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「足立の花火」2025年は5月31日開催へ―花火大会の夏以外での開催は今後も増える?

やた香歩里花火鑑賞士な旅ライター

東京都の人気の花火大会の1つ、「足立の花火」。例年7月下旬の開催でしたが、2025年は5月31日(土)に開催すると発表されました。

来年の「第47回 足立の花火」は令和7年5月31日(土)に開催(あだち観光ネット)

理由としては、「熱中症等の健康上のリスク」「天候(風雨、雷、台風、気温など)による中止リスク」が挙げられています。

実際、2024年7月20日(土)の開催が、直前に雷を伴う豪雨により中止となったことは記憶に新しいと思います。

人気の高い「足立の花火」なので、より気候の安定した時期に開催されることを歓迎する方は多いのではないでしょうか。7月下旬と5月末なら、日没時間にもあまり差がないので、観覧環境としても大きな変化はないものと思われます。

参考までに、2024年の5月31日と7月20日の東京都の日没時間を比べると

5月31日:18:51
7月20日:18:54

と大差ないことがわかります。開催時間も19:20~20:20と、例年通りの予定となっています。

気候も、7月よりいくぶん気温が低いことが期待でき、気持ちのよい観覧環境になるのではないでしょうか。

長く続いている花火大会なので、様々な意見があったのではないかと拝察します。ですが、昨今の夏の状況を考えると思い切った決断だと思います。

次回開催の成功を心から願います。

夏開催から他の時期に変える花火大会が増えている

近年、特にコロナ禍での中止を経て花火大会の多くが再開されて以降、夏以外の開催に変更した花火大会が増えてきています。関東地方では

世田谷区たまがわ花火大会(東京)・川崎市制記念多摩川花火大会(神奈川)
2017年以前:8月下旬→2018年以降:10月上旬

利根川大花火大会(茨城)
2019年以前:7月中旬→2022年以降:9月中旬

常総きぬ川花火大会(茨城)
2019年以前:8月11日→2023年以降:9月または10月

流山花火大会(千葉)・三郷花火大会(埼玉)
2019年以前:8月下旬→2023年以降:10月上旬

鹿嶋市花火大会(茨城)
2019年以前:8月下旬→2022年以降:10月または11月

などがあります。

常総きぬ川花火大会(茨城)
常総きぬ川花火大会(茨城)

また、ここ4、5年のうちに新しく開催された花火大会の多くは、春や秋の開催です。

The 絶景花火 Mt.Fuji:2022年より実施、春開催
三陸花火大会:2020年より実施、春に花火大会、秋に花火競技大会を開催
花火甲子園:2019年より実施、秋開催
にし阿波の花火:2019年より実施、秋開催
室蘭満天花火:2025年初開催、9月開催予定

The絶景花火 Mt.Fuji
The絶景花火 Mt.Fuji

夏の花火大会が飽和状態だということもあると思いますが、春や秋の気候の良さもその要因として大きいのではないかと思います。

夏開催のリスクが高まっている

「足立の花火」の開催日程変更理由にあるように、夏開催の花火大会は、豪雨や台風の影響を受けることが少なくありません。

2024年8月3日(土)に予定されていた、山形県酒田市の「酒田の花火」は、7月下旬の大雨により大きな被害を受けたことから中止になりました。実は「酒田の花火」は、2022年にも開催数日前の大雨の影響で中止を余儀なくされています。
2024年の秋田の本荘川まつり花火大会(2024/7/27)、埼玉の小江戸川越花火大会(2024/8/24)、栃木の尊徳夏まつり大花火大会(2024/8/31)なども荒天が理由で中止となっています。また、中止にこそならなかったものの、延期になった花火大会や、直前・直後に豪雨に見舞われた花火大会はいくつもありました。

もちろん、2024年11月2日開催予定だった「土浦全国花火競技大会」が中止になったように、秋開催の花火大会にも荒天で中止になったものはあり、夏以外でもリスクはあります。ただ、問題は天候だけではありません。

写真は2022年8月3日「長岡まつり大花火大会(長岡花火)」。断続的に雨が降る中開催されました。この時の雨が庄内地方に大きな被害をもたらし、「酒田の花火」中止に繋がりました。
写真は2022年8月3日「長岡まつり大花火大会(長岡花火)」。断続的に雨が降る中開催されました。この時の雨が庄内地方に大きな被害をもたらし、「酒田の花火」中止に繋がりました。

昨今の猛暑により、熱中症なども問題になっています。

花火大会は夜間にやるからそれほど影響はないように思われるかもしれませんが、基本的に観客は花火打ち上げ開始の数時間前、まだ明るいうちに会場に到着していることが推奨されますし、無料エリアや自由席の場合、朝から場所取りすることもあります。

運営スタッフやボランティアなど、早くから集合して作業をしている人もたくさんいます。

そして会場を設営する、花火師などの業者は、猛暑の炎天下、日陰もほとんどない過酷な環境で作業をしています。その負担の大きさは推して知るべし。

2024年8月2日の「長岡まつり大花火大会(長岡花火)」会場。16時前でも暑さが続き、多くの人が帽子や日傘、タオルなどで日差しをしのいでいます。
2024年8月2日の「長岡まつり大花火大会(長岡花火)」会場。16時前でも暑さが続き、多くの人が帽子や日傘、タオルなどで日差しをしのいでいます。

天候は完全な予測はできませんが、猛暑は時期を選ぶことで避けることができますね。

今後も開催日程が変わる花火大会がでてくる可能性も

諸々の状況を考えると、夏が花火大会に向いた季節ではなくなってきていることがわかります。

夏の夜、ようやく少し暑さが緩んだ中、浴衣で楽しむ花火大会も風情があり素敵ですよね。夏の夜の開放的な雰囲気も格別だと思います。

お祭りやお盆、慰霊などの意味のある日程も多いので、完全に夏に花火大会がなくなることはないでしょう。

でも、夏から春や秋に開催時期を変更する花火大会は今後もでてくるのではないかと思います。花火好きとしては、観覧環境が良くなることや、他の花火大会と日程が重ならなくなる可能性があることなど、歓迎したい要素も多いです。

思いがけない花火大会が日程を大幅に変更することがあるかもしれないので、行ってみたい花火大会については、早め早めに情報をチェックするようにしてくださいね。

花火鑑賞士な旅ライター

宮崎生まれの大阪育ち。人生の約半分を京都で過ごし、現在は千葉在住。もとからの旅好きが、関東移住を機に花火にはまり、旅の目的に花火鑑賞が加わりました。遠くへの旅行も好きだけど、身近なお出かけも好き。どこかで見た素敵なものを、誰かに伝えたい。知って欲しい誰かと知りたい誰かを繋ぎたい。日本酒ナビゲーターで温泉ソムリエで花火鑑賞士な旅人。

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