各自治体の「いじめ対策」を順位付け。「いじめ防止基本方針」の 「自治体チェックリスト調査」を公表!
私が所属しているNPO法人「ストップいじめ!ナビ」では、「いじめ防止対策基本法」が施行一年を迎えたこと、10月16日に2013年度の問題行動調査が文部科学省より公表されたことから、いじめ防止対策推進法に基づいて行なわれている各自治体の「いじめ防止基本方針」について「自治体チェックリスト調査」を行いました。
「いじめ防止基本方針」は、各都道府県、地方自治体、各小中高校などで策定されているものですが、今回は、全国の政令指定都市のいじめ防止基本方針をもとに、いじめ防止対策推進法の趣旨に基づいて、具体的にどのように方針が立てられているのかをチェックしたものです。今回は、政令指定都市の調査となっていますが、今後、都道府県や各学校などの施策についても、調査を行っていきたいと考えています。
いじめ防止対策基本方針:「自治体チェックリスト調査」報告
平成25年6月28日、いじめ防止対策推進法(通称:いじめ法)が成立しました。同法は、平成23年10月に起きた大津いじめ自殺事件をきっかけとし、いじめ問題への抜本的な対策として策定されたものです。
いじめ法は、いじめ問題に関し、PDCAサイクルに基づき、継続的で、効果的な施策を実行することを目指しています。すなわち、いじめを防止するために方針・計画を立て(plan)、方針・計画を実行し(do)、その成果を検証し(check)、次年度以降の方針・計画の改善に役立てる(action)といったPDCAサイクルが条文の随所に盛り込まれているのです。
その中心となるのが、planに当たる「いじめ防止基本方針」の策定です。法は、国と国公私立の小・中・高・特別支援学校に対して、いじめ防止のための具体的な方針・計画を立てることを義務付けています(11条・13条)。また、学校の設置主体である自治体に対しても、同趣旨の方針・計画を立てることを推奨しています(12条)。
「ストップいじめ!ナビ」の調査によると、多くの学校では、自治体から学校基本方針のひな形をもらい、手法を教えてもらいながら、方針を策定しています。そして、自治体のひな形は自治体が策定した基本方針の趣旨を踏まえたものとなっています。つまり、自治体の基本方針の内容をチェックすれば、その自治体内の各学校のいじめ対策の方向性が見て取れるのです。
そこで、「ストップいじめ!ナビ」では、自治体の基本方針が法の趣旨に即しているかを簡単にチェックするツールとして、いじめ基本方針のチェックリストを策定しました。こちらを用いれば、お住まいの自治体の基本方針がいじめ法の趣旨に即したものであるか否かを、皆さん自身で把握することができます。本チェックリストが活用されることにより、いじめ法の趣旨が共有され、社会の空気が変わり、結果として子どもたちが楽しく健やかに学校生活を送ることができるようになれば、メンバー一同、大変うれしく思います。
ストップいじめ!ナビ一同
(作業チーム:井桁大介、今井知子、楠見洋併、馬場大祐、藤田祐希=自治体チェックリスト班・弁護士チーム/須永祐慈=事務局)
方法
ストップいじめ!ナビ弁護士チームでは、独自に策定したチェックリストを用いて、いくつかの政令指定都市の基本方針をチェックしました。
まず、いじめ法に基づいて、盛り込むべきポイントを自治体いじめ対策基本方針チェックリストにまとめました。そのチェックリスト評価シートを使用して、メンバーの異なる3チームにより、各自治体をそれぞれ3回チェックしました。この3回のチェックの平均を算出したものが、今回の各自治体の評価になっています。
対象
2014年7月までにウェブに公表されていた14都市に限ります。また、千葉市、名古屋市は案として公表されていたものを対象にしました。なお、札幌市等の6都市は、2014年7月までにウェブに公表されていないため、調査結果欄が空欄となっています。
用いたチェックリスト
2014年6月verです。今回のチェック作業を通じてわかりづらい点を修正したものが、今回公表した新版(9月ver)です。今後も随時見直していく予定です。
調査結果
チェックリスト
評価シートは以下のようにポイント化しています。
自治体いじめ防止基本方針簡易チェックリスト
あなたがお住いの「自治体のいじめ基本方針」は大丈夫??
