ガソリンスタンド数や急速充電スタンドの推移をさぐる(2019年公開版)
1990年代後半から数を減らしていくガソリンスタンド
ガソリン車を運転する人には命綱に等しいガソリンスタンドだが、先の震災では大いに注目を集めたものの、昨今では経営不振でその数を減らしているとの話もある。今回はそのガソリンスタンド数の動向、さらには関連する施設として電気自動車やプラグインハイブリッド自動車用の急速充電スタンド数を確認する。
次に示すのは経済産業省・資源エネルギー庁の公開資料「揮発油販売業者数及び給油所数」を集約した、販売業者(揮発油販売業者)数と給油所(ガソリンスタンド)数の推移。最新のデータは2018年度末(2019年3月31日現在)。
ガソリンスタンド数は1994年度(6万421件)をピークに減少を続けているが、1996年度には大きな下げ幅による減少が確認できる。これは、特石法(特定石油製品輸入暫定措置法)が1996年4月に廃止され、ガソリンの輸入が解禁されたことに伴うもの。また最近では2008年4月に一時的に解除された暫定税率関連の混乱に影響を受け、減少率が増加したのが確認できる。さらに前年比の値が全般的には右肩下がり、つまり減少率が増加していることから、ガソリンスタンド数全体は加速度的に減少していたのが分かる。
2012年度以降は再び下げ幅を拡大している。これは「2011年6月に改正された『危険物の規制に関する規則』の影響で、猶予期間が切れる2013年1月末までに必要とされる地下タンクの改修が果たせず、消防法に基づいた許可の取り消し処分を受けた、あるいは営業の継続を断念した」「経営者の高齢化が進んでおり、休廃業・解散が進んでいる」「仕入れ価格の上昇や地球温暖化対策税導入で収益が悪化し、廃業を選択した」などが原因として挙げられる。
特に2013年度以降は経産省の資料の特記事項として「職権消除件数」(給油所などを廃業し年数が経っているにもかかわらず、品確法に基づく廃止手続きをしないまま連絡がつかない事業者に代わり、経産局などが廃止手続きを行った件数)が併記されており、直近の2018年度においては揮発油販売業者は33件、給油所数は35件に達している。
なおここ数年では少しずつ減少率が縮小する動きに転じているが、それでも年間で2~3%台のスタンド数の減少が生じていることには違いない。
セルフとフル、それぞれのガソリンスタンド数
ガソリンスタンドにはフルサービスを行う通常のスタイルのものに加え、いわゆる「セルフサービス」のガソリンスタンドも存在する。これは1998年4月に消防法が改正され「顧客に自ら給油などをさせる給油取扱所」の運用が可能となり、それ以降に登場したタイプのスタンドである。資源エネルギー庁発表のデータは登録ベースであり、セルフスタンドも登録は必要なので、全ガソリンスタンド数にカウントされる(資源エネルギー庁・全国石油協会双方に確認済み)。
セルフスタンドのみの数については日本エネルギー経済研究所石油情報センターの「石油情報センター調査報告書」内の「セルフSS出店状況」で直近値を知ることができる。ここから各年度の最終四半期の値を抽出して「セルフスタンド年度・数」を導き、ガソリンスタンド全体数と比較して「セルフスタンド」「フルサービスのスタンド」双方の数を算出。積み上げ型の棒グラフにしたのが次のグラフ。
セルフスタンド数は漸増しているため、ガソリンスタンド全体に占める比率が増加している。しかしセルフスタンド数の増加数以上に、フルサービスのスタンドが減少しているため、ガソリンスタンドの総数は減っているのが把握できる。概算だが直近データでは、ガソリンスタンドの1/3強(33.6%)がセルフスタンドとの計算になる。
電気自動車用の急速充電スタンド数は
電気自動車(Electric Vehicle、EV)やプラグインハイブリッド自動車(Plug-in Hybrid Vehicle、PHV)は動力源として電動機(モーター)を使うため、その稼働には電気が必要となる。その電気を蓄える蓄電器に充電をするのが充電スタンド(充電器)。ガソリン自動車におけるガソリンスタンドのような存在である。
