菅野智之35歳でメジャー移籍!年俸20億の価値を上原浩治が解説
巨人から海外フリーエージェント(FA)権を行使し、メジャー挑戦を決めた菅野智之投手がア・リーグ東地区のオリオールズと契約した。年俸1300万ドル(約20億5000万円)の単年契約で海を渡る。私が在籍していた時代とは違い、オリオールズは今季、同地区でヤンキースに次ぐ2位となり、ワイルドカード1番手でポストシーズンに進出した強豪になっている。そのチームからのオファーは条件面からみても期待が高い。
1年契約は35歳という年齢を考えれば、妥当だろう。42歳ということで単純比較はできないが、メジャー通算262勝(147敗)のジャスティン・バーランダー投手も年俸1500万ドル(約23億7000万円)の1年契約だ。ベテラン投手に関しては、年俸で評価して契約年数は単年とするケースは決して珍しくない。智之の場合は、25年シーズンに結果を残せば、26年シーズンの評価はさらに高まる。年俸は先発ローテーションの一角としての評価を得ての契約で、本人も納得してメジャーへ行くというのが何よりだろう。
強みは何より制球力だろう。
メディアの評価軸として、最速何キロというのはわかりやすく、制球力を示す根拠はやや抽象的になるため、スピード投手は見出しが立ちやすい。メジャーもスピード全盛の時代になってきているが、野球は決して球速を争う競技ではない。いかにアウトを取るか、だ。三振でも、内野ゴロでも、外野フライでもアウトは一つ。チームとして延長を考えなければ、27個のアウトを奪うまでに許した失点の差が勝敗を分ける。
つまり、スピードもアウトを取るための手段の一つにすぎない。智之の制球力はおそらく、日本で試合をみていたメジャーのスカウトの目を釘付けにしたのではないだろうか。アウトを取る能力として、智之のコントロールが「1年20億円」の価値を生んでいることの証拠だろう。スピードも大事だが、制球力にも劣らぬ重要性がある-。新たなシーズン、メジャーのファンはその重要性を智之の投球から見せつけられることになるかもしれない。
日本人選手がメジャーに挑戦して長い年月が経つ。食生活や体のケアについては、日本と大差ない環境にあるはずだ。クラブハウスの食事などもストレスは感じないだろう。
日米で解消できない課題があるとすれば、移動距離の長さと、先発投手でも全試合にベンチ入りしなければならない点だろう。これによる疲労の蓄積とどう向き合うかは、アメリカで実際に体験することでしか解決法を見つけられない。
智之の投球技術やプロ意識の高さは、むしろ周りのメジャーリーガーがお手本にしたいくらいだろう。年齢的に挑戦のタイミングとしてはラストチャンスだっただろうが、いつの日か「メジャーに行っておけばよかった」という後悔をすることもなく、楽しみのほうが大きいはずだ。
活躍できますかという愚問に答えるつもりはない。先発ローテーションを1年間、守ってほしい。その先に結果はおのずとついてくる。今年は、智之の活躍をたくさんこのコラムでも書いていきたい。