いじめ対策推進法の目的は、いじめから児童生徒の生命・尊厳を保持することにあります。同法は、この目的を達成するために、「いじめの未然防止,早期発見,事案対処」を妨げてきた「各地域・学校の構造的問題の解決」のための措置を示しました。
あなたのお住いの自治体は、このような法の目的に沿った「いじめ基本方針」を策定しているのでしょうか。各自治体の「いじめ基本方針」について7つの重要項目で判断します。
寸評
個々の自治体が法の趣旨をどのように理解しているかを検証すべく、自治体が策定し公表する基本方針を確認してみると、それぞれ随分と色合いが異なることがわかりました。
そして、残念ながら、法の趣旨を正解せず、おざなりな基本方針を策定する自治体も少なくありません。特に、最も法の趣旨に反していると思われるのが、法22条に定める組織の在り方です。
法は、学校内部に、いじめ対策の中枢となる組織を設置することを義務付けています。そして、組織には、生徒指導の中心となる先生たちだけではなく、一般の先生たちや外部の有識者を参画させることを求めています。
しかし、多くの自治体では、従前の生徒指導担当などのメンバーをそのまま組織のメンバーとしてお茶を濁しているのです。これでは、せっかくのいじめ法の趣旨が、教育現場にいきわたらないこととなってしまいます。法律の良い点が活かされないのは、法律家として大変もったいないと感じます。
今回の報告書では、14都市のうち上位3都市と下位3都市について詳細な寸評を行いました。
担当者が異なるため、若干注目している観点が異なりますが、全体的に見れば、具体的な対策が記載されていること、法の趣旨に合致した記載になっていることが高評価の対象となっています。一方で、抽象的記載にとどまる場合には低評価につながっていることが見て取れると思います。
上位3位自治体
1位 川崎市
・「いじり」と「いじめ」の具体例を列記するなど、いじめの定義が具体的といえます。
・「インターネット上で悪口を書かれた児童生徒がいたが、当該児童生徒がそのことを知らずにいるような場合など、行為の対象となる児童生徒本人が心身の苦痛を感じるに至っていないケースについても、加害行為を行った児童生徒に対する指導等については『法』の趣旨を踏まえた適切な対応が必要である。」としており、法の趣旨を踏まえ、「いじめの芽」を摘み取ることを強く意識しています。
・「いじめられた児童生徒の立場に立って、いじめに当たると判断した場合にも、その全てが厳しい指導を要する場合であるとは限らない。具体的には、好意から行った行為が意図せずに相手側の児童生徒に心身の苦痛を感じさせてしまったような場合については、学校は、行為を行った児童生徒に悪意はなかったことを十分加味したうえで対応する必要がある。」などと、状況ごとに個別具体的な対応が必要であることに配慮しています。
・例えば、「いじめはどの学校や集団でも、どの児童生徒にも起こりうる問題であるとの認識をもつ、いじめは当事者以外からは見えにくいものである。わざとぶつかって『ごめん』と謝ったり、遊びやゲームを装ったりする巧妙化や偽装化が進んでいる。またインターネットの普及により体力に関係なく誰もがいじめる側、いじめられる側になる可能性がある。」等の記載があり、いじめについての現状認識が具体的です。
・「いじめの認知は、特定の教職員のみによることなく、各学校に設置される『校内いじめ防止対策会議』を活用して行う。」としています。いじめ対策会議の役割として、「いじめに関する情報の収集と記録、情報共有」、「いじめの相談・通報の窓口」、「いじめの対処がうまくいかなかったケースの検証、必要に応じた計画の見直し」、「いじめの防止等の取組についてPDCAサイクルでの検証」、「定期的な『学校基本方針』の見直し」などを具体的に明記するとともに、「教職員は、いじめの兆候や懸念、児童生徒からの訴えを、一人で抱え込むことなく、管理職や学年職員に相談し、『対策会議』に報告する。」とした上、「いじめられている児童生徒の立場に立って考え、初期段階から組織(チーム)で対応する」ことを強調しています。
・ソーシャルワーカーの活用を重視しており、その役割も具体的に明記されています。「『校内いじめ防止対策会議』への参加及びいじめ問題の社会福祉の専門的視点に基づく具体的な支援」など。
