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進化したSiri&ChatGPTで誰もがAIユーザーに Apple Intelligence発表

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
出典:Apple

KNNポール神田です。

今回のWWDCの目玉はなんといっても、AppleとOpenAIとの提携だろう。

これは、Appleにとってもかなりの英断だったことだ。
まずは、iPhone、iPad、Macのためのパーソナルインテリジェンスシステムである『Apple Intelligence』によって統合した環境を、新たな『Siri』によってマネージメントできるようにしたこと。そして、セキュリティとプライバシーに意識しながらもOpenAIの『CahtGPT』の使用許可を与えて無料で使えるという選択をしたのだ。

Apple独自のLLM技術は開発しながらも、一旦、OpenAIとの提携というスタンスを取ったのは、Appleにとっては大正解だったのではないだろうか?

OpenAI側としてもAppleのパーソナル情報の『Apple Intelligence』にリーチしながら『AI』には、まったく無関係だった人にも『無料』で『ChatGPT』を使ってもらえるという利点があるからだ。当然、AppleからはOpenAIへ莫大なライセンス収益がもたらされることになるだろう。

これらのApple側の意思決定は、Appleにとって、自分たちで『生成AI』の独自路線を築くよりも数段はやく、アプリとしての『CahtGPT』に『Siri』を連携するというレベルだけではなく、Appleのさまざまなパーソナルな、アプリケーションに対して、Microsoft的にいう『CoPilot的』な動きを全Appleユーザーに働きかけることを意味している。

今回の発表によると、『Apple Intelligence』はOSレベルでアプリケーションが、『セマンテックインデックス』機能と『プライベートクラウドコンピュート』機能を駆使するという。

Appleにとって4つのメリット

1.アプリケーションスイーツへの回帰
それは、『Apple Intelligence』によって、Appleの同梱アプリケーションスイートへの回帰を強く呼びかけることができるからだ。

例えば、OSにプリインストールされているビデオ会議サービスの『FaceTime』や『メール』『カレンダー』『マップ』『Pages』『Safari』などを筆者は全く使っていない。ビデオ会議は『Zoom』や『GoogleMeet』だからだ。メールやカレンダー、マップなどはすべてGoogleに依存している。ブラウザも現在は『Arc』だ。
Appleユーザーでも、そんな人が多いのではないだろうか?

しかし、『Apple Intelligence』で、すべてが新たな『Siri』によって垂直統合されるとなると話は別となりそうだ。
特に『メール』や『カレンダー』、『マップ』などの情報が『Apple Intelligence』で連携できるとすると、かなり画期的なことが実現できそうなことが期待できそうだからだ。

しかも、それをCPUからOS、アプリまで垂直統合しているApple製品による『セマンティックインデックス』で関連性のあるコンテンツ同士が、インデックスが施されたならば重宝しそうだ。

2.CPUのリプレイスメント

もちろん、これは、iPhoneでも最低でも『iPhone15Pro』以降のチップパワーが要求されるから、大きな買い替え需要を生むことが考えられる。
Appleにとって、『カメラ性能』だけによる『iPhone』のリプレイスメントスケジュールはもうすでに限界であり『USB-C』への買い替えもふくめ、『Apple Intelligence』は新たな買い替え需要を生むこととなるだろう。


3.英語環境での期待

しかし、我々日本人にとっては、大きな大きな『壁』が存在している。それは『英語』での処理が大前提となっていることだ。『生成AI』でトークン数さえ厭わなければ、言語の壁はかなり少なくなった。

しかし、『Apple Intelligence』というデベロッパー向けにはじめて提供されるプラットフォームで2024年の秋からスタートというのは、英語でかろうじて使い物になる程度と考えておいてよいだろう。しかし、Apple市場の半分を占めるUS市場で英語圏ユーザーが口語レベルで体験できるのはかなりのアドバンテージである。


日本語できちんと使えるには、あと半年、いや2025年の秋くらいというスケジュールではないだろうか?
むしろ、『カレンダー』と『マップ』くらいは、アルファベットでも対応できるならば、自分側に『アルファベット脳』をインストールしたほうが『Apple Intelligence』のパフォーマンスとして対応できそうだ。
ただ、コンピュータ業界のいう『対応』『可能』というのは、『かろうじて使える』という代物である。


4.デベロッパーへのロイヤリティ

今回は、『Apple Intelligence』によってAppleデベロッパーは最高にワクワクしているのではないだろうか?使い物にならなかった『Siri』が大幅にアップデートし、生成AIとも連携できるということで開発意欲が大いに刺激されたことだろう。もちろん、『AppleVisionPro』による『空間コンピューティング』という少し未来の景色も世界での販売で試験販売から本格販売へと方向性も決まった。

出典:Apple
出典:Apple

■『ChatGPT』とのインタフェースとしての『Siri』

そして、今回の目玉の2番目は、『Siri』が『Apple Intelligence』を駆使して『ChatGPT』とのインタフェースになってくれるという点だ。あくまでも主体は『Siri』を通して『ChatGPT』というところがポイントだ。
常に『Use ChatGPT』というユーザーからの許可を得てから動作するしくみが重要だ。

出典:Apple
出典:Apple

スマートなAIに進化したようにみえる『Siri』が『ChatGPT』とのインタフェースになることによって、ユーザーは、単純なことならば『プロンプト』をまったく意識することがなくなるかもしれない。

いや、むしろAppleとしては『プロンプト』という言葉をなくしたいと考えていることだろう。『Siri』にお願いし、不足であれば、『ChatGPT』が使えるという環境を提供できるというスタンスだ。
これは、『AI』が苦手という人にも、OS側から『ChatGPT』を使いますか?と働きかけてもらうことを意味するので、大きく変わりそうだ。

また、ローカルデバイスだけで機能できない場合は『プライベートクラウドコンピュート』として、クラウド機能を使うという点にも注目したい。

『ChatGPT』は、iOS18 iPadOS18 macOS Sequoia へ2024年の年内に統合される予定だという。そして、何よりも安心したのは、ChatGPTだけではなく他社のAIもAppleは、サポートするということだ。『ChatGPT』のエクスクルーシブであれば、話はややことしくなっていたことだ。

そうすると、Googe Gemini などにも『Apple Intelligence』対応に期待したいところだが、Appleのスイーツアプリとの連携は、気になるところだが、GoogleもAppleデベロッパーの一員でもあるので楽しみなところだ。
同様に、Anthropic ClaudeやPerplexityらの『Apple Intelligence』対応にも期待したい。

今秋にリリース予定のOS『18』や『Sequoia』への期待値が、かなり高まった今回のWWDC2024のオープニングだった。


ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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