PayPayの決済手数料の有料化は、スマホ決済普及の分岐点にも
QRコード決済で最大手のPayPay(ペイペイ)は19日、加盟店から得る決済手数料を全面有料化すると発表した。
10月から中小事業者向けの決済手数料を変更し、手数料率を最低1.6%とする方針を固めた。一般に3~5%とされるクレジットカードの半分以下に抑え、国内のQRコード決済業界では最も低い水準にする(18日付日経新聞)。
これまでは事業者向けの決済手数料は無料とし、加盟店を囲い込むことを優先していたが、大きな路線変更となる。
赤字覚悟で新たなサービスでシェアの拡大をはかるというのは特にIT関連企業にとってはひとつの手段となりうる。アマゾン・ドットコムなども行っていたように、まずシェアを抑えることは重要なポイントとなる。
しかし、そのシェア拡大に必要なのは、本当にそのコンテンツに対して需要があるのかという点にある。
日本ではキャッシュレス決済が他の国に比べ非常に遅れているという分析が出されていた。そうであれば、それを拡大する余地がある、ビジネスチェンスともみえる。
しかし、本当に日本はキャッシュレス決済が遅れているのか。実はキャッシュレスについては単純に比較は難しい点がある。ここには国民性や過去の歴史、風土なども絡んできており、こちらをしっかり認識する必要がある。
過去に何度か指摘したが、日本は決してキャッシュレスに遅れは取ってはいない。QRコードも日本発祥、そして非接触ICカード技術 FeliCa(フェリカ)も国内産である。
アマゾンなどでのクレジットカードを使った電子取引も普及し、電車など交通機関では定期を含めカードが普及している。銀行取引もネットで行っている人も多い。銀行同士、銀行と日銀もネットで決済が行われている。
ただし、小口の商品決済についてはたしかに日本では普及は遅れていた。いや遅れていたというよりも現金が便利であったことや、現金の引き出しも容易、さらには災害時の現金の利用も意識しての現金利用が多かった面がある。
災害時でも FeliCaなどを利用すれば決済は可能であるが、交通系カードの普及率を考えれば、それが利用可能となり使える人も多いはず。
それでもQRコード決済を使ったスマホ決済には普及余地ありと考える人も多かったのかもしれない。
しかし、日本ではデビットカードが普及してこなかったという実例も存在している。デビットカードは預金口座と直結し、カードで決済ができる。しかし、それでは使いすぎてしまうとの懸念などもあって普及が進まなかったとされる。
PayPayなどのQRコード決済の普及は確かに数字上では進んだ。コロナ禍も影響したのかもしれないが、大規模なポイント還元や、事業者向けの決済手数料無料などによって利用者が増えた側面があった。しかし、もし本当に便利なものと理解されれば、中小事業者向けの決済手数料の無料化やポイント還元などなくても普及は進んでいたはずである。
スマホで決済ができるのは便利かもしれないが、中国などと単純に比較すべきものでもない。ある程度、QRコード決済のニーズはあるかもしれないが、爆発的な普及とはなりづらいのではなかろうか。今回の事業者向けの決済手数料の有料化によって、消耗戦は限界となり普及の分岐点となる可能性もある。