・相談窓口の内容も具体的で、平日夜間も対応可能とするなど、本気度が見て取れます。
・発達障害児童に対する取り組みにも言及しています。
・いじめの発見、対応に関する取り組みも非常に具体的です。
・「いじめは見ようとしなければ見えない」といった標語もわかりやすい。
・全体として全ての記述が具体的であり、いじめ法の理念を十二分に反映させている。更なる取り組みを期待します。
2位 仙台市
・いじめの理解の項目において、「また、発達障害のある児童生徒や特別支援学校・特別支援学級に在籍している児童生徒がいじめを受けたり、いじめを行ったりする場合がある。これらの児童生徒については、その特性から、自分がいじめられているとの認識が弱かったり、自分の気持ちをうまく伝えることが苦手であったりするために、いじめが発見されにくいことがある。」等、様々な生徒の特性を踏まえた「いじめの理解」を記載されています。
・いじめの防止~「いじめはしない・させない・ゆるさない」の項目において、「いじめ問題の解決のためには、加害・被害の関係改善だけにとどまらず、周囲の「観衆」や「傍観者」の立場をとる児童生徒への働きかけと意識付けが何より重要であ」る、として集団でのいじめ問題解決に関する記載がなされたうえで、上記のような「いじめはしない・させない・ゆるさない」というわかりやすい標語が付されています。
・市が取り組む主な施策の項目において、例えば、「……毎年11月を「いじめゼロ・キャンペーン」月間とし、学校と連携の上、いじめの防止等の啓発活動に取り組む。」等、施策が列挙されている点が評価できます。
・学校におけるいじめの防止等に関する取組の項目において、「…児童生徒の発するいじめのサインを学校全体として見逃さないために、市教育委員会作成の「いじめ防止マニュアル」などを基にした、学校の実情に応じた教職員用のいじめの発見のための注意・チェック事項等を整理・作成する。…いじめの疑いのある情報を教職員が把握した場合の報告のルートなど、組織的な情報集約化のための基本的なルールなどを策定する。」等学校が行うべき具体的取組を記載し、学校側の取組の指針を具体的に示すことができています。
・いじめへの対処の項目において、「被害者児童生徒への対応及び支援」と「加害児童生徒に対する措置」という項目をそれぞれ立てたうえで、それぞれの立場からの対処方法を列挙しており、立場を加味した対処が考えられています。
・国のいじめの防止等のための基本的な方針を参考にしている点は評価できるが、この基本方針をそのまま引用している箇所が多い点は、評価できません。
・財政的な措置について一切触れられていません。
・情報の公開・共有についての記載は見受けられるが、法34条のいじめの事実の隠ぺい防止の記載がなされていません。
・全体として、法や国の基本方針の趣旨を踏まえようと意識したうえで、仙台市の基本方針が策定されており、評価できます。上記で述べたような具体的施策・措置の更なる具体化及び財政措置・隠蔽防止の記載の充実がなされれば、更に内容の濃いものになると考えられます。
3位 福岡市
・いじめの定義について、いじめ防止対策推進法2条の定義を明示し、こまやかな条文解釈をしているだけでなく、心理的・物理的影響についてそれぞれの具体例を出しながら分かりやすく説明されています。
・いじめの定義に関連して、「いじめの対応にあたっては、いじめられたとする児童生徒の立場に立ち、いじめがあったという認識のもとで受容的に接する」と明記しており、いじめ法の目的の1つでもあるいじめられた生徒児童の救済が重視されています。
・いじめの早期発見・早期対応について力をいれており、特に「学校においては月1回いじめのアンケート及びQーUアンケート等の調査実施する」、「『いじめ防止対策委員会(小)』・『いじめ非行防止対策委員会(中)』等の月1回開催の徹底」というように、具体的な期間を示して対策に取組む旨明記されています。
・学校いじめ防止基本方針の策定について、「学校基本方針を策定するに当たっては、方針を検討する段階から保護者等地域の方の参画や、児童生徒の意見を取り入れるなど、児童生徒や地域を巻き込んだ方針」を理想としており、多角的な意見を取り入れる努力がなされています。
