現行年金制度への不満派多数、若年層では「満足」は1割のみ
若年層の満足派は1割に過ぎず、70代でも半数程度な現行年金制度
老後を資金面で支える社会保障制度の一つとして用意されている「公的年金」。高齢化が進むに連れて若年層の負担はより重く、保証される見返りは少なくなる状況が予想される。当然、制度への不満も若年層ほど大きいのが現状。
次以降のデータ・グラフは日本生協連が2013年11月に発表した、日本の社会保障制度への意識や考え方に関する調査結果を基にしたもの。それによると現行の(公的)年金制度に満足しているか否かを4段階+「考えたこと無し」で選んでもらったところ、全体では満足派が2割足らず、不満派が3/4という結果に落ち着いた。
現行年金制度では「今支払をしている人の支払総額は、受け取る時期になった後に受け取る総額よりも低い」と言われている。これは原則的に公的年金制度が「個人の積立」では無く、保険料の支払いが「給付金受け取り権利の確保」であり、支払われた額はそのまま「今」給付している人への給付金に充てられるからに他ならない。そして今の日本が高齢化社会に突入しているため、将来において受け取りの権利を行使した際には、今よりも需給対象者が増えている一方、保険料支払者は減っているため、受け取る額が減ってしまう次第である。
公的年金制度は高齢に達した後の給付金以外に、保険としての役割も果たしている。案外認識されていないが、公的年金制度は単に「高齢になると受け取れるもの」(老齢年金)だけでなく、「重度の障害を負ったとき」(障害年金)や、「一家の稼ぎ頭が亡くなったとき」(遺族年金)にも所定の給付を受けることが出来る。いわば生命保険、部分的な医療保険の役割も果たしていることになる。
しかし最大の要件である老齢年金において、支払額よりも受取額の方が少なくなる可能性が高いとの話を聞かされていれば、そして今給付を受けている高齢者達が自分達よりも「額面上」有利な扱いを受けていることを知れば、若年層が不満を持つのも無理はない。
一方若年層は「考えたこと無し」の回答率も高い。保険料支払いをしているはずではあるが、あまり問題意識を持っていない人も多数いるようだ。もっとも、支払の上では有利なはずの高齢者でも、不満派の方が多い。70代ですら不満を持つ人は過半数に達している。
支給開始年数を引き上げるのはどうだろう?
高齢化の進行で公的年金制度でも、財源を調整するために改革案がいくつか持ち上がっている。そのうち支払開始年数の引き上げについて、どのような考えを持つかを聞いた結果が次のグラフ。
全体としては反対派が多数で、賛成派は2割程度。当然、現在支給を受けている、あるいは間もなく支給開始の60~70代では賛成派が多く、それより下の世代、つまり引き上げでマイナスの影響を受ける可能性のある世代では賛成派は少ない。一方、現在の年金制度への満足度の設問でも見られたが、若年層ほど「分からない」という問題意識の薄い回答者も多い。特に女性では30代までは2割が「分からない」と回答している。
年金に限らず社会保障制度に関する質問では、社会全体の利益より、回答者自身の立場で有利か不利かを考え、それに基づいた回答がされがち。社会保障制度について考える際には、立場の違い、特に世代間の意識の相違について配慮が必要となることを忘れてはならない。
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