りなさを感じた面があろう。
さらに世界的なエネルギー価格の上昇を背景に欧米の長期金利が上昇しつつあることで、日本の長期金利にも上昇圧力が掛かることも予想され、今回はいったん様子をみた投資家も多かったためではないかと思われる。
それでも岸田内閣が船出して、債券市場関係者が最も気にしているのは今後の国債増発の行方であることは確かではある。