・重大事態についても、条文解釈を丁寧に行っており、特に「『事実関係を明確にする』とは、重大自体に至る要因となったいじめ行為が、いつ(いつ頃から)、誰から行われ、どのような態様であったか、いじめを生んだ背景事情や自働性との人間関係にどのような問題があったか、学校・教職員がどのように対応したかなどの事実関係を、可能な限り網羅的に明確にすることである。この際、因果関係の特定を急ぐべきではなく、客観的な事実関係を速やかに調査する」としており、責任のなすりつけをするのではなく、事実を解明しようとする姿勢が示されています。
・重大事態における情報の取扱いについて、プライバシー保護に配慮しつつも、「いたずらに個人情報保護を楯に説明を怠るようなことは行わない」としており、情報を提供する姿勢が強く見受けられます。
・それぞれの施策について、いじめ法の根拠条文をあげており、条文を意識しながら読むことができる作りになっていて非常に良かった。また、根拠条文のみならず、施策について継続・強化・新規という3つの分類にわけているのは、わかりやすく、良い点だと感じました。
・市の施策など法律で規定されていることについて羅列的に示されているが、法律をより具体化して分かりやすいものにするという姿勢に欠ける部分が多く見受けられました。より良い基本方針とするためには、上位2都市のように、施策をより具体的に示すべきです。
下位3自治体
14位(下位第1位) 静岡市
・いずれの記載も極めて抽象的。具体的な取り組みがほとんど存在しないのではという疑念を抱かせます。
・基本目標の項目に、「他者から認められ、他者の役に立っているという『自己肯定感』や『自己有用感』を高めることができれば、いじめに向かう児童生徒は減ると考えられます」と記載されているなど、全体としていわゆる「心でっかち」(by 荻上チキ)な方針となっています。
・「基本方針は、いろいろな状況を踏まえたうえで、PDCAサイクルにより適宜見直しを行い、必要な措置を講じます。」と記載されていますが、具体的なPDCAの方法、時期等が明記されておらず、実効性に疑問が残ります。
・財政的・人的拡充について一切触れられていません。
・いじめ法34条に基づく「いじめの事実が隠蔽されない」よう体制が取られていません。他の自治体を参考とした何らかの対策が求められます。
・自治体内部の組織について、「スクールカウンセラー(SC)やスクールソーシャルワーカー(SSWr)を積極的に活用するほか、医療の専門家や警察経験者等、学校の求めに応じて派遣する外部人材を確保します。」としている点は評価できます。
・いじめに関する報道について、「WHO(世界保健機関)による自殺報道への提言を参考にする必要があります。」と明記している点は評価できます。
13位(下位第2位) 相模原市
・基本方針の全体を通して、理念や基本方針について法の規定を単に引き直すだけである等、抽象的にいじめ防止に対する自治体の政策的指針を示しているにとどまる印象を受けました。特に、いじめについての現状認識、地域の実情を踏まえた具体的な記載がほとんどなかったことは、地方公共団体はその地域の実情に応じて地方いじめ防止基本方針を定めるよう努める旨規定する法12条の規定の趣旨が十分に反映されていないことになります。
・いじめの事前予防、早期発見、事案対処に対する取組みが全体的にみて非常に抽象的です。いじめ問題に取組むPDCAサイクルについて具体的な年間計画を示して対策に取組むなど、積極的な姿勢を示すことが望まれます。
・いじめ対策のための人員対策について、「市は、市立小中学校における研修の充実を通じた教職員の資質向上、生徒指導に係る職員体制の整備、青少年教育カウンセラー等の専門的知識を有する者の確保等必要な措置を講ずる」と抽象的に記載するにとどまっており、法18条の趣旨を十分に反映していません。市立小中学校における研修が具体的にどのようなものであるか、生徒指導に係る職員体制を具体的にどのように整備するのかを明記することが望まれます。
・いじめ対策基本方針の見直しについて、「市は、市基本方針に定めるいじめ防止等の取組が実効的に機能しているか、『子どものいじめに関する審議会』において検証し、必要に応じて見直す。」と抽象的に触れるにとどめており、法12条、20条の趣旨が十分に反映されていません。
