子ども限定100円モーニング! 名古屋の喫茶チェーン「カフェヨシノ」の「こどもーにんぐ」
喫茶店の弱点をカバーする多彩なサービス
子どもは何とドリンク+パンのモーニングが100円! 名古屋の喫茶店チェーン「カフェヨシノ」の新サービス「こどもーにんぐ」が2024年7月19日、グループ全17店舗でスタートします。
対象は10歳以下の子どもたち。オレンジジュース、カルピス、ミルクのいずれかのドリンクに、生こっぺサンドのチョコバナナホイップサンド、たまごサラダのどちらかがつくセットになっています。
カフェヨシノは、これまでにもモーニングサービスをはじめ様々なお得なサービスを導入してきました。喫茶店業界では初となるドライブスルーモーニング、午後にデザート類などをつけるアフタヌーンサービス、夕方以降にミニカレーなどをつけるファイナルサービス、そして今年春に始めたランチタイムの0円サービスなど・・・。これらはいずれも、喫茶店のウイークポイントを克服するためのものといえます。
□関連記事/「ドライブスルーでもモーニング。名古屋喫茶チェーン『カフェヨシノ』のライバルはコメダじゃない(!?)」(2023年11月14日)
「夜はカレーが0円! 名古屋喫茶のモーニングが夜向けに進化。『カフェヨシノ』のファイナルサービス」 (2024年2月3日)
「物価高で何でも高くなっている中、お客様にお得さを感じてもらいたい。今回もその一環のサービスです。同時に、お子様のいるママ世代やファミリーにもっと気軽に利用してもらいたいという狙いもあります」と社長の吉野貴士さん。シニア需要が高い喫茶店業界にあって、カフェヨシノは比較的若い世代のお客も多いブランドですが、それでもコロナ禍以降、やや減少気味だったそう。こどもーにんぐは、子連れのファミリー層の取り込みをあらためて強化する取り組みというわけです。
子どもの声から生まれた100円メニュー
そして、新サービス導入のきっかけは、まさに子どもを持つ関係者の声だったといいます。
「小学生の息子がお気に入りの子ども限定100円ラーメンのお店があるんです。野球の練習の帰りにチームメイトの親御さんに連れて行ってもらったのをきっかけに、またそこへ行きたがるようになったんですね。子どもが行きたいと思う店、思い出になるサービスっていいな、と感じて、カフェヨシノでも子ども向けのサービスができないかと吉野社長に提案しました」とはカフェヨシノの広報を担当するPR会社の犬飼奈津子さん。
「確かに、中華料理など他の飲食チェーンでは子ども向けのリーズナブルなメニューは珍しくありません。しかし、喫茶店では子ども連れがメインターゲットではないためそれがなかった。これをイチ早く導入することは、他社がやっていないことにチャレンジしてきた我が社の方針にも合っていると考えました」と吉野さん。
消費者目線と経営者の方針がマッチし、子ども向けのモーニングサービスの導入が具体化したというわけです。
1人モーニングよりもお得さを実感できる
100円とはいえ内容は充実。目玉のチョコバナナホイップサンドは、オリジナルのコッペパンに、生のバナナをはさんでホイップクリームとチョコレートをトッピング。ドリンク付きで100円とは破格です。これで採算は取れるのでしょうか?
「こどもーにんぐだけで考えたら出血覚悟です。しかし、子どもには必ず親をはじめ大人がついてくる。お子さん+大人のグループひと組で利益が出ればいいと考えています」と吉野さん。
ユーザーにとっても、子どもと一緒に喫茶店に行く有効な動機づけになりそう。喫茶店のモーニングサービスはお得とはいえ、家族4人で利用するとなると2000円前後はかかり、朝食としてはそれなりの出費となります。それが1200円程度になるのですから、ひとりで行く時以上にお値打ち感を感じられるんじゃないでしょうか。
喫茶店文化を担う次代の顧客を超・青田買い
夏休みの始まりに合わせて準備を進めてきたという吉野さん。子どもと出かける機会が増えるこの時期は、子連れファミリー向けサービスのスタートにうってつけのタイミングです。と同時に、このサービスには長期的な視点も秘められています。
「生活に根ざした業態である喫茶店は、基本的に地域の常連様に支えられています。足繁く通ってくれるのはシニアのお客様が多く、長い目で見れば少しずつご来店の頻度は減っていきます。繁盛を継続するためには、ゆるやかに常連の新陳代謝を図っていく必要がある。子どもの頃から喫茶店での楽しい記憶をつくっていただき、未来の常連様を今から開拓していきたいと思っています」(吉野さん)
名古屋、愛知では「“休日はいつも家族で喫茶店のモーニング”だった」という声もよく聞かれ、そんな生活習慣が地域の喫茶店文化の土台となってきました。子どもたちが家族の楽しいひとときと喫茶店のお得さを体験できるカフェヨシノの「こどもーにんぐ」。喫茶店王国と呼ばれる名古屋、愛知の繁栄を次代へつなぐ超・青田買いであり、遠大な長期的経営戦略といえそうです。
(写真撮影/すべて筆者)