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「プロ野球を超える」元朝日放送・平岩康佑アナが語るeスポーツへの覚悟

中西正男芸能記者
eスポーツへの思いを語る平岩康佑アナ(筆者撮影)

 優秀なアナウンサーに与えられるANNアノンシスト賞を受賞するなどスポーツ中継で活躍した元朝日放送アナウンサーの平岩康佑さん(31)。昨年6月に同社を退社し、ゲームの技量を競うeスポーツの実況に特化した事務所「ODYSSEY」を立ち上げました。設立当初からオファーが殺到し、さらに、今月15日からは芸能プロダクション・ワタナベエンターテインメントとの協業もスタート。まさに右肩上がりの状況ですが、eスポーツの今後について「プロ野球を超える」とまっすぐな目で語りました。

子どもの頃からゲーム好き

 もともと、ゲームは大好きで、スーパーファミコン、プレイステーションなどのゲームを子供の頃からやっていました。だんだん成長とともにみんなゲームをやらなくなっていく中でも、大学になっても、社会人になっても、ずっと好きで続けていました。大人になっても、休みの日は18時間ぐらいやってましたしね(笑)。

 実際、就職活動の時は朝日放送のアナウンサーと任天堂さんから内定をいただきました。それくらい、本当にゲームが好きだったんです。

辞めるなら今しかない

 2017年の秋には、eスポーツの大会を見るためにプライベートで韓国に行ったりもしていたので、その時から意識は多分にあったんです。朝日放送に居ながら、サイバーエージェントさんの仕事として AbemaTV でゲーム実況をやらせてもらったりもしていましたし。

 実際にゲーム実況をやってみて思ったのは「こんなに楽しいんだ!」ということでした。準備から本番から何から何まで楽しい。さらに、eスポーツの実況って会場に声が流れるんです。もちろん選手の活躍ありきなんですけど、会場の雰囲気を作る責任を担うことにもなる。そこも、実況する側としては非常にやりがいがあるなと。

 また、そこにいる人たちのゲームに対する知識や理解もがすごく高かったんです。そういう中で仕事するのがとにかく楽しかった。これをやるなら、今しかない。今、会社を辞めるしかない。そう強く思って、アナウンサーになって丸7年が過ぎて、8年目に入った去年の6月に退社しました。

3カ月の違い

 去年は高校野球が100回大会で、とても盛り上がりました。100回大会ということは、もちろん辞める前から分かっていて、ずっと携わってきた高校野球だし、大きな節目で実況をしたいという思いもありました。会社からも、そこはすごく言ってもらいました。ただ、今から思うと、6月で辞めずに高校野球を終えて、9月に辞めていたら、この3カ月でいろいろなところがeスポーツに参入してきましたし、今みたいにお仕事はいただけていないだろうなと。それくらい、猛スピードで発展している分野ということも言えるんです。

 朝日放送を辞めてeスポーツの世界に行くというニュースが出た日、それこそ、ヤフーニュースのエンタメのトップに出していただいて、その日だけで仕事の依頼が60件くらい来たんです。去年6月から始めて、最初の1カ月で翌年3月まで土日の予定はほとんど埋まりました。これも、最初に飛び込んだということが大きなポイントだったなと。3カ月ズレいていたら、大きく変わっていたと思います。

 今の仕事内容としては、自分を含め、3人実況者がうちの会社にいまして、各イベントなどに行って実況をする。あとは eスポーツ 関連のイベント企画。この2つがうちの仕事の両輪です。私の肩書で言うと、社長です(笑)。とはいえ、3人の実況者以外は社外の顧問にいてもらっているくらいの規模なんですけどね。

ゲームイベントで実況する平岩アナ(本人提供)
ゲームイベントで実況する平岩アナ(本人提供)

スポーツ実況との違い

 実況することに関しては、スポーツアナウンサーのノウハウが生きることが多いです。ただ、違うのは、見ている人、お客さんがほぼ全員プレイヤーだということ。

 例えば、プロ野球の球場にいらっしゃるお客さんって、野球に詳しい方もいらっしゃれば、ほとんどご存じない方もいる。ただ、eスポーツは観客ほぼ全員が選手で、やっている人はもちろん、見ている人もプロ野球選手みたいな感じなんです。