・自治体内部で構成する組織や法22条の組織のメンバーに外部者を入れることを勧める旨の記載がなく、法22条の趣旨が十分に反映されていません。
・いじめに関する啓発活動を実施する旨、児童の自発的活動に対する支援をする旨抽象的に記載するにとどまっており、法15条2項の趣旨を十分に反映していません。
・いじめの隠蔽を防止するための具体的な対策が明記されておらず、法34条の趣旨を十分に反映していません。
・重大事態に対応する組織について、第三者委員会とする旨の記載がない。法28条の趣旨を十分に反映するべく、外部の専門家や弁護士等の第三者が重大事態の調査・対応を担うようにするなど、組織的な中立性を担保することが望まれます。
・いじめへの対処について、「市立小中学校は、いじめに係る通報を受けた場合において、児童等がいじめを受けているとわかったときは、迅速かつ組織的に事実確認を行い、いじめをやめさせるとともに、次の対応等により再発防止に努める。1.いじめを受けた児童等に対する支援並びにその保護者に対する情報提供及び支援 2.いじめを行った児童等に対する教育的配慮に基づく指導及び支援並びに保護者に対する助言 3.全体(学級、部活動、遊び仲間等)の問題として、児童等への指導」などと一般的ないし抽象的に記載するにとどめている。状況ごとに個別具体的な対応が必要であることに配慮することが望まれます。
・相談窓口の内容が抽象的であり、法16条2項の趣旨を十分に反映していない。児童が直接相談・通報できる窓口の担当者、連絡先等を具体的に記載するなど、児童にとって利用しやすい体制を整備することが望まれます。
・資料として添付された、いじめ根絶市民集会のいじめ根絶アピールに掲げられた各標語は頭に残りやすく、いじめ問題に対する市民の理解を深めるのに効果的であるようと考えられます。
・資料においていじめ行為の具体例を挙げ、いじめ加害者、被害者、傍観者などの周囲のいじめの構造を図解する等、いじめ問題に対して積極的に理解しようとする姿勢が示されています。
・全体として記述が抽象的であり、法の理念を貫徹しようとする姿勢が希薄であるように感じられた。今後のいじめ防止対策の拡充に期待したいです。
12位(下位第3位) 神戸市
・いじめ法の条文の引用が少なく、全体的に広く地域住民に公表し、見てもらうという意識が低いように見えます。
・『神戸市いじめ指導三原則「するを許さず されるを責めず 第三者なし」』の標語はわかりやすく、評価できます。
・いじめの留意事項について、が硬直的ではなく、具体的に運用されていることは評価できる上、その具体例が充分に記載されている点は高く評価できますが、「いじめ」がされる側にしかわからないということを強く意識した上で、される側の心理的苦痛に至らない場合についてまで配慮することが、法の趣旨であると解される以上、物足りなさが残ります。
・『神戸市教育委員会は、いじめの防止等のための対策を推進するために、必要な財政上の措置その他の必要な措置を講ずる。』と予算措置をとる趣旨が見受けられるが、その具体性に欠ける。明確な予算措置を規定することが望まれます。
・いじめ問題対策連絡協議会の構成員は、『学識経験者、神戸地方法務局、兵庫県警察本部、神戸市こども家庭センター、学校、家庭、教育委員会、その他の関係者により構成し、専門的な見地及び市民の立場で本市のいじめ対策について検討する』としており、外部の専門家や弁護士といった第三者性・外部性が明確に規定されておらず、第三者性を担保し、情報の共有、隠蔽の防止を許さないという姿勢が欠けています。
・神戸市の地域に実情に応じて、基本方針が策定されていることが望まれます。これについては、グラフなどを使ってわかりやすく記載する態度を川崎市から学んでいただきたいです。
・いじめ法34条に基づく「いじめの事実が隠蔽されない」よう体制が取られていないため、学校評価の基準として予防体制作りを行うべきです。
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「ストップいじめ!ナビ」は、一向におさまることのない「いじめ問題」に一石を投じようと、2012年秋に活動を開始したNPO法人です。様々な分野の専門家が集まり、それぞれが持つノウハウや社会資源を結集させて「いじめ問題」への具体策を提示・実現させていこうとしています。