部数トップの「ちゃお」は17.1万部…少女向けコミック誌の部数動向(2021年10~12月)
部数は「ちゃお」がトップ
日々進歩する技術、中でもインターネットとスマートフォンをはじめとしたコミュニケーションツールの普及に伴い、紙媒体は立ち位置の変化を余儀なくされている。すき間時間を埋めるために使われていた雑誌は大きな影響を受けた媒体の一つで、市場・業界は大変動のさなかにある。その変化は少年・男性向けコミック誌ばかりでなく、少女・女性向けのコミック誌にもおよんでいる。今回はその雑誌のうち、少女向けコミック誌(少女向けのコンセプトで発刊されているコミック雑誌。おおよそ未成年でも高校生ぐらいまでが対象)について、日本雑誌協会が四半期ベースで発表している印刷証明付き部数(※)から、実情を確認する。
まずは少女向けコミック誌の現状。最新データは2021年10~12月分。
少女向けコミック誌ではトップは「ちゃお」。第2位の「りぼん」に4万部強もの差をつけており、少年向けコミック誌の「週刊少年ジャンプ」的な群を抜く部数の多さ。この圧倒的差異をつけた状況は、現在データが取得可能な2008年4~6月期の値以降継続している。数々の魅力的な付録も、同誌をトップの座に位置し続けさせている大きな要因となっているようだ。
第2位は「りぼん」、第3位は「花とゆめ」。そしてその後に「LaLa」「別冊マーガレット」「なかよし」が続いている。部数動向としては「ちゃお」が前期比で大きく減っているのが見て取れる。
プラスは2誌のみ…四半期変移
次に前期と直近期との部数比較を行う。雑誌は季節で販売動向に影響を受けやすいため、精密さにはやや欠けるが、大まかに雑誌推移を知ることはできる。
プラス誌は「別冊フレンド」「マーガレット」の2誌。それ以外はすべてマイナス。誤差領域(上下幅5.0%以内)でのマイナスが5誌、それを超えた下げ幅は6誌。前期比で1割以上の下げも4誌確認できる。
少女向けコミック誌で部数トップの「ちゃお」は、今期では前期比で誤差領域を超えた部数の下げ幅を示し、大きな減少が続いている。
一方で中長期的に見れば部数は漸減中であることもまた事実。6期前に一時的に部数が回復の動きを見せたものの、すぐに失速してしまったのは残念。少女向けコミック誌での部数トップの威厳を維持してほしいものだ。
「別冊フレンド」は大幅なプラス。
「別冊フレンド」は講談社発行の月刊コミック誌で、1965年に「週刊少女フレンド」の姉妹誌のポジションとして「別冊少女フレンド」との名前で創刊、1984年に現在の「別冊フレンド」に改名した。今期で部数が大きく跳ねあがった原因は不明だが、該当期に発刊された号では2021年12月号の「なにわ男子」とのコラボ企画や、2022年1月号の「東京卍リベンジャーズ」とのコラボ企画が人気を博した結果かもしれない。
誤差領域超えの減少がほとんど…前年同期比
続いて前年同期比による動向。年ベースの変移となることから大雑把な状況把握となるが、季節による影響を考慮しなくて済むので、より確かな精査が可能となる。
少女向けコミック誌は前年同期比でプラスは「別冊フレンド」のみ、それ以外は全誌マイナス、しかも「りぼん」以外はすべて誤差領域を超えるどころか1割を超えた下げ幅を示している。いずれも掲載作品に何か大きな動きがあったわけではなく、本質的な不調にあると解釈できる。
少女向けコミック誌全体において、起死回生の策が必要な時期に来ていることには違いない。新型コロナウイルスの流行が部数減少傾向に拍車をかけた可能性は否定できないが、それを裏付けるものは無い。
他方、多くの雑誌で電子化が行われており、電子版に読者の一部を奪われ、結果として紙媒体としての印刷部数が減少している可能性はある。あるいは単に、需要に合わせた部数の削減なのか。
しかしながら他の雑誌同様、電子版の部数は非公開のため、その推測の検証ができないのは残念な話に違いない。
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※印刷証明付き部数
該当四半期に発刊された雑誌の、1号あたりの平均印刷部数。「この部数だけ確かに刷りました」といった印刷証明付きのものであり、雑誌社側の公称部数や公表販売部数ではない。売れ残り、返本されたものも含む。
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