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「声出し金銭授受がはびこる球界の常識は世間の非常識」からわれわれが学ぶべきこと

豊浦彰太郎Baseball Writer
開幕前のプロ野球は大揺れだが(写真:アフロ)

プロ野球の「声出し」等による金銭授受の発覚が続いている。ソフトバンク選手会長の長谷川勇也は、「選手間で常識として行われてきたことが世間からは異常な行為と受け取られることを感じた」と語っているという。

「野球界の常識は世間の非常識」、そう受け取った方も多いと思う。しかし、「野球界」ではなく「世間」に属するわれわれも認識しておかねばならないことがあると思う。

それは、特殊な価値観や常識が醸成されているのは野球界だけではない、ということだ。われわれが、あなたが属する業界や会社、学校などでも外部からは奇異に映る慣習がきっとある。

昭和の終わりにぼくは社会人になったのだけれど、当時所属した会社では社内でゴルフコンペが行われる際は、「馬券」を設定し社内のみならず、取引先にもその購入を反強制的に強いていた。また、上司が晴れてマイホームを購入すると、若手社員は引っ越し要員として召集された。また、時間外労働をした場合は残業代を申請すると「そんなんは、現場のおっちゃんのためにあるんや」と先輩に諌められた。今の若い方は「なんという異常な会社だ」と思われるかもしれないが、当時そんな社風に異を唱える人はほとんどいなかった。

今回の野球界の一連の「不祥事」を「ばかなことをやっているなあ」と思う人が多いと思う。しかし、表面化している事象が違うだけで、プロ野球界の声出し金銭授受はわれわれを映す鏡だと思う。所属しているコミュニティが閉鎖的であればある程、異様な常識や価値観が生まれやすいだけだ。そして、野球界という閉鎖的な社会も必ずしも完璧に閉ざされているわけではない以上、「世間」の影響も受けている訳で、異常な部分がそれにより矯正される可能性もあることを意味している。

何かとコンプライスが叫ばれる息苦しい世の中にぼくたちは生きている。残念と言うか、幸いにしてと言うべきか、やや閉鎖的なプロ野球界にはその意識が浸透すには時間が掛かっているようだ。でも、閉鎖的なプロ野球界も一般社会からの影響も受けている。必ず変わって行けるはずだ。事態を見守りたい。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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