飲酒運転による悲惨な交通死亡事故、なぜ「危険運転」で起訴できないのか #専門家のまとめ
2024年5月、群馬県で発生した飲酒トラックの対向車線突破による3名死亡事故。警察は罪の重い「危険運転致死傷罪」で送検したにもかかわらず、検察が「過失運転致死傷罪」で起訴したことに対して、怒りや疑問の声が高まっている。
飲酒運転は道交法で禁じられているのに、なぜ「危険運転」での起訴のハードルが高いのか。飲酒が運転に及ぼす影響、過去の事故処理の実態等を振り返りながら、法改正に向けての現在の動きをまとめた。
ココがポイント
エキスパートの補足・見解
たとえ少量であっても酒は脳の働きを麻痺させる。警察庁の統計によると、飲酒運転による交通事故は死亡事故につながる率が約6倍も高いことが分かっている。道路交通法では飲酒運転を固く禁じており、運転者本人だけでなく、酒を提供した者、同乗者、車を貸した者も厳しく罰せられる。
ところが、刑事裁判における「危険運転致死傷罪」の適用条件は非常に厳しく、飲酒運転が明らかであっても、本件のように同罪で起訴されないケースが多発している。飲酒事故の被害に遭った被害者や遺族の怒りはもちろんのこと、こうした司法の判断が続けば、法を守っている人々からも疑問や不満の声が上がるのは当然だろう。
飲酒事故被害者遺族の声を受け2001年に施行された「危険運転致死傷罪」。条文にある『アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為』とは、具体的にどのような「行為」を指すのか。
法務省は現在「危険運転致死傷罪の要件見直しについて議論する有識者検討会」を開いている。市民感覚に沿った結論が導かれることを期待したい。