普通充電器の設備(単相交流100Vまたは200V)を備えることで一般住宅でも充電は可能だが、フルの充電には長時間の時間を要する。深夜帯に充電を始め、朝に充電が終わって使うスタイルである。また最近コンビニや屋外駐車場で見かけるようになったポール型の充電器も多分はこれが該当する。
他方、ガソリンスタンドや高速道路、商業施設の一部で見られるのが急速充電器。こちらは電源は3相200Vを使い普通充電器と比べると数分の一の時間で充電が可能となるため、ガソリンスタンドにおける給油感覚での充電が可能となる(とはいえ数十分はただ待つのには長いと感じる人もいるだろう)。
ガソリン車同様、電気自動車も燃料に当たる電気が尽きれば動かなくなってしまう。これをガス欠ならぬ電欠状態と呼ぶが、一般財団法人電力中央研究所のシミュレーションによれば、論理的には約30キロごとに充電器が設置されていれば電欠は起きないとされている。現状では数の上ではそれを満たしているものの、実際の配置にはばらつきがあり、さらに普通充電器での充電は長時間設備を専有することになるため、自動車の蓄電器を満たすまでの充電は自宅以外では難しいものとなる。あくまでも「つなぎ」「急場しのぎ」的な存在。なお普通充電器は個人世帯以外のものでは2019年9月時点で1万4977か所(スタンド数、【GoGoEV】より)となっている。
実質的にガソリン車におけるガソリンスタンドと同等の立ち位置にあるのが急速充電器だが、その設置か所数は現時点で日本国内において7000件を超えている(1件につき複数の充電器が配されている場所もあるため、充電器数はこれより上になる)。
とはいえ、地域的にばらつきがあることは否めない(GoGoEVの公開値を基に一般充電以外に急速充電などまで含めた充電スタンド数を計算すると、最大数は東京の2765か所、最小数は島根県の193か所となっている)。また一般的に電気自動車の走行可能距離はガソリン自動車と比べると短いことを考えれば、利用スタイルの上で長距離利用がされにくいとしても、数の少なさは利用者にとって不安材料には違いない。
ガソリンスタンド数の減少について資源エネルギー庁では2014年6月に【石油流通分野の現状と課題について(PDFファイル)】の中で、「自動車保有台数の減少」「走行車両の燃費向上」「走行距離そのものの減少傾向」などからガソリンの需要が減少し、必然的に供給する場のガソリンスタンドの需要が低迷していること、そして石油販売業者の収益性が低いままであること(特石法廃止以降は特に)などを分析結果として挙げている。
一方、自動車が移動運搬手段として必要不可欠なこと、電気自動車などガソリン自動車の代替手段の浸透にはまだ時間がかかること(さらに現状をかんがみるに、ガソリン式の自動車が電気自動車にすべて置き換わることは想定しがたい)を考えると、ガソリンスタンドはインフラを支える場として欠かせない、公共性の高い存在なことがあらためて理解できる。
ガソリンスタンドは耐震性・耐火性などの基準が極めて厳しく、先の震災でも致命的な被害は出ずに、震災後の復旧時におけるインフラをサポートする拠点として、大いに頼りになった。そしてそれとともに、スタンド数そのものが不足気味であることは、多くの人が記憶に留めているはず。今後この問題はより深刻なものとなっていくだろう。
他方電気自動車やプラグインハイブリッド自動車向けの急速充電器の数は、ガソリンスタンドと比較すればまだ少数に過ぎない。現在の電気自動車の航続距離などの仕様を考えれば、長距離の利用ではなく、拠点となる自宅や企業の周辺への移動手段が主な使い方となるのは必然。ガソリンスタンドと同じような設置の需要ではなく、住宅地域や商業地域を重点として広がっていくだろう。
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