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メーガン妃のNetflixシリーズが延期に。理由は本当に山火事だけか?

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
今月15日配信開始だったメーガン妃のシリーズは3月に延期(写真:ロイター/アフロ)

 今月15日に全世界配信が予定されていたメーガン・マークルのリアリティシリーズ「ウィズ・ラブ、メーガン」が、延期された。新たな配信開始日は、3月4日になるとのこと。

 現地時間12日、Netflixは、「ロサンゼルスで山火事が続く中、サセックス公爵夫人メーガンからのリクエストを受け、南カリフォルニアの美しさを讃えるシリーズの配信開始を延期することにしました。我が社も完全に賛同します」と、プレスリリースを通して発表。メーガン妃も、「今は、私の地元であるカリフォルニアで起きている山火事の影響を受けている人々への手助けに集中すべき時。配信の遅延をサポートしてくださったNetflixに感謝します」との声明を出している。

 この判断は、至極まっとう。予想されていた通りと言ってもいい。

 そもそもこの新シリーズは、予告編が解禁された時から、「ズレている」、「無神経」などと批判されてきた。近年の物価高、家賃高騰で、カリフォルニア州では仕事をしていても日々の生活に苦しんでいる人たちがたくさんいるのに、一般人は決して住めないような豪邸で、有名シェフと一緒に料理を作ったり、フラワーアレンジメントをしたりする様子を見せつけるのだから、不快と受け止められてもしかたがない。

 故ジョン・マケイン共和党上院議員の長女でテレビパーソナリティのメーガン・マケインは、「このコンセプトは思慮に欠けている。私なら、(健康的な)食品が手に入りづらい低所得者が住むエリアに新鮮な食品を届けるシリーズを作るようアドバイスしたでしょう。エゴをひけらかすのではなく、人助けのために何かしなさいよ。だからあなたは世界から嫌われているの。あなたはその瞬間の空気がまるで読めない」と、ソーシャルメディアでメーガン妃を叩いている。

予告編が不評で「手を入れるのでは」との憶測も

 山火事が起きる前ですらそうだったのだから、多くの人が家を失い、自宅で料理をするというシンプルなことすら出来なくなった今、平気でこんなシリーズをお披露目しようものなら、矢面に立たされるのは、文字通り火を見るより明らか。Netflixは世界規模のサービスで、ロサンゼルスから遠く離れたところにも会員がいるとは言っても、批判されるための材料を自ら提供するようなことをやる必要はない。

 その一方で、これは都合の良い言い訳だったのではないかという憶測も聞かれる。ソーシャルメディアには、「もちろん山火事だけのせいだよね。信じるさ」、「今は山火事のニュースだらけで自分の番組が埋もれるのが嫌なだけでしょ」、「アップデートありがとう。どうせ見ないから関係ないけど」などといった皮肉のコメントが見られる。

 予告編の反響がネガティブだったことから、「編集や再撮をしようとしているのではないか」と見る人もいる。「『悲劇ツアー』の映像を入れようとしているのかも」との書き込みもあった。

“悲劇ツアー”とは、先日、避難所のひとつであるパサデナ・コンベンション・センターをメーガン妃とハリー王子が訪れたことを指す。夫妻が滞在したのはわずか17分だったとの情報もあり、「メディアに露出するために出てきただけ」という冷たい反応も多かった。ハリウッド女優ジャスティン・ベイトマンも、「災害観光客」、「ambulance chasers(事故があったと見ると金儲けのために寄ってくる人たちのこと)と変わらない」などと、ソーシャルメディアで夫妻をこっぴどく批判している。

実践的なハウツー、メーガン妃の個人的アドバイスを紹介

 こういった世間の反応を受けて、以前からメーガン妃に好意的な「People」は、すぐさま反論する記事を掲載した。

 独占をうたうその記事で、内部事情を知るという人物は、「『ウィズ・ラブ、メーガン』を延期することは、彼女にとって簡単な決断だったと思います。おもてなしをする自宅を失った人がたくさんいるのに、喜びやおもてなしについての番組を配信するのは、彼女にとって想像できなかったはず」と語っている。その人物はまた、「番組が山火事のニュースの陰に隠れてしまうから延期したのだと言っている人たちがいるのは、悲しいこと」ともつけ加える。
 さらに、「People」は、メーガン妃とハリー王子がパサデナ・コンベンション・センターに滞在したのはわずか17分だったという説をも否定。彼らは現地で丸1日を過ごし、食事を提供するお手伝いをして、生活必需品を寄付したと主張している。

「ウィズ・ラブ、メーガン」の一場面(2024 Netflix, Inc)
「ウィズ・ラブ、メーガン」の一場面(2024 Netflix, Inc)

 Netflixによれば、「ウィズ・ラブ、メーガン」は、「実践的なハウツーや、メーガンの個人的なアドバイス、昔からの、あるいは新しい友達との正直な会話などを混ぜた」シリーズ。「完璧を目指すのではなく、遊び心を大事に」、「予想しなかった状況でも、美を作り出すことは簡単」というメッセージを強調するものだという。

 全8話構成で、メーガン妃、ハリー王子のほかに、有名シェフ、ロイ・チョイ、アリス・ウォーターズ、メーガン妃の友人ミンディ・カーリングなどが出演。このシリーズにはメーガン妃の「American Riviera Orchard」の商品が使われており、配信開始のタイミングに合わせてブランドを本格的に立ち上げる計画のようだ。

 メーガン妃とハリー王子が2020年に結んだNetflixとの大型契約は、今年の末まで。夫妻の今後のハリウッドでのキャリアは、このプロジェクトが成功するかどうかにかかっている。

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ありがとうございます。
L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「シュプール」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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