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災害報道を見て苦しんでいるあなたへ:北海道地震と共感疲労

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
(写真はイメージ:札幌、 羊ヶ丘展望台)(ペイレスイメージズ/アフロ)

災害報道で心が疲れると、自分の体調が崩れます。相手との人間関係も壊れます。でも、それでは被災地の支援ができません。自分を守り、力を蓄えましょう(この記事は2016年の記事「災害報道を見ているあなたへ:うつ・体調不良・人間関係悪化:報道ストレス共感疲労を乗り越えて:熊本地震」を、今回の北海道地震に合わせて書き直し再掲載したものです。)

■共感疲労:災害報道による心と体の不調

西日本豪雨、大阪北部地震、台風21号、そして北海道の大地震。今年は、次々と災害報道が続きます。目を覆うような惨状、行方不明の家族を心配する家族。見ていて辛くなります。もちろん、災害報道はとても大切です。

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しかし、朝から晩まで続く膨大な災害報道、災害特別番組、豪雨台風地震の話題、増え続ける犠牲者、ひっきりなしに流れる余震発生を知らせるテロップ。ネット上にも、被災者の声や生々しい動画がアップされています。

大きな災害報道の中で、心が疲れてしまう人もいます。これまでも、災害報道を見ていて体調を崩す人々もいました。自分が直接の被害を受けたわけではないのに、不眠、食欲不振、血圧上昇、情緒不安定になった人、自分が揺れているような地震酔いになった人、さらに過敏になったり悪夢を見るようなASD(急性ストレス障害)に近い症状まで出た人もいました。

被災地の人々のことを思いすぎ、涙を流し、「共感疲労」を起こしてしまった人もいました。共感疲労とは、他者の痛み苦しみに共感するあまりに心が疲れてしまうことを言います。

今回の豪雨台風、そして地震の報道でも、同様の共感疲労を訴えている人々がいます。

気持ちが沈んでいる人、抑うつ状態になって体調を崩している人、楽しめない人、楽しんではだめだと感じる人。学校でも会社でも元気になれない人。みんなと一緒に笑えない人、デートしても上の空だという人もいます。

■テレビを消そう:報道を見ないことは悪いことではない

遠く離れた場所にいるなら、テレビを消すことも良いことです。こんな大変なニュースを見ないことは悪いことだと思ってしまう人もいますが、そんなことはありません。後から新聞を見るだけでも十分です。

テレビのお笑い番組も、ドラマも良いでしょう。NHKも、北海道地震当日の連続テレビ小説「半分、青い」はお休みでしたが、次の日は二日分放送しています。

ドラマの横に出る震災情報でも十分です(「北海道で震度7」という文字を見てるだけで不安になる人もいますが)。常にリアルタイムの情報が欲しければ、疲れた心には、ラジオがおすすめです。

被災地には支援が必要です。ボランティアも義援金も必要です。そのために、心身の調子を整えましょう。しっかり食べ、しかり眠りましょう。ストレスから、自分自身を守りましょう。

共感疲労に陥ってしまえば、落ち着いて人の話が聞けなくなります。災害報道が続く中で、お笑い番組を見て笑っている人に腹が立ったりします。こちらに心の余裕がないと、そんな人に失礼な態度も取ってしまいます。

せっかくの家族の団らんや、デートの時に、不愉快そうな顔をしていれば相手だっていやな思いをしているのですが、でも笑顔の人が不謹慎に思えてしまうこともあります。

たしかに災害報道に対する温度差はあります。けれども、今は笑っている人も、被災地のことを心配していないわけではないでしょう。寄付だって、してくれるかもしれません。

ただ心が疲れていると、そのように考えられる余裕がなくなります。災害報道ストレスや共感疲労のワナにはまると、自分の体調が崩れるだけでなく、人間関係にまでひびが入りやすくなるのです。

■災害や苦しみを経験されてきた人へ

これまでに、災害を経験されてきた人々の中には、報道を見てあの時の恐怖や不安がよみがえってしまう人もいます。それは、人間の心理として当然です。

阪神淡路大震災、新潟中越地震、東日本大震災、熊本地震など、同じ地震を経験されてきた人にとっては、他人事ではないでしょう。とても気になることでしょう。テレビを見るだけで涙が出てくる人もいます。体験があるだけに、災害報道が心の負担になることがあります。

大地震ではなくても、人生の中で様々な苦しみ悲しみを経験してきた人たちは、すでに心のコップに水がたくさん入っているようなものです。その上にさらに、家が壊れた話や人が亡くなった話を聞くと、心のコップから水があふれます。だから、年をとると涙もろくなるのです。

辛いときには、報道から目をそらしても良いと思います。それは、被災者への冷たい態度ではありません。心と体の健康を保ち、それぞれができる支援をしていきましょう。

■子どもが不安がっていたら

子どもは、大人と違って地理や時間の感覚がで出来ていません。遠くの出来事の報道を見ても、自分のすぐそばで起きていると誤解することもあります。過去の録画映像を見ても、今起きていると誤解することもあります。理屈ではわかっていても、不安が強くなることもあります。

不安がっている子どもを抱きしめる必要があるのは、被災地だけではありません。遠く離れた場所でも、子供が不安がっていたら、「ここは大丈夫、今は大丈夫」と話してあげましょう。

 <地震余震が続く中での子どもの心のケア:熊本地震

■涙と笑顔と希望:被災地支援のために

悲しみが満ちた世界の中で、それでも人は笑顔で前に進みます。苦しい人に共感できないのは、困ります。けれども、巻き込まれても困ります。被災地で働くプロ、日常的に援助活動をしているプロの人々は、心優しい人が多いですけれども、共感疲労に陥り巻き込まれないことを大切にします。

医療スタッフは、患者さんが亡くなればそれはもちろん悲しくて涙を流すこともありますが、しっかり食べてしっかり寝て、次の仕事に取り組みます。警察官も消防士も自衛隊員も、心理カウンセラーも同じです。

大災害が派生した時には、日本中からの支援が必要でしょう。地震で家が壊れ、身近な人が亡くなり、途方に暮れている人々がいます。まだ前を向けない人がいるのも当然です。

他の地域にいる私たちは、報道を見て心を痛めながらも、何かのお役に立てるように、みんなが希望を持って進めるように、自分の心と体を守り、力を蓄えましょう。

大災害の復旧復興のためには、地域が、日本中が、一つのチームになる必要があります。そして、チームには様々な役目の人がいます。自分の健康を守り、それぞれの役割を果たしましょう。

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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