 なので、そのゲームに関する知識や深さがシビアに問われます。もし、一回「このアナウンサーはダメだ」となったら、もうそのゲームの大会には呼ばれないですし。そのあたりは、うちに所属しているアナウンサーにも重ねて言っています。

 ここが会場の盛り上がりのポイントでもあり、今後の課題でもあるんだろうなと。プロ野球みたいに、自分は野球をやっているわけではない人が、仕事終わりに娯楽として球場に来て、ビールを飲みながら試合を見る。eスポーツもそうならないといけないんでしょうし、それが今からの伸びしろになると思います。

 その意味では、今回ワタナベエンターテインメントさんと協業させていただくのも、テレビやラジオといったワタナベさんが得意な分野にeスポーツの実況者が進出していく。その中で、もっとライトな感じで来てくださる人が増えたらなと。

「スポーツじゃない」の声

 世界で言うと、今年賞金総額110億円というゲームの大会もあります。他のスポーツに比べても、単独の大会での賞金で言うと、テニスのウインブルドンが50臆円ぐらい。額で言うと、その倍くらいの賞金規模になっているんです。日本でも優勝賞金1億円の大会が去年の末には出てきましたし、ゲーム業界自体が伸び続けているので、どんどん大会も大規模になっています。

 実況する側の実入りですか?ありがたい話、本当に伸びている世界なので、こちらもちゃんとお金をいただいています(笑)。もともとの仕事をしていた時よりは、みんな実入りは良くなっていますし、一般的な平均収入は大きく超えていると思います。

 ただ、今でも根強く言われるのは「eスポーツと言っているけど、結局、ゲームじゃないの?遊んでいるだけじゃないの?」ということ。いわゆる体全体を動かしてやるスポーツとはイメージが違うので、やっぱり「スポーツじゃない」という声はあります。

 もちろん、その声が出るのも分かります。ただ、ここは実際に見てもらうしかないんですけど、いわゆるスポーツ以上に手に汗握る攻防も、かけひきも、すごい技も、たくさん、たくさんあるんです。

 何も食べないで1日に16時間練習をするということもある。団体戦ならば、高校野球的なドラマも多々ある。いわゆるスクワットを何千回もするとか、毎日20キロ走るということではないですけど、そこにある血のにじむ努力とドラマはスポーツなんです。

担うべき役目

 ただ、そこを皆さんがすんなり分かるわけではない。その説明役というのも、私たちがやるべき領域だと思っています。

 手前味噌になってしまいますけど、外に出て強く感じたのは朝日放送のアナウンサーの実況レベルは非常に高いということ。ま、高校野球があるというのが大きいんでしょうけど、選手の心を読み取ったり、細かいエピソードを見つけてきたり、グラウンド以外でのドラマを見逃さない。そして、それを放送に乗せていく。ここの技術が高いと思っていて、これをeスポーツでもやっていくことが「スポーツじゃない」という声に対する一番の答えになっていくんじゃないかなと考えています。

 そういう積み重ねをしていくことが、ある意味、お世話になった朝日放送への恩返しになるとも思いますし、さらに大きなビジョンをあえて言わせていただくとすると、興行としてプロ野球を超えたいと思っています。

 プロ野球の観客動員数よりもeスポーツの方が多くなる。もちろん、今は全くそうではないですけど、いつか、そうなるように進んでいく。それが今、僕がやるべきことだと思っています。だいぶと大きな話を言ってしまってますけど(笑)、目標は大きく!そこに向かって頑張りたいと思っています。

■平岩康佑(ひらいわ・こうすけ)

1987年9月2日生まれ。法政大学卒業後、2011年に朝日放送入社。アナウンサーとしてプロ野球、高校野球、サッカー、ゴルフなどの実況を担当した。17年には高校野球の実況が評価され、ANNアノンシスト賞優秀賞を受賞。また報道番組や情報バラエティーにも出演、ラジオのパーソナリティーなども務めた。春に同社を退社し、株式会社ODYSSEYを設立。日本最大級のeスポーツイベント「RAGE」や「eBaseball パワプロプロリーグ」などで実況を担当している。フジテレビ「TEPPEN2018秋の陣」、TBSテレビ「有吉ジャポン」、MBSテレビ「メッセンジャーの〇〇は大丈夫なのか」などにも出演。5月からはODYSSEYの実況者によるYouTubeチャンネルもスタートする。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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