嗚呼!グーグルプラス ついにGoogle墓場 へ
KNNポール神田です。
なんと…Googleの『SNS最後の砦(とりで)』であった『Google+』が、2019年8月に終了するという…。非常にショックである。
なぜならば、これでまた、Facebook一強の構図が色濃くなってしまうからだ。
■検索事業以外はボロボロの『Google墓場』
最近は、あまり『Google墓場』という言葉は使われてこなかったが、Googleの事業の成功率は、99%の失敗事業の上に成り立っていると言っても過言ではないのだ。この『Google墓場(The Google Graveyard)』を見ていただくと、Googleがどれだけ事業で失敗を繰り返してきているのかがよくわかる。
The Google Graveyard
そして、このサイト自身もGoogle Glass を最後に2014年で更新が終わってしまった…それ以降のGoogleの終了したサービスは葬られていない…。『Google+』がこの『Google墓場』に入ることはないが、人々の脳裏には、SNSビジネスの難しさを痛感させたことだろう。
■可もなく不可もないGoogleのSNS事業
Googleの事業といえば『検索』と『Android OS』に代表されるが、あくまでも世界最大の自社で無限の広告媒体を持つ『広告会社』である。『検索』も『Android OS』も、すべて『広告』を表示する為の手段に過ぎないのだ。そして、SNSもサービスを提供しながら『広告』を表示できる効果的な媒体だ。Facebookは、そのSNS内での『広告』が本業だ。
しかし、Facebookが成立し、Google+は、なぜ成立しなかったのか?
Google+の最大の敗因は、すべてをヒモづけようとする『メールアドレス』の存在があげられる。
Googleは『Gmail』のアドレスをベースにいろんなサービスを一気通貫させようとしてきた。そう、それによってユーザーの行動を360度の全方位型でデータ分析できるからだ。しかし、ひとつのメールアドレスさえあれば、無限に取得できてしまうGmailでは、一人でいくつものアカウントを持つことができる。仕事用、遊び用、プライベート、親族用、スパムメール用、いろんなGmailアドレスを持つことで、それぞれの『Google Calendar』や『Google Photos』などを無数に持つことができる。当然、同様に『Google+』もGmailのアドレス数だけ持つことができてしまう。
しかしだ…『SNS』というサービスは、個人でいくつものマルチアカウントを管理するには、とても荷が非常に重いサービスなのである。Facebookが生き残れている理由のひとつに、『パーソナルも仕事も、個人は一人の個人である』というマーク・ザッカーバーグのSNS思想である。一人に一つのfacebookが大原則だ。共用パソコンの利用でさえ、facebookのログインログアウトは難しい。それでもザッカーバーグは実名で一人一アカウントに強固なこだわりを持ち続けている。
米国の個人主義の上で、パーソナルに仕事も付随しているのは理解できるが、日本のように、個人よりも組織、チームプレイを優先する国民性でどこまで、個人の実名制が普及するのか?ということも広義の『知人』という関係性で成立している。むしろ、仕事仲間が増えて息苦しい時には公開機能を選択し、公開距離を制限できる機能などで補ってきた。
一方、実名制でなく、個人がいくつもの仮面をかぶった『ペルソナ』が持てる『Google+』では、twitter同様、いろんな多岐な情報にあふれている。しかも140文字の制限がない。
そして、最大の要因が、『可もなく不可もなく』というサービスであるという印象だ。機能的にはFacebookと比較して、それほど見劣りのするサービスではない。しかも、Googleの検索エンジンにおいてのSEO的にも、Google+ほど強力なものはないと思う。Google+にブログの記事を上げるだけで、Googleのクロールは優先して巡回してくれる傾向にある。これを機に、2019年の8月まであと10ヶ月くらいは騙されたと思って、SEOツールとして、使ってみるべきだろう。もしかして、人気になれば終了を撤回してくれることに期待したい。
SEOツールとして活用している筆者のGoogle +
https://plus.google.com/u/0/+KandaPaulToshiaki
■『GAFA』企業の宿命、1社1ミッションの呪縛
天下のGoogleとはいえ、SNSは苦手の企業だ。 これまでにもいくつものSNSサービスを広告媒体として育てようとしてきた…。
SNSの元祖、Orcut、Google Wave、google buzz、すべて失敗に終わっている…。もちろん、Googleだからリリースすれば、その瞬間から数百万人のユーザーが使い始める。一からのSNSベンチャーは100万人を集めるだけでも最低2年間はかかるので、圧倒的なアドバンテージを持っている。それでも成功の確率が低いのは、もはやGoogleがSNSに不向きだということを物語る。ある意味、文脈は違うが、YouTubeが唯一成功しているSNSだともいえる。ただ、情報の受発信の比率が1:99 という比率だが…。
同様にFacebookはSNS以外は何もできない企業である。OcurusもFacebook傘下でハードウェアを作っているが、VRのFacebookでいつでも知人と会って楽しめる時代はまだやってこない。しかし、Facebook messengerがあっても、WhatsAppがあり、Instagramもあり、SNSでは年代、属性を超えて網羅している。ライバルはすべて買収してしまっている。Google PlusもFacebookに売却すればもっと良いサービスになるかと筆者は思う。
Appleも、SNSには弱い企業だ。『Ping』などの音楽SNSを、iTunesを基軸に試みたがすべて失敗続きである。Appleの場合は、失敗する理由を探すほうが難しいほど恵まれた環境なのに…。世界最高の頭脳を集めてもうまくいかないのだ。
Amazonも、映画のデータベース『imdb.com』を傘下に持っている。買収したのは1998年とすでに20年も経由している。映画に関するニュースから、興行収入から役者や監督の作品までのリンク、評価などで、『映画やテレビ』に関する世界最大のSNSとして君臨していてもよいはずだ…。しかし、未だに日本語版すらない始末だ。当然そこからamazonで購入したりプライム・ビデオで視聴する人もいるはずなのに…。
世界の時価総額トップを占める企業でさえ、1ミッションの得意分野でしか、成功していない。いや、そこそこの成功はもちろんあるが、本業の利益から比較すると、とても存続する価値がないようだ。
つまり、本業があまりにも巨大になるゆえ、ミニヒットしか飛ばせない事業部はピボットかターミネイトされるのである。メルカリがヤフーオークションのてがけない『ニッチ』で成功したように、むしろ、Google+のようなSNS事業は、そろそろFacebookも手をだせないような『ニッチ』から、攻めるベンチャーが必要だ。そう、現在の『LINE』も完全なニッチな電話アプリからのスタートだったことを思い出してほしい。今は誰もLINEで電話してくる人はいないのだ。
GoogleにとってGoogle+の事業規模は広告メディアとして成立しなくても、Facebookから万一移動してくる40億人もいる市場があるチャンスに人生を賭けてみるのは悪くないだろう。これだけ、おじさんおばさんメディアと揶揄されているSNSからみんな逃げたがっているのだから…。
いでよ!Google+の後継ベンチャー!