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ホンダがF1で11年ぶりの表彰台獲得!第4期F1ブームへの序曲が始まった。

辻野ヒロシモータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト
活躍が期待されるレッドブル・ホンダ(写真:ロイター/アフロ)

結果で言えば、王者「メルセデス」の完勝だった。2番グリッドからスタートしたバルテリ・ボッタス(メルセデス)がスタートでトップを奪い、現役王者のチームメイト、ルイス・ハミルトン(メルセデス)を大きく引き離して「F1世界選手権」開幕戦・オーストラリアGPを制覇。2位に23秒以上の遅れでハミルトンが続いたが、そのハミルトンを追い回したのは今季から「ホンダ」のパワーユニットを搭載するマックス・フェルスタッペン(レッドブル)だった。

マックス・フェルスタッペン【写真:本田技研工業】
マックス・フェルスタッペン【写真:本田技研工業】

11年ぶりにホンダが表彰台に!

開幕前のテストからトラブルをほとんど起こすことなく順調にメニューを消化し、オーストラリアGPを迎えることになったホンダ。今季は「トロロッソ」に加え、トップチームの一角「レッドブル」にもパワーユニットを供給し、4台体制。テストの結果からもF1参戦を再開した2015年からの5年で最も良い状態であることは明確だった。

とはいえ、新しいパートナーである「レッドブル」は昨年までの「トロロッソ」や以前の「マクラーレン」とは次元の違う領域を走るトップチーム。ホンダは謙虚に「まずは表彰台」という目標を掲げていたが、開幕戦から早くもその目標を達成することになった。

ホンダがF1で表彰台を獲得するのは、第三期F1参戦時期(2000年〜2008年/勝利数:1勝)の2008年イギリスGPでルーベンス・バリチェロ(当時、ホンダレーシング)が3位表彰台を得て以来、実に11年ぶり。ホンダは2015年からF1チームにパワーユニットを供給してきたが、参戦5年目にして新パートナー「レッドブル」と共にようやく、表彰台という結果を持ち帰った。

1勝しかできなかった2000年代のホンダ第3期F1活動。唯一の勝利から13年。最後の表彰台から11年もの時が経っていた。
1勝しかできなかった2000年代のホンダ第3期F1活動。唯一の勝利から13年。最後の表彰台から11年もの時が経っていた。

ついにトップチームの一角になった

開幕戦・オーストラリアGPはアクシデントが多発し、セーフティカーの出動率が高く波乱のレースになりやすいことでも知られるレース。サバイバルレースになった際には安定したペースを保った伏兵が表彰台の一角に登ったり、トップ5に食い込む可能性も高いレースだ。

しかし、今年のオーストラリアGPではスタートでダニエル・リカルド(ルノー)がウイングを破損するアクシデントはあったものの、セーフティカーは出動せず。チームの今季の勢力図を見るにはもってこいの実力勝負のレースになった。そんな中でマックス・フェルスタッペン(レッドブル)がタイヤ交換を早めに済ませたルイス・ハミルトン(メルセデス)に迫り、途中でフェルスタッペンにミスはあったものの1秒差まで迫ったことの意味は大きい。

ミスによるタイムロスさえなければ、最後にハミルトンをオーバーテイクできた可能性はかなり高かったと考えられる。オーストラリアGPは常設サーキットではないので路面が特殊であることを加味しても状況次第ではトップを奪える実力をレッドブル・ホンダが持っていることが証明されたと言えよう。

一方で好調が伝えられていた「フェラーリ」は予選で「メルセデス」にフロントローを独占されたばかりか、決勝レースでは実質3位を走行していたセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)が早めにタイヤを交換する作戦(アンダーカット)に出るも、交換後はペースが上がらず。そこにマックス・フェルスタッペン(レッドブル)が追いつきオーバーテイク。ベッテルは3位を失ってしまった。

ついにホンダのパワーユニット搭載車が名門フェラーリを抜いたのだ。

日本のF1に光は差し込むか?

印象的なフェルスタッペンのオーバーテイクシーン。それはようやくホンダがライバルメーカーと肩を並べるところまで来たことを象徴するシーンだった。11年ぶりの表彰台というニュースはもちろん素晴らしいが、それ以上に高まるのは初優勝への期待感だ。開幕戦・オーストラリアGPのレース内容から見れば、その日はそう遠くないようにも見える。

次戦・バーレーンGP(3月31日/決勝)はホンダのパワーユニットを積む「トロロッソ」のピエール・ガスリーが予選6位、決勝4位というこれまでのベストリザルトを得た場所。ホンダにとって相性の良いサーキットであることは間違いない。「レッドブル」としては昨年も2台リタイアに終わっているし、2013年のベッテルの優勝以来、表彰台が無い状態が続いているが、今季のパッケージならトップ争いに絡める可能性は高い。

ついに、ようやく、こういうニュースが伝えられるタイミングがやって来た。とは言うものの、レッドブル・ホンダの初優勝の知らせを聞くまでは、きっと世間はそれほど大きく反応しないだろう。特に1980年代、90年代、世間を巻き込んでF1がブームになった時代を知っている40代以上の人達は全16戦中15勝をあげた1988年シーズンなど、「強すぎるホンダ」の時代を知っているからだ。

1976年に「F1世界選手権」が富士スピードウェイに日本初上陸を果たした時代を第1期F1ブームと捉えるならば、ホンダや中嶋悟、鈴木亜久里らが活躍した80年代後半、90年代前半は第2期F1ブーム。そして、ホンダがF1に復帰し、トヨタが参戦し、佐藤琢磨などトップ争いができる日本人ドライバーが登場した2000年代は第3期F1ブームと言える。

近年はテレビの無料放送が消滅し、日本人ドライバー不在で、熱心なファンだけが関心を寄せる状態が続いていた日本のF1。閉塞しかかっていた小さな穴は一気に開くのだろうか。

動画:Japanese Fans- the Heart of Suzuka (F1公式YouTube)

ホンダの活躍次第であることは間違いないが、今季のF1はメルセデス、フェラーリ、ルノー、ホンダのパワーユニットが実力伯仲でセーフティカーが入らずとも中団争いは接戦で面白い。そして、ファステストラップ(レース中の最速タイム)に1点のボーナスポイントが加えられることになり、レース中のファステストラップをかけたチーム間、ドライバー同士の心理戦も今後、激化していくだろう。マニアじゃなくても楽しめる状況が生まれていることは間違いない。

あとは日本人F1ドライバーの参戦が決まれば、きっと新たなるF1ブームは到来するだろう。開幕戦・オーストラリアGPでホンダが勝ち取った3位表彰台と言う結果は、光が差し込む穴を大きく広げたと言えるのではないだろうか。

開幕戦は終了したが、今からでも遅くはない。今季のF1は見ておくべきだ。

【F1が視聴可能なメディア】

F1世界選手権 YouTube

フジテレビNEXT

DAZN

モータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト

鈴鹿市出身。エキゾーストノートを聞いて育つ。鈴鹿サーキットを中心に実況、ピットリポートを担当するアナウンサー。「J SPORTS」「BS日テレ」などレース中継でも実況を務める。2018年は2輪と4輪両方の「ル・マン24時間レース」に携わった。また、取材を通じ、F1から底辺レース、2輪、カートに至るまで幅広く精通する。またライター、ジャーナリストとしてF1バルセロナテスト、イギリスGP、マレーシアGPなどF1、インディカー、F3マカオGPなど海外取材歴も多数。

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