対中感情は過去最低を継続中な日本の対外世論
対米親近感84%、対中14%、対韓33%
内閣府はほぼ毎年1回、日本国内における外交に関する世論調査(外交に関する世論調査)を行っている。先日発表された2016年分の結果によれば、中国に対する親近感は同一基準で調査結果が確認できる1978年以降の分では、前回(2014年)に続き最低の値が確認されている。韓国は同様に最低値を記録した前回よりはやや持ち直しを示した。
直近2016年の調査結果は次の通り。諸外国、あるいは地域毎に親しみを抱いているか否かで、「親しみを感じる」「どちらかというと親しみを感じる」「分からない」「どちらかというと親しみを感じない」「親しみを感じない」の5選択肢を提示、その中から回答者の心境にもっとも近いもの一つを選んでもらっている。
赤系統色の回答部分には留意が必要。「(どちらかというと)親しみを感じない」は回答者の心境的に「親しみの対象にならない」(無関心的な部分。「分からない」とは異なる)と「憎悪の対象となる」の2通りに解釈できる。赤系統の回答率が多い国・地域は、日本が「憎んでいる」との解釈には必ずしもたどり着かない。
結果を見るとアメリカへの親近感の高さが目に留まる。親しみを覚えない人は1割強でしかなく、今回の提示された国などではもっとも少ない。これは元々同国との間には親密な関係が継続されていたのに加え、2011年3月の東日本大地震・震災における「オペレーション・トモダチ」をはじめとした、同国による大規模な救援活動の実態を見聞き、あるいは実際に支援を受けた結果によるところが大きい。同作戦から5年が経過し、やや印象が薄れてきた感もあるが、親近度は高水準を維持している。
他方、ロシアや中国など、いわゆる(元)共産圏諸国との親近感は薄め。ロシアに関しては単に馴染みを覚える機会が少なく、必然的に親しみを感じる人が少なくなる流れだろう。中央アジア・コーカサス諸国も同様の理由と考えられる。
そしてここ数年大きな下落傾向にある中国・韓国だが、中国は前年と同水準の低さで、今回例示された主要諸外国の間で、親近感を持たれる率がもっとも低い。中国では「親しみを感じない」との強い非親近感の項目では他の国を抜きんでて49.5%との高い値を示しているのも印象的。またロシアと比べて「親しみを感じる」派で大きくリードしている韓国が、この「親しみを感じない」との強い非親近感の項目でもロシアを抜いていることから、韓国に対する日本の親近感は多分に、そして極端に二分されていることがうかがえる。
経年変化をたどると……
「親しみを感じる」「どちらかというと親しみを感じる」を合わせた値を「親近感」と位置付け、過去の調査結果もあわせ、その移り変わりを示したのが次のグラフ。なおインドは1991年から2007年は「南西アジア諸国(インド、パキスタンなど)」と尋ねているため、厳密には連続性は無い。
アメリカ合衆国への好感度は一様に高く、ここ数年では一段高の状態にある。一方中国は全体的に右下がりで、この30年ほどの間に1/2から1/3ほどまでに減少しているのが一目瞭然。
韓国やインドは基準値こそ違えども同じようなカーブを描いて上昇中だった。ただしここ数年韓国は頭打ち、そして2011年から2012年にかけて大幅な下落を記録し、直近の2016年の戻しも弱弱しい。中国の下落とあわせ、中国は尖閣諸島・反日暴動・ガス田・小笠原諸島のサンゴ違法搾取・南シナ海の人工島問題、韓国は竹島、そして双方の国とも強圧的・理不尽的な外交姿勢・対日経済施策が大きく影響しているものと考えれば納得はいく。
前回分の2014年から最新値となる2016年への変移では、韓国はやや持ち直したものの、中国は変わりない。しかしその内情を見ると、実質的に中国への親近感はさらに減退していることが確認できる。
中国に対しては親近感派としての合計こそ同じだが、強い親しみが減り、その分「どちらかというと」が増え、合計で同じ値を計上している。数々の問題が少なくとも中国への親近感を持つことが難しい雰囲気を形成しているものと考えられる。
今件はあくまでも不特定多数の母体による世論調査の結果であり、それがそのまま日本国全体としての各国へ向け親近感、さらには政策につながるわけではない。一方で、主要国への印象を推し量るとの視点では、十分に役立つ値ではある。今後各国との関係(善し悪しの他に単純な密接度)に変化があれば、調査結果にも確実な動きが見られるはずだ。
■